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闘技大会開幕!


 闘技場から花火が打ち上がる。花火がパンッと開くと青空にネーテリア王国の紋章が描かれ、生徒達は歓声を上げた。

 火の魔法の花火は形も色も思いのままだ。

 

「先生達の魔法、すごいねー!」


 会場の外で花火を見た私達——私達三つ子とルーグ君、カオン君、シトロンちゃん——総勢六名は、席を確保するべく走り出した。

 闘技場は入学した日に私がコロッセオみたいだと思ったあの建物だ。コロッセオに似ているけど、こっちのほうが大きい。ぐるりと回りを一周して見た時は、いい汗かいた。学園の全生徒を収容しようと思うとこの大きさになってしまうのだろう。

 早めに来たおかげで、まだ席はたくさん空いていた。全体がよく見え、尚且つ選手の顔もよく見える、そんな好条件の席をキープ。


「早速だけど僕とカオン、すぐに試合始まるから」

「行って来るね!」


 お兄ちゃんとカオン君は私達に手を振って選手の集合場所に向かった。

 ふたりの試合、そんなにすぐだったんだ。一試合目なのかな。

 カオン君は魔法を使って闘うんだよね。楽しみだなー。


「ディオとカオンの試合はどの形式なの?」


 お姉ちゃんが耳をピコピコ動かしながらルーグ君に聞く。


「人の形式まで覚えてねーよ。ヴィエーチル知らねえのか?」

「闘技場の形が変わる、じゃなかったかしら。それと私のことはヴィエーチルって呼ばないでね」

「はあ? なんでだよ」

「呼ばないでね」


 シトロンちゃん、笑顔なのに威圧感がすごいです。

 人間さんの迫力に圧倒された狼さんは大人しくなってしまいましたとさ。


「魔法で形を変えるんだよね。例えば?」


 この中で闘技大会を経験したことがあるのはルーグ君だけだ。自然と視線がルーグ君に集まる。


「例えば、今は砂だけど、あの地面から炎が出たり池ができたり」


 私は隣に座ったお姉ちゃんと顔を見合わせる。


「炎が出たら燃えるよ!?」

「死者が出るよ!」

 

 おお、息ピッタリだった。同時にルーグ君に向き直ると頭をぺちんと叩かれた。


「二人とも授業中に寝たな。試合の前に先生が結界魔法はってくれんだよ。相手の攻撃で結界が割れたら失格」

「だから燃えたりはしないのよ」


 そ、そんなこと習ったかな? でもシトロンちゃんが知ってるってことは習ったんだね。


 そんな会話をしているうちに、先生が三人闘技場に出てきた。それぞれ違う入り口から入ってきて、三角形を描くように立つ。

 

「これより闘技大会一日目、初等生の部、第一試合を開始します! 試合形式は——」

 

 ふわふわどこからか飛んできたシャボン玉のような泡が会場の真ん中で破裂すると、先輩のお姉さんらしき声が響いた。

 三人の先生が両手を前に出す。

 アナウンスのお姉さんが一際大きな声で言う。


「——『変化へんか“大河”』!」


 先生達の構えた両手から大量の水が溢れ出し、水はまるで生き物のように動いて何もなかった砂のフィールドを二つに分断する大河となった。しかも傾斜があるわけでもないのに流れは激流だ。

 す、すごいすごい! イベールではこんな規模の魔法を目にすることはなかったよ。


「お、カオンとディオールが来たぞ」


 どこどこ! 本当だ、選手の入場口から初等生四人が入ってくる。そのうちの二人がお兄ちゃんとカオン君だ。

 お兄ちゃん達の身体が淡い白い光に覆われている。あれが結界魔法か。あの光が割れてなくなったら失格なんだよね。うん。

 大河で分断されたフィールドの同じ側の岸で四人は向き合う。

 さあ、始まるよ!

 シャボン玉がまた破裂する。


「カオン・ソーレ、ディオール・アフツァー対ドルーゴ・ノダタ、マーク・ノウツフ。試合…………開始っ!」

 

 わあっ!という観客の歓声の中、四人が散った。

 お兄ちゃん達の相手は金髪の人間の男の子と熊の獣人の男の子。獣人君はこの歳でもうすでにかなり体格がいい。熊だもん、力も強そうだ。

 お兄ちゃんが持っている武器は……なんだろう? ここからじゃよく見えないな。

 最初に仕掛けたのは金髪君だった。

 二人目掛けて水の魔法を投げつける。お兄ちゃんがカオン君に何かを言って、二人とも水の玉を避けた。


「ここからじゃ何言ってるか聞こえないよー」

「あれやるぞ、だって」

「お姉ちゃん聞こえるの!?」


 お姉ちゃんは聞こえるよーと頷く。ルーグ君にも聞こえているようだった。耳をピンと立てて……なるほど、獣人だから。

 攻撃を避けられた金髪君は手当たり次第に水の玉を投げる。うわ、すごい連射。二人は……あっ!


「カオン君!」


 カオン君の右足のあたりに金髪君の魔法がぶつかったかと思うと、結界の光が少し弱まった。


「おいおい、カオン……」

「まだ大丈夫だよ!」


 まだ結界は壊れてない。

 金髪君の攻撃が一瞬止んだその隙にカオン君がお兄ちゃんに駆け寄った。お兄ちゃんの武器に触れた……?

 武器が赤く明滅する。何かする気だ。だが獣人君の鋭い爪が迫っている。


「お兄ちゃん避けて!」


 思わず大声で叫ぶ。……心配はいらなかったのだけど。

 お兄ちゃんは例の走り方で後ろに跳んで獣人君の爪を避けると、何を思ったのか大河に向かって走り出した。

 その背中に向かって金髪君が魔法を投げるけど、カオン君の火の魔法がぶつかって相殺する。水を消すなんて随分強力な火だ。あのペンダントにはサラさんの魔力も混ぜてあるらしい。


 おおっ、と観客が湧いた。


 大河に向かって走ったお兄ちゃんが、その勢いのまま地面を蹴って激流を跳び越えたのだ。まさか初等生がこの河を跳び越えるとは思っていなかったのだろう。観客は一旦言葉を失い静かになって、その後拍手喝采をおくった。

 お兄ちゃんすごーい! かっこいいー! あの人、私のお兄ちゃんなんだよ! すごいだろー!

 金髪君と獣人君はもちろん大河を越えることは出来ない。自然とカオン君が標的になる。


「……カオンが囮か」


 ルーグ君がボソッと言った。

 カオン君を狙った金髪君と獣人君がお兄ちゃんに背中を向けた瞬間。


 お兄ちゃんの武器が炎の弾丸を吐いた。


 打ち出された弾は河の向こうの相手の結界を、なんとも呆気なく割ったのだった。


「しょ、勝者……カオン・ソーレ、ディオール・アフツァーペア……」


 アナウンスのお姉さんがハッと我に返ったように試合の終わりを告げた。


「今まで大河を越えようとした奴なんていたか? あんな激流、怖くて出来ねぇよ」

「あの茶色いほうが羊の武器に何かしてたぜ?」

「今年の初等生、すげぇな……」


 後ろの席の先輩達が言っていた。

 私は振り返って自慢したい気分だった。

 お兄ちゃんとカオン君、初戦突破です!


 


今回の主役はお兄ちゃんとカオン君でした!



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