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解決……?

大変お待たせしました。

徐々に更新速度を戻していけたら、と思っています。

 そして今、というわけです。


「座ってて……って言われても……」


 私が大声を出したせいで見つかってしまって、庭園に下りてくるように言われた。

 嫌だったよ! 爆心地に自ら飛び込むなんて、私もそんな馬鹿じゃないよ!

 でも、危ないから下りて来なさいって、今のウィンディさんに言われたら従うしかないじゃん……!


「スズ、ひとりだけ逃げるなんて酷い」


 羊をデコピンしてやる。無反応。

 スズテカトルは私たちを地上に下ろしてすぐに、止める間もなく羊の中へ帰っていった。


「うっわー、庭園がぐっしゃぐしゃだ」

「お姉ちゃん……なんでちょっと楽しそうなの」

「リスルはいつもそんなだよ」


 私たちが下りてくるのを確認してから、私たちがまだ最前線にいるにもかかわらず、ふたりはよくわからない戦いを再開した。

 と言っても、よくよく見ると、攻撃しているのはウィンディさんだけで、アシュさんは避けたり風の魔力で弾いたりしかしていない。

 なんだかウィンディさんが一方的に仕掛けているようで。アシュさん以外を狙う気は全くないようだから、窓が割れて地面が抉れているのは、その巻き添えだと思われる。

 だから私もここに座っていられるわけなんだけど。


「往生際が悪いわよ、アシュ。諦めて1発殴られなさい」

「1発、って! ウィンディちゃんのっ、持ってるの真剣、だろ! 殴られるどころじゃないって!」


 うーん、本当にこれは一体どういう状況。

 ちなみに今の会話の間にもウィンディさんは剣を振り回してアシュさんを狙っています。


「ってか、それ! ミナ君の魔力石!」


 あ、なるほど。ずっとウィンディさんの剣が赤い光を帯びていたのは、ミナ先輩の魔力石のせいなのか。柄の部分に赤い石のペンダントが巻き付けてあって、それが剣に火の魔力を供給していると思われる。

 ウィンディさん本気じゃないですか。

 アシュさん、ウィンディさんに何をしたの。


「あー! ゴレムちゃん、いたー! 見つけたよー!」


 あ、サラさん。

 この場の雰囲気に全く合わない、ふわふわした声とともにサラさんが駆けてきた。その後ろには背中の翼で宙に浮いたゴレムさんの姿も見える。


「よかったー。巻き込まれてないみたいだねぇ。ルーグ君に聞いたら、様子を見に行ったって言うから焦っちゃったよー」


 言いながらサラさんは私たちを魔力の膜で包んだ。闘技大会の時に先生がやってくれた結界と同じものだ。たぶん。

 ちなみにその間にもウィンディさんとアシュさんの戦いは続いている。

 これ以上庭園を壊したら、ジェイさんが本気で怒るんじゃないかな……? あ、また花壇が。


「あれ、止めなくていいの」


 お兄ちゃんが冷静に尋ねるも、ゴレムさんは首を横に振った。


「あー無理無理。こいつらの喧嘩、長けりゃ一週間は続くからな」


 一週間! 

 ま、まさかとは思いますけど、この戦いが一週間続くという意味ではないですよね……?

 そんな疑問が喉元まで出かかったけど、答えを知りたくないような気もして、ぐっと飲み込む。


「短くても丸一日は終わらないよー。団長さんも諦めちゃってるからねぇ。この庭園を修復する新人君たちはかわいそうだけどー」


 サラさんも呆れ顔。

 というか、ジェイさん諦めちゃってるんですね。そこは団長として、なんとか止めてほしかったな? もしかして今日姿が見えないのってジェイさん……いやいや、今はそれどころじゃないか。


「あのー、喧嘩のそもそもの原因って一体……?」


 まずはそこを把握しておかなければ、どうすることもできない。

 すると急に小声になる副団長ふたり。


「ああ、それな。そろそろレンカの日だろ。ゲシュウィントも菓子作ってたみたいなんだけどよぉ」

「ウィンディちゃんが調理室で冷やしてたゼリーをねー、アシュちゃんが勝手に食べちゃったんだよねぇ……」


 ……辛うじて残っていた緊張感が一気に抜け落ちていく気がした。

 




 その後、仕事で八方都市に行っていたらしいジルさんが帰ってきて、副団長3人がかりでなんとかアシュさんとウィンディさんを引き離した。

 

「あー、帰ってきて早々あいつらの喧嘩に巻き込まれるとは……」


 そして私はジルさんと、無断で侵入されて荒らされたジルさんの執務室の片付け中だ。お姉ちゃんとシトロンちゃんはサラさんの部屋。お兄ちゃんとルーグ君がゴレムさんの部屋。そしてカオン君がアシュさんの部屋だ。

 アシュさんが騎士団の中を逃げ回ったせいで、全ての副団長の部屋が被害にあったらしい。


「疲れてんだよ、眠いんだよ、寝させろよ。なぁ、チビ」

「そ、そうですねー」


 ひぃ、ジルさん怖いよ! 

 倒れた本棚を睨み付けるジルさんをなるべく刺激しないように相槌をうって、散らばった書類を集める。

 手伝います、と言い出したのは私だけど、何でこの組み合わせなんだろう。もう一度言うね、ジルさん怖いよ!

 

「喧嘩の時って、いつもこんなことになるんですか……?」

「ああ? ……大体戦場になるのは庭園だけなんだが……今日は一段とひでぇな。……ああ、くそ、ねみぃ」


 そう言うジルさんの瞼は今にもくっつきそうだ。

 八方都市でお仕事って言ってたけど、何の仕事をしに行ってたんだろう。視察とかそういうことなのかな。

 四方都市ですら馬車で3日かかるんだから、八方都市まではどれくらいかかるんだろう。お疲れ様です、ジルさん。


「えっと、ウィンディさんの作ったゼリーをアシュさんが食べちゃったみたいです。もうすぐ」

「レンカの日だからな」

「え?」


 ジルさんはソファにどかっと座って長い足を組む。


「……知らねぇの? ゲシュウィントのやつ、毎年アシュにレンカの日の菓子やってんだぜ?」


 書類を積み上げつつ、私もつられてソファに座った。


「へぇ……って、それ」

「おお、そういう関係ってこと。ニアシェの花を添える前に食われて……ってとこだろうな。……あー、だめだ。俺ちょっと寝るから、チビは他の副団長手伝いに行け」


 口をパクパクさせる私などお構いなしに、ジルさんは欠伸をひとつして目を閉じた。

 そうして、あっという間に夢の中。

 待って、言うだけ言って寝ないで。アフターケアまでしていって。ジルさん、起きてー!

 ……かと言って、お疲れのジルさんを無理やり起こすこともできず、私はふわふわした気持ちのまま、部屋を出ることになったのだった。


2016/02/14 矛盾点があったため修正しました。

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