やっぱり騎士団は賑やかです
お待たせしました。
私は誘ったよ。誘ったのに来ないんだもん。
お姉ちゃんは動いたら吐くなんて女の子らしさのカケラもないようなことを言って断るし、お兄ちゃんは疲れたの一言で断るし。
折角アシュさんが呼んでくれたのに。ふたりは副団長さん達に会いたくないの?
「そんなに怒らないの。可愛い顔が台無しよぉ?」
そう言って、私にギュッと抱きついてくるのは、サラ・ソーレさん。
大学生くらいの外見な、赤の副団長さんである彼女。肩までの髪はココア色、目は苺の赤色というなんだか美味しそうな人です。
「そうだぜ。だいたい、あんたの姉ちゃんと兄ちゃんには昼に会ったしな」
「……そうなの?」
頭を力強く撫でてくれるのは青の副団長、ゴレム・アーレントさん。
ばさっと広がって私を包む、背中から生えた翼。
ゴレムさんは鷲の獣人なんだって。鳥の獣人を見たのは初めてだから、部屋に入って彼を見つけた瞬間は嬉しくてもう。髪が白いから白頭鷲なのかな!
鳥の獣人の場合は人間の耳がちゃんとついてるんだね。あ、でも、カオン君の例があるから人それぞれか。
「チビから離れろ。おばさんにおっさん」
そして最後が黄色の副団長であるジル・コーシカさん。彼も獣人です。
種族は——
「おばさんじゃなくてお姉さんでしょー。もぉ、猫ちゃんはぁー」
「アイラルは気に入ってるんだからいいだろ。恥ずかしくて混ざれないからって拗ねるなよ、猫ちゃん」
「おーまーえーらぁー……っ」
えっと、はい。ジルさんは猫の獣人です。
耳と尻尾は黒で、首回りのふさふさは白。シャム猫を思い出すね。
私が部屋に入った時、以上の三名が机を壁際に寄せて床でお酒を飲んでいた。
アシュさんがバルコニーにいたのは、一旦休憩で風にあたりに来たかららしい。今もぼんやりと街の方を眺めている。
「おいチビ。何見てんだよ」
「うぇ?」
一人離れたところにいたジルさんがくっついた私達のほうへやって来た。
「さっきから。俺のことチラチラ見てるだろ」
ぎくっ。ばれてましたか。
ジルさんの首のふさふさを触ってみたいだなんて。
「き、綺麗な髪と目だなーと思って……」
言えません!
なんかジルさん、他の副団長と比べて私に友好的ではないというか。私が来た時にあからさまに嫌な顔したんです。
「……ふーん」
間違ってないもん。
ジルさんは銀髪青目という大変目を引く容姿でもある。綺麗だと思ったのは事実だ。
「あんまり苛めるなよ。ジル」
「アシュ。苛めてねぇって」
戻ってきたアシュさんがジルさんの頭を軽くはたく。
アシュさん! アシュさんがいてくれたら、なんとなく安心する! 知らない人の中にいるのは苦手だよー。
座ったアシュさんはまだ飲むみたいで、ゴレムさんにお酒をついでもらっていた。
「アイラルちゃんは明日から寮生活だねぇ」
お酒が苦手と言っていたサラさんはお菓子を摘まむ。その間も私から離れてくれないのはなんでかな……。
「寂しいから会いに来てねぇ? アイラルちゃんなら大歓迎だからー」
「はい。ありがとうございます」
「もぉ、堅いよアイラルちゃんー。これ食べるー?」
サラさんのクッキー。
うーん、お腹いっぱいだから一枚だけいただきます。
「寮生活なぁ。俺らにもそんな頃があったんだよなぁ」
ゴレムさんも私の隣をキープしてる。見た目に反してゴレムさんの翼はふかふかで心地よい。私が寄りかかれるように、片方の翼だけ開いてくれている。
ふわぁ。おっと欠伸が。
このまま寝ちゃいそうだよ。
「皆さんは学園の卒業生ですか?」
「おう。騎士団に入るためには王都の学園卒業が絶対条件だからな」
そう言えば、とゴレムさんの話の途中でアシュさんがお酒の手を止める。
「カオンが一緒に入学することになってるから。分からないことがあったらカオンに聞けばいいよ」
カオン君? じゃあ安心だー……じゃなくて!
それはいいの? カオン君は騎士団所属なのに。
「裏口入学ってやつだな。学園からも大した口出しはなかったぞ」
「アイラルちゃんの護衛も兼ねてるからねぇ」
「ま、カオンなら大丈夫だろ」
他の副団長さんもこう言っているから問題ない……の?
そういうことだから、とアシュさんが締めるとこの話はあっという間に終わってしまった。
そこからはまたお楽しみ会。私は皆さんの話に相槌を打ったり、飲めない代わりにお菓子を頂いたりしていたのだけれど、いつの間にかゴレムさんの翼の誘惑に負けていたようです。
お姉ちゃんに揺さぶられて起きたのは、自分の部屋のベッドの上でした。
もう少しお話したかったけど、仕方ない。
さあ、今日から学園生活が始まります。
次回、ようやくアイラルが学園に。
ありがとうございました。




