実はすごい人です
短いでしょうか
「それじゃ私はリスルとディオールに本部を紹介してくるから。アシュ、アイラルのことよろしくね」
「僕はここにいていい? アシュ兄の魔法みたい!」
「いいわよ」
というわけで、カオン君と私を残して他の三人は部屋を出て行ってしまいました。
あの、私は? 私はなんでここに置いていかれたのでしょう。
初対面ふたりと普通に会話できるほど私の精神面は強くないよ。
「あの……アシュレイさん」
「アシュでいいって。それよりアイラルちゃん、この本を片付けるの手伝ってくれるかな」
「はあ……」
片付けても片付けなくても同じような気がするけどなぁ。ここ以外に他の場所でも雪崩が起きてるからね。
犬の手で器用に本を抱えているカオン君だけを働かせるわけにいかないから、私もお手伝いしなくては。
本を数冊積んで渡すと、アシュレイさん……アシュさんは適当に本棚の中に詰め直す。そんな詰め方するから、ちょっとぶつかるだけで崩れるんだと思うよ。
「はい、これでおしまい。それでアイラルちゃん。なんだって?」
ソファに座るように促されて、カオン君の隣に座った。アシュさんも向かいに座る。
このソファも本のせいで座れる面積が非常に少ない。
「聞きたいのは私の方です……。私、ウィンディさんに何も聞いてないです」
寝てる間に騎士団に着いてて、ここに置いていかれたんです。そう言うとアシュさんは声を出して笑った。
「俺は全部押し付けられたわけね。わかった、説明しようか」
鼻歌交じりに机のほうへ歩いていって、引き出しを漁っている。
「アシュ兄の魔法すごいよ。ウィンディさんが、変人だけど魔法の腕は騎士団で一番って言ってたんだ」
変人って……。
ウィンディさん、アシュさんのこと嫌いなの? カオン君もズバッと言うね。副団長なんだよね? この人。
いきなり本に埋まったり、ノリが軽かったり、騒がしい人だ。でも変人とまではいかないと思うけどな。
まだ何かを探しているアシュさんをじっと見ると、目が合ってニコッとされる。
笑顔の破壊力に一瞬とはいえドキッとしてしまったのは内緒だ。掴めない人なのに、顔はいいんだもの。
「あ、あったあった」
アシュさんが持ってきたのは、小さな小さな首飾り。私だと指輪で丁度いいくらいの。
「まずはお近付きの印に。ポケットに入ってる魔獣ちゃんにつけてあげるといいよ」
「え……」
ポケットを触ると、寝ていただろうプキがもぞもぞ動いた。
カオン君は首を傾げる。
「魔獣?」
「あ、うん。プキっていうの」
ポケットから出してあげると、プキは寝ている間に知らない場所にいて驚いたようだ。後ろ足で立ち上がってキョロキョロしている。
「わっ! 触っていい!?」
カオン君にも最初は警戒していたけど、すぐにすんなり彼の膝の上に移動した。
「……これをプキにプレゼントですか?」
なんでまた、プキに。
説明しようかって言って説明してくれないし、それになんでアシュさんがプキのことを知ってるの。
「うん。俺の魔力がちょっぴり混ぜてあるの。俺はアイラルちゃんみたいに動物と会話はできないけどさ、風の魔力で波だっけ、それを変換することには成功してね。この首飾りがあればそこの魔獣ちゃんとは話ができると思うよ」
「本当ですか!?」
「アイラルちゃんは賢いなー。難しい話したのに、わかったの?」
おっと、危ない。七歳ってどれくらいのことが理解できる年齢なんだろう。
「ただ魔獣ちゃんの言ってることはわかっても、俺達が言うことを魔獣ちゃんが理解することはできないんだよな」
やはり私の魔法を道具で代用するには時間がかかるとアシュさんは言った。
カオン君と遊んでいたプキに首飾りをつけてあげる。怖がらずにつけさせてくれた。プキが歩くと緑色の石が揺れる。
『緑、キレイ。プキ、嬉しい』
「本当だ!」
魔法を使ってないのに、プキの言葉がわかった!
「おー、魔獣ちゃん可愛い声してんな」
「プキちゃん、すごーい!」
しかもアシュさんやカオン君にも届いてる!
アシュさんすごいすごい! こんなものを作っちゃうなんて!
「よしプレゼントは成功だな。本題に入ろうか」
モチベーションを上げてくれた友人sに感謝です。
ありがとうございます




