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怖い人

 えっと、アイラルです。

 プキを捜していたら、怖いおじさんに声をかけられました。


「あの……」

「……………」


 無表情怖いですー! というか、そっちから話しかけてきたのに、だんまりにならないでー!

 こっちに歩いてきたおじさんは私をじっと見下ろす。

 で、でかい。アシュさんも長身だったけど、この人の方がでかい。


「ご、ごめんなさい。ここ、近づいちゃダメでしたか……?」


 なんなの、この威圧感。ちょっと泣きそうだよ。怖くて上が見れないよ。


「いや……」

「あー! 団長さん!」


 カオン君が走って来て姿勢を正す。


「団長さん……?」

「そうだよ。王国騎士団の団長さん」


 そろりと見上げると、おじさんは頷く。

 で、自己紹介をしてくれるのかと思えば、まただんまり。


 おじ……団長さんは私のお母さんと同じ灰色の髪をしていました。

 パッと見た時の髪の色のせいでおじさんだと判断していたけど、意外に若い。お父さんよりは上だろうけど。

 私から逸らしてくれない目は紫色だ。


「カオン、知り合いか」

「え? 団長さん、アイラルちゃんですよー。動物とお話が出来るアイラルちゃん」


 団服を着るでもなく、北の街でもよく見たような私服を着ているせいで、団長だなんて思わなかった。庭園の手入れをしている人かと思ってしまった。


「ああ。今日が到着だったか」


 そう言って初めて表情を緩めてくれる。

 

「私はジェイ・ブレイズという。人間部隊の団長だ」


 ジェイ・ブレイズ。ジェイさんね。

 無表情に戻ってしまったジェイさんに手を差し出して握手。

 なんだ。カオン君が怖い人だというから警戒してたけど、案外普通の人じゃん。



「そうだ、プキ!」



 ほっとしてる場合じゃないよ。プキを捜さないと。

 まだこの花壇をにいてくれればいいけど……。


「プキというのは魔獣のことか?」

「はい。ちっちゃくてリスみたいな。あっ、緑の首飾りを付けてます」


 これくらいの大きさで……とジェイさんに説明すると、何やらズボンのポケットから取り出した。

 もごもご動く茶色の物体。って、プキ!? なんでジェイさんのポケットから出てくるの!?


『ぷぅ。真っ暗、嫌い』


「息抜きがてら庭を見ていたら、私の前を駆けていった。花に害を与えられては困るから捕まえたのだが。今言葉を話したな。なぜだ」

「アシュさん……副団長さんがこの首飾りを作ってくれて」


 プキは私の手に戻ってくると、ぷきゅーと気の抜けた声を出して丸くなった。

 まったく。もしかしたら帰ってこれないところだったかもしれないんだよ。






 それからテーブルを囲んで、ジェイさんと三人でしばらくお話をした。

 他の部屋も見て回りたかったけど、どうもジェイさんの話を聞く限りでは、今日私達はこの騎士団で一泊させていただくようなので、また探検の時間は取れるでしょう。

 

「他に聞きたいことは」

「私、シキキューについて知りたいです!」

「む……」


 ジェイさん、子供の相手をするのは少し苦手みたい。それでも私の話に付き合ってくれてる。後になって、息抜きと言っていたのに悪いことしたかなーと思った。


「……色級は色によって階級を区別する制度だ。私は黒。副団長、アシュレイは緑だったな。団長が黒、副団長達がそれぞれの属性を表す色を与えられる」

「副団長、たち?」


 副団長はアシュさんでしょ? それぞれの属性ということは四人の副団長がいるということでしょうか。


「アシュ兄の他に三人の副団長さんがいるよー。緑と赤が人間で、青と黄色が獣人なの」


 眠ったプキを起こそうと、つついたり引っ張ったりしていたカオン君が代わりに答える。

 へえ……。人間と獣人の平等はこんなところにも表れているんだね。


「ん? あれ? でも、獣人は魔法が使えないから」

「それは気にしちゃいけないところだよー」


 ……気にしちゃいけないそうです。

 ま、まあ、副団長二名が獣人という素晴らしい情報を手に入れたので、今日の探検が楽しみになりました。カオン君も誘って四人で行こう。


「階級の区別といっても団長と副団長にしか色級は与えられないが。昔は隊長格にも細かく色が定められていたが、人間部隊と獣人部隊の中に、人間近衛部隊、獣人近衛部隊、主に内勤を担当する書類部隊に非常時の治療部隊、街の正門には警備部隊、それに」

「ジェイさん! す、ストップです! ストップ!」

 

 急に爆発的に喋り始めたぞ!? 


「そんなに聞いても覚えられないです」

「そうか……」


 あ、あれあれ? ジェイさん、落ち込んじゃってない!? しゅんとしちゃってない!? ごめんなさい! 途中で止めちゃってごめんなさい!


「あ、ああああ……! 聞きます! 私、どんな部隊があるのか知りたいです!」


 なんで私はおじさんを慰めてるんだろう。

 カオン君に助けを求めたら、えへへーと微笑まれた。違うよ! カオン君の笑顔にはとても癒されるけど、今は笑ってないで助けて!


「僕、団長さんは怖いって言ったよー。好きこと話し始めたら、逃げれなくて怖いのー」


 いやいやいや! わからないから!


「増え続ける部隊を色で区別することが次第に難しくなり、治療部隊を最初に色級の制度が……」


 

 うん。日が暮れかかるまで放してくれなかったジェイさんは本当に怖かった。

 代わりに騎士団の部隊の歴史についてはかなり詳しくなったけど。




ありがとうございます。

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