三時間目:壊しすぎ
「な、なんて無茶苦茶な…」
えぇい、いちいち髪をはらうな鬱陶しい。切れ!
これで、もう咲夜に攻撃手段はないはずだ。そう、さっき咲夜が蒔いたのは多分草花の種だ。さすがにこんだけ派手に床ぶち壊せば能力で成長させても穴を避ければ届かないはずだ。
今度は何の遠慮も無く咲夜に駆け寄り殴りかかる。が、咲夜がさっき蒔いた種を発芽、急速成長させ俺にぶつけてきた。
太い! 枝の一本一本がドラム缶ぐらいある木だ! 草花じゃなかった。樹木の種を蒔いていたんだ。
木の枝がまさに嵐のように襲い掛かってくる。一本一本の動きはそれほど速くないので、よけるのはさほど難しくない。
でも、太いのと数があるのとで、全然余裕はない。気を抜くとすぐ暴力の嵐に飲み込まれかねない。
「どうだい、僕の能力は。名づけるとしたらこの技は《樹嵐》かな。いい名だろう?」
「ッ! 知るかッ」
樹の枝をはたき叩き殴り蹴り突き折り、樹の枝の嵐を全て弾く。
「……面倒くさい。飽きた」
「はぁ? 何を言っているんだい? 劣勢なのは誰から見ても君だぞ?」
樹の枝を弾きながら近づいていく。
「……面白くない。お前の能力は弱い、咲夜」
それに近づき思い切り殴り飛ばす。折れたな。樹が。
「な、素手で樹を折り倒すとか、無茶苦茶だな、君の能力は…」
もう終わらせよう。咲夜の元へ走り、右手を握りこむ。殴る。
咲夜の顔を目掛けて殴りつける、が何か固いものに阻まれ、てない。そのまま突き破る。樹を防御に、盾に使ったのか。
「無駄無駄ァ!樹ごときで俺を防げると思うなァ!」
気分が高揚していくのが自分でも分かる。
「僕の《樹の盾》を破っただと? そんな馬鹿な!」
えぇい、いちいち騒ぐな鬱陶しい。黙れ。
「とりあえず死ね」
「え? 殺す気? さ、さすがにそれはシャレにならないんじゃないかな…?」
知った事か。咲夜の手前で跳び、殴りかかる。
「セアァァァッ!」
樹の盾ごと咲夜を殴りつける。
その勢いのまま床も突き破り、そこで拳を止める。
床を突きぬいた時に立った砂煙が納まったとき、俺の右拳は床を突き破っており、右腕のすぐ隣には、咲夜の頭があった。
「あれー? クリーンヒットを逃してしまったぞう(←超棒読み)」
なにはともあれ、俺の勝ちだろ。咲夜気絶してるしな。
「勝者琴香くん~」
よし、勝った。鈴に向けてピースサインを出しておく。イエーイ。
能力停止。
俺の能力は発動に制限は無いけど、発動しっぱなしだったら疲れるからな。
「でもぉ、あまり施設を破壊しすぎるのはやめてくださいねぇ? しばらく使用不可になるんでぇ」
……あの、笑顔が怖いです。凄く怖いです。その素敵な笑顔の奥に何を秘めてらっしゃるんでしょうか? ……怖いので聞かない事とする。
「あんまり壊し過ぎるようなら失格としますのでぇ、その辺気をつけてくださぁい」
はい、気をつけることとします。なのでその笑顔引っ込めてください。怖いです。
それは笑顔じゃないです。笑顔の形をした無表情です。さっきから全く顔の形が変わらないです。ずっと笑顔。……もうやめてぇ!




