三時間目:ターニングポイント
撲殺轢殺圧殺焼殺裂殺絞殺。いくらでも思いつくが、どれでもいい。過程はどうあれ、こいつ等を待つのは死、永遠の闇だ。
俺は、動かなくなった人間の首から手を放すと、次の獲物を探しに学校を駆けた。
全員を殺さないように、だが、最低でも一ヶ月は動けないように「破壊」していく。
どうやら俺に人を殺すほどの勇気はないらしい。
だが、今はそれでいいだろう。
この力があれば、もう写真を破かれることはない、ああ、いや、もうその破かれる写真は無いんだ。
脳内は冷たく凍てついていて、体は熱く、勝手に動いて目の前の“ソレ”を砕いていく。
そして。
“ソレ”を壁に投げつけて10cmほど壁にめり込ませてから思った。
つまらない、飽きた、と。
同時に、気分の高ぶりも急激に冷めた。
急に、凍てついた脳が動き出し、熱を放つ体が冷える。
辺りには、自分の体を抑えて呻く“ソレ”らが散らばっていた。
その後、俺は警察に捕まり、けがを負わせた人数22人で、拘置所に入れられた。ちなみに、俺が潰したのは不良集団だけで、全員が奇跡的に一命は取りとめたんだとか。いや、おおげさに言いすぎか? 全員骨が折れたりしただけで、命には全く別状はないし、今後の生活に支障もなんらないんだとかなんとか。
ただ、リーダーだけは両腕が捻じ切られており、俺はそれで罪が重くなることが確定しているらしい。
さすが、俺、手加減ばっちり、と喜ぶべきなのか、やりすぎだろ、俺、と自身を蔑むべきなのか、迷った。
そこで、急に怖くなって、檻を引き千切って逃げた。
が、その後あっさり捕まった。
もう一度檻にぶち込まれた俺の前に、そいつは現れた。
その男はただひたすらに、黒かった。黒のスーツ上下に黒のカッターシャツに黒のネクタイに黒の靴にわざわざ黒に染めなおしているとしか思えない黒い髪。
俺の視線に気付いたのか、そいつはズボンの裾をおもむろに持ち上げると、言った。
「靴下も黒だ」
…ひたすらにどうでもいい。
「君には私と一緒に来てもらおう。だが、無理強いはしないよ。君には選ぶ権利があるからね。ここで腐っていくか、それとも、私と一緒に来て、社会的な何もかもを捨てて、今ここにいる“琴香狩麻”を殺し、第二の人生をスタートさせるかだ」
その男は、そこで言葉を切り、牢屋の鍵を開けた。
「さぁ、選びたまえ。君には選ぶ権利があるんだからね」
俺は、何も言わず牢屋のドアをくぐった。
「それでいいんだ」
男は、頷くようにして言った。