八時間目:決着
「は?」
「は?」
「へ?」
「え?」
「はぁ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!?」
その場にいた全員――表護以外の六人の声が被った。
そして当の本人、表護が立ち上がると、張り詰めていた空気が一気に弛緩した。
もう前髪は光っていない。
「さて、謝ったことやし。真李先生、僕、降参するわ」
崩した正座――女の子座りでへたり込むフェイ、メガネのブリッジを押し上げる動作が空振りし続けている翔、長髪をかきあげる動作が様になっていない咲夜、動けない俺、表情が笑顔のまま固まっている小村先生。そして、薄黄緑色の光槍を誤って射出してしまった鈴。
誰も、表護の負けを宣言する人間はいなかった。
☆ ★
「あー、今日はほんまえらい目にあったわ」
『久しぶりですね、炎髪の魅』
「えー、なんや、もしかして寂しかったん?」
『何を言っているんですか、定時連絡をサボっていたあなたに対してのイヤミに決まっているでしょう』
「そう? そうは聞こえへんかったけどなぁ」
『ところで、今日も能力を使いましたね?』
「ああ、まあ、仕方ないんとちゃう? 使わな、死ぬか、大怪我してたやろうし」
『それでも、他の人間にあなたの能力がバレるわけにはいかな――』
「大丈夫やって。ほかの人間から見えへんように調整してるし、使うのも壁とか光とか僕の能力やって気づかれへんような能力ばっかやったし」
『バレてないのならいいのですが。ですが、くれぐれも気をつけてくださいね? あなたの本来の能力がバレてしまっては、任務に差し支えます』
「大丈夫、コードCにはバレてへんから」
『それは当たりまえです。もし、コードCにあなたの本来の能力、所属、どちらか一方でもバレれば――』
「死刑、やろ? わかってるって。僕もまだ死にたくないからね。それに、姉ちゃんを置いて死ぬなんてありえない。そうだろ?」
『だから口調――はぁ、あなたのことだから、大丈夫なのでしょうけど、それでもやはり私はあなたのことが心配です』
「大丈夫やって。姉ちゃんがおるのに、ほかの子に浮気したりはせんし、好きになったりもせんから」
『当たり前ですっ!』
「うわっ!? 急に大声ださんとってーな。今ちょっと三半規管がおかしなってんやから。しかし、あれ、コードCほどじゃないけど、多賀鈴――鈴ちゃんも大分危険やで」
『あなたがほかの人間を危険と表現するなんて珍しいですね』
「いや、ほら僕がせっかく壁張ったのに、鈴ちゃんの光槍のいくつかはそれを突き破ってきたし。あれはちょっとひやっとしたわ」
『無事そうでなによりです』
「あれ? なんでわかったん?」
『あなたがその程度の能力で怪我をするとは思えませんので』
「そう? その期待が今は嬉しいわぁ。じゃあ、姉ちゃん。また電話する」
『定時連絡はサボらないでくださいね』
ピッ
暗闇に、液晶画面の光が浮かぶ。
「いやー、三半規管がおかしくなってるのはホンマやねんけどなぁ。鈴ちゃんも、だいぶ危険な子やわ。もしかしたら――僕と同じ、どっか別の機関所属やったりして」
とりあえず書き終わった分はこれまで。
だから一章一気投稿もここまでで終わります。
これからは書き下ろし投稿で、受験が終わり次第、更新を再開します。
ではまた会う日まで。




