九時間目:割り当てられた自室
寮監が入って来てしばらく。
「全員揃いましたねぇ?」
中学生くらいの背丈に、茶色いふわふわしたロングヘア。青系のカジュアルスーツの上下に青いハイヒール。眠たそうな双眸。間延びしたその喋り方は、
「小村先生じゃないか!」
そう、小村先生だった。
「そうですぅ。人材不足なのでぇす。小村先生改めぇ、小村寮監でぇす☆」
最後にウィンクを一つ。…あまり触れないでおくことにする。何か深みにはまりそうだからな。
「寮にはぁ、消灯時間に起床時間はありませんがぁ、学校には遅れないようにしてくださいねぇ? それと、寮にはぁ、この階にありますのでぇ、ここで食事を摂っていただいても結構ですぅ。昼はぁ、弁当も売ってまぁす。利用してくださいねぇ? ではぁ、何か質問はありませんかぁ?」
誰も何も言わない。何だかんだでこの先生、説明するのが上手い。
「ではぁ、部屋割り表を配りますねぇ? 部屋はたくさんありますのでぇ、一人一部屋ですぅ。あ、部屋
の鍵はぁ、生徒手帳であきますのでぇ、鍵はありません~。他にはですねぇ、部屋にある備品は全て支給ですのでぇ、自由に使ってくださいねぇ?」
そういって小村先生はプリントを配り始めた。俺は、……一三号室か。微妙に縁起悪いな。
「あ。そぉだ、消耗品はぁ、無くなった時に購買で買って下さいねぇ?」
と言って、指差した先に購買はあった。
「プリントを受け取ったらぁ、今日はぁ、もうこれ以上何も無いのでぇ、解散としますねぇ? あ、でも
でもぉ、明日の朝はぁ、五時に教室集合ですのでぇ、遅れないようにしてくださいねぇ?いくらもう春休
みと言ったってぇ、一般生徒の一部が寮に残っていますのでぇ、集合時間は早めでぇす。ではではぁ、鍵を取りに来てくださいねぇ」
俺は、とりあえず部屋に向かう。
「と、一三号室は、と。……お、あったあった」
裏ロビーから階段を上がった二階(……二階?)の、一番端っこに俺の部屋はあった。
ドアには白紙の紙がついている。きっと表札だろうな、と、その紙をとりつつ部屋に入る。後で名前を書いておこう、と心にメモする。
部屋は、確か四畳半の1LDKって小村先生は言ってたな、と頭の片隅で思い返しつつ、新しい我が家の中を探検する。
さすが超有名私立高校だな。床はもちろんフローリング、壁紙は落ち着いた白。おまけにユニットバスと、トイレまでついてる。それに、ベランダもあるな。
極めつけは、家具がすでにある。
「すげぇ、ベッドなんて始めて見た!」
俺の家は貧乏だったので、いつも床で布団敷いて寝てたからな。これはテンションあがる。これで毎晩寝ていいの? お金とか取られない?
部屋にはキッチンがついていて、小型冷蔵庫もある。試しに開けてみると、
「ま、何も無いよな」
急にテンション下がった。