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私達のおうちです

3話目まで更新しておきますね。

 

現状把握をしておきましょう。

 私はこの世界ではアイラルという名前を頂いたようです。

 アフツァー家の三つ子の一番下で、お姉ちゃんのリスルが一番上、お兄ちゃんのディオールが真ん中。

 お姉ちゃんとお兄ちゃんはお母さんと同じ羊の獣人、なのに私がなぜ獣人として生まれなかったかというと。


「アイラル、お前はほんっとに可愛いなぁ」


 この人のせいです。

 ネーロ・アフツァー、私のお父さんです。お父さんは獣人ではなく、普通の人間。だから私は獣人じゃなかったみたい。

 転生から一週間経って分かったのはこれくらい。


 デレデレ顔のお父さんだけど、私から見るとかなりカッコイイ。まだ、ベッドから降りられないというか、かろうじてひとりで座れるかな、くらいの赤ちゃんだから、この世界の基準がわからないんだけどね。


「あなた? アイラルばかり構ってないでリスルとディオールも見ててくださいよ」

「わかってるよ」


 お父さんは私が自分似で獣人じゃないからなのか、私にデレデレ。

 お姉ちゃんとお兄ちゃんが可愛くないのかと言えばそうではなくて、ふたりは「かわいいなぁ」で私は「かっわいいなぁ」って感じ。


 私としては、お姉ちゃんとお兄ちゃんかっわいいよーだから、三人ならんでねんねしている時には必死でどちらかにくっつきに行く。

 耳を触ろうとしてお兄ちゃんが大泣きしてしまった時からは、控えめにするようにしたけど。


「あーぅ」


 だっこしてーと手を伸ばす。するとお父さんのイケメン顔が崩壊して、私は腕の中に抱えられる。

 うーん、お父さんやパパと呼べないのがもどかしいなぁ。子供って何ヶ月くらいからお話できるようになるんだっけ。

 なんて考えているうちにお父さんの顔がすぐ近くにありました。

 お父さんは金髪に翠の目。私たちの外見はお父さんに似たようです。


「お前は泣かない子だよなぁ。ディオールはしょっちゅう泣くのに」


 でもリスルも泣かないか?

 ぎくり。いくら今は赤ちゃんだとしても精神年齢は高校生なわけだからさ、人前で泣くのはちょっとねぇ。


「だーっ」

「お、リスル。お前も抱っこか?」


 お父さんが器用にお姉ちゃんと私を同時にだっこして、お姉ちゃんのお耳が射射程圏内に。

 と、届くかな?

 しかし喜んだのも束の間、私が身じろいだのに気付いたお父さんに阻止されました。「まーた耳ねらってただろ」だって。くそぅ。


「ナターシャ」


 お父さんがお母さんを呼びます。あ、ナターシャというのが私のお母さんの名前。名前まで美しいよねぇ。


「はい? あら、ふたりともパパに抱っこしてもらってるのね。よかったわねー」

「ディオールを頼めるかな。今日は家の外を見せてやろう」


 外! やった!

 窓から見えるのは空くらいで、この家がどこに建っているか全然わからなかったんだよね。

 街中なのかな、田舎なのかな。


 お母さんがお兄ちゃんを抱っこして準備完了!


「うー! だう!」


 どこかに連れて行ってもらえるのがわかったのか、お姉ちゃんが笑顔で足をばたばたさせる。それにあわせて耳もぴょこぴょこ動いて……。

 あーもー、お姉ちゃん可愛いよ!


 両親に連れられて玄関に向かう。

 家の中はだっこされて見て回ったことがあるから、だいたいの場所は把握している。私達がいる部屋の隣がお父さんとお母さんの寝室で、どちらの部屋からも通じているのがダイニングキッチン。二階はないみたい。おトイレは廊下の奥、かな。

 どっちかと言うと、こじんまりしてて裕福ではないのかなーと思っている。

 壁とか木造だし。そう、あっちでいうログハウスみたいな。


「三つ子ちゃんのお外デビューだー」


 気の抜ける声でお父さんが言って、両手が塞がっているお父さんの代わりにお母さんがドアを開けてくれました。


「あう!」

「……うー?」


 お姉ちゃんは元気いっぱいに両手を上げて、お兄ちゃんは不安そうにお母さんにくっついた。

 暖かい風がほっぺたをくすぐる。


「ほーら、見てごらん」


 どうやら私達の家は丘の上にあるようだ。丘の下には家がたくさん見える。大きな街だ。

 お庭の木には桜に良く似た花が満開で、風が吹く度に鮮やかなピンクの花びらが舞っていた。

 でも、それ以上に私の目を引きつけたのは。

 ログハウスの前に広がる緑。

 木製の柵がサッカー場くらいの範囲を囲い、その中では馬に良く似た動物が一頭と羊に良く似た動物がたくさん、草を食んでいる。馬のほう、白くて額に角……ユニコーンってやつかっ。


「あうあー?」

「そうかぁ、アイラルは気に入ったかー」


 農場?って聞いたんだけどやっぱり通じなかったか。

 私が馬に似た動物に興味があると思ったらしいお父さんが柵の近くまで連れて行ってくれる。

 お兄ちゃんが拒否したのかお母さんは離れたところで見ていた。


「この子はサッシャ。男の子だよ。ユニコーン……て、こんなこと教えても、まだわからないよなぁ」


 大丈夫です、お父さん。わかってます! そして感動してます!

 まさかユニコーンに会えるなんて。本当に存在するんだね、想像上の動物だと思ってたよ!

 サッシャ君がお父さんに寄ってきたのを、チャンスとばかりにお鼻タッチを試みる。

 お姉ちゃんもサッシャ君が気に入ったのかな、お父さんに支えられて精一杯身を乗り出している。

 と、お姉ちゃんの手をサッシャ君がぺろりと舐めた。


「やぁ!」


 お姉ちゃんはびっくりして手を引っ込めた。お父さんは大笑い。


「サッシャ。リスルは食べちゃダメだぞー」


 それで興味をなくしたのかサッシャ君は行ってしまった。

 あー……触れなかった。

 優雅に去って行くユニコーンを目で追っていると、アイラルはほんとに何も怖がらない、とお父さんに不思議そうに言われてしまった。危ない危ない。


「大きくなったら仕事のお手伝い、してくれよ?」


 もちろんですとも!


 そこでお姉ちゃんが舐められた恐怖のため大泣き。つられてお兄ちゃんも大泣き。初めてのお外はおしまいになった。


 早くお仕事手伝えるようになって、サッシャ君を思いっきり触ってみたいな。羊もどきはきっともふもふなんだろうな。

 もうちょっとだけ、がまんがまん。




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