四時間目:炎は消火しましょう
「ではぁ、第二回戦~。琴香君対破義君ですねぇ。はぁい、試合開始ぃ!」
翔の能力は、超能力で言うと、ようするに発火能力だ。つまり、火炎神の加護を受けた、対象物をある程度自由に発火させる能力である。
先に動いたのは翔だった。
っと、能力発動。
「咲夜みたいに先手を譲ってはくれないんだな」
さっき咲夜が発芽させてそのまま放置されている樹が次々と燃え上がる。
「……先手必勝です」
一瞬で俺は火の海に飲み込まれた。
「……どうですか、ぼくの能力。名付けるのなら《焔の海》です」
そういって眼鏡を右手の中指で押し上げる。
「……どうしたんです? 死にましたか?」
焔の海に回し蹴りを放つ。
すると、炎は全て消えた。消火完了。
「……焔の海を、蹴りの風圧だけで消したって言うんですか? まるで化け物ですね」
「あぁ、化け物になる事を望んだからな」
翔は次々と炎を放ってくるが、全て蹴りの風圧で消す。消火消火。
「……では、これならどうですか」
言って手をかざしたのは、俺。
「……動けば、あなたを燃やします。消し炭になりたいのならぼくは止めませんが」
ご自由にどうぞ。
「まるで面白くないな、雑魚が」
床を思いきり蹴りつけ、上に跳ぶ。
「……何をしようっていうんです?」
応答しないで翔の真上まで行く。
「さァ、燃やしてみろよ。ほら」
「……ぐぬぬ」
「どォした。動けば燃やすんじゃなかったのか」
ちなみに、俺は今天井に脚を突き刺して張り付いている。
でも、すぐ降りることが出来るように、つま先を引っ掛けているだけである。けっこーしーんどーい。
Qこの状態で俺を燃やしたらどうなるか。
A翔に落下します。
つまり、そういうことだ。翔が俺を燃やせば、俺が落ちて翔も同様に燃えるからな。
「……そういうことですか。それならば、こっちは《焔の壁》で対抗する事とします」
そういうなり、翔は俺に向けていた手を下に振り下ろす。
と、その手の軌跡をなぞるように炎が延び、俺と翔を隔てる壁になった。
「……これでぼくに攻撃することは出来ないんじゃないですか。目隠しと防御、両方に使えて中々に便利です」
「最後まで面白くないよ、お前。もういいよ俺の勝ちで」
「……自分の負けを悟って強がりですか。言っておきますけど、この壁、少なくとも五メートルはあります」
だからどうした。天井から足を離し、天井を蹴り落下スピードをあげる。
空中で反転し、足から炎に突っ込む。
炎は俺のスピードに伴う風圧で、俺が通るところに丁度道が出来る感じで開ける。
炎を突き破った所で翔と目が合った。
「……本当に化け物ですね」
俺は、跳び蹴りの要領で翔に足から突っ込む。
俺の足が、翔の体を貫いた。




