四時間目:入……学……?
男についていくと、黒塗りのリムジンに乗せられた。
そして、男は偉そうに足を組むと、俺の方を向き、言った。
「まだ名乗っていなかったね。私は、能力開発促進機構(ADPO)のトップの、美杉研史と言う。ADPOと言うのはだね、君たちみたいな能力者を育て、観察し、データを取る機関の事だよ。」
は? ADPO? さっぱり意味がわからない。…ていうかこいつ、俺のこと知っているのか? 待てよ、こいつは君たちと言った。俺みたいな奴が他にもいるのか?
混乱しまくっている俺を面白そうに眺めていた美杉が、肩をすくめると、言った。
「要するにだね。君たち能力者を全面的に支援する機関が私率いるADPOと言う訳だよ。分かったかね?」
その説明ならなんとか飲み込めそうだ。
というか俺は能力者扱いか。……まあ、そうだよな。
あぁ、と相づちを打ち、話の続きを促す。
「それでだ、簡単に言えばだね、君に私の、あ、いや、私達のモルモットになってもらいたいのだが?」
今私のって言ったよ? 何されるの、俺?
しかもモルモットのところは訂正しないし。
でも、と気持ちを切り換える。どの道、社会的に死にたくない俺には選択肢なんて無い。モルモットにでもなんだってなってやるさ。
それでいい、と目で返事する。
「いいようだね?なら、まずはこれに着替えたまえ」
そう言って出してきたのは、
「制服?」
そう、制服だった。しかも、適正偏差値が80オーバーの超有名私立進学高校、志義野学園の制服と同じ形。が、明らかに色がおかしい。
その制服は、白のカッターシャツに黒を基調に赤いラインが入ったブレザーと、黒のスラックス。ネクタイまでついているのか。色は落ち着いたワインレッドだ。
ハッ! つい普通に描写してしまった!
「なんで学校なんだ!」
そう、そこだ。真っ先に疑問に思うところがここだよ。
「なんでって、それは、君、この春から高校生だろう? 私が理事を務めるこの学園に君を通わせようと思ってね」
そんな事言ったって、並くらいしか勉強ができない俺が、こんな学校でやっていける訳がない。授業が
始まって二日くらいで不登校になるぞ?
その旨を美杉に伝えると、そいつは、ニヤリともせずに言った。
「ああ、君が通うのは、普通科でも、文理科でもない。特殊科だよ」
そして、さらりととんでもない爆弾をほうってよこす。
「あと、特殊科の存在が世間に洩れたら、君たち特殊科生全員殺されるから。他言無用で頼むよ」
え、何この人「今日の天気は晴れか」くらいのテンションでとんでもない事言ってるの?
美杉は、チラッとも窓の外を見ずに、
「さぁ、そろそろ学園だ。準備をしておきたまえ」
たいした準備が無いのはお互い分かっているので、美杉が言う準備は心の準備のことだろう。
「そうだ。言い忘れていたが、君の罪は私がもみ消しておいた。感謝してくれたまえ」
…本当に一体何者なんだろう、この人。
そして、俺は、学園内に入った。