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ん? 世界? 壊せるけど……何で?  作者: たしぎ はく
二章 ~決闘をしよう~
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五時間目:蜃気楼ってアレ、反則じゃね?


 俺の足が、翔の体を貫いた。

 否、俺の体ごと擦り抜けた。

 …擦り抜けた?どういうことだ?


「……まぁ、ぼくもそこそこ化け物ですが」

 さっき翔がいたのとは別の方向から声がかかる。

 刹那、背中に寒気のようなものを感じ、跳び退りながら、体を反転させ声のしたほうに体を向けて着地する。

 さっきまで俺が居た場所に、炎が上がっている。

 今、確かに殺意というものを感じた。この身を持って。

 さて置き、声がしたほうを見る。


 そこには、数人の翔がいた。


 いや、今も増え続けている。すでに十人を越えているだろう。


「は? 気のせいかな、翔がたくさん見える気がする」

 その間も翔は増え続け、最終的には二五人にまでなった。…キモッ!


「……気のせいなんかじゃないですよ。これは、ぼくのいわば必殺技。名を《蜃気楼(ミラージュ)》って言います。今さっき思いつきました」

 ……なるほど! さっき俺が貫いたのは、蜃気楼の一つだったのか。それで、全てに合点がいった。

 全方向に気を配りながら、この状況を打開する作戦を考える。

 が、思い浮かばない。翔が能力を発動させるに連れて、焦りだけが募る。落ち着け、落ち着け俺。

 はい深呼吸。吸ってー。


「グェホッ、グェホッ」

「君って馬鹿ですよね。ここで深呼吸なんてしたら炎の熱波に肺を焼かれますよ?」

 翔からのじっとりした視線が痛い。

 恥ずかしさを紛らわせる為に、とりあえず、蜃気楼の翔を吹き飛ばす。

 本物がどれか分からないから、焔の壁内の床を全部踏み抜く。


「はい、せぇー、のッ」

 ドガァン!

 よし、成功。とりあえず、翔がどれかは分かった。

 蜃気楼は全部消え、床とその地面の間のところで、翔と向き合う形になる。


「もはや化け物という言葉もなんかしっくり来ないですね」

「俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもねぇの。じゃあ決着つけますか」

 床を支える柱を蹴り付け、翔に飛び掛る。

 ……後ろで更に床が抜ける音がしたが気にしない。

 渾身の一撃を、翔の顔面に当たる寸前で止める。


「降参する?」

「えぇ、悔しいですが僕の負けのようですね。全く反応できませんでした」

 能力停止。


「勝者、琴香君~」

 っし! 勝った! あと一人!


「ですが」

 ですが? …いやな予感がする。


「施設を破壊しすぎです。見なさい、ほら」

 確かに、特殊教室は大変な事になっていた。まともに立っていられる床は三箇所、天井や壁にはところどころに穴が空いている。全部俺だな、うん。

 あと、小村先生口調変わってます。笑顔に影がついてるんですが。……夢に出る。


「琴香君、君は失格ですぅ。いくら存分に暴れてもいいといったってぇ、限度がありますよぅ。これは壊すじゃなくてぇ、砕くですよぅ」

 はい、失格でいいです。俺にはその笑顔に口調チェンジのコンボが一番怖いです。



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