二時間目:三神の息吹
「ちょ、待って待ってって! ほんまに何もしとらんから」
「本当に何もしてないのか?」
無言で頷いたので、手を下ろす俺&鈴。
もし嘘だったら、後で昼飯とかおごらせよう、と固く心に刻む。
「本当に何もしてないのね? なら、竜尾さんに放課後聞きましょ、狩麻?」
そうだな、と目で鈴に合図して、話を変える。
「ところで表護。お前の能力使えばいいものを、なんで使わねぇの?」
「そんなんフェアじゃないし何よりおもろないやん!」
即答だった。へぇ、意外と純粋、なのか?
☆ ★
放課後になった。
場所は特殊教室(裏)。大きさは、体育館二つくらいで、かなり広い。特殊科の施設なので、地下にあった。
俺達は、いま三神と向かい合っており、間に小村先生がいる。
協議の末、というか、相手が提示したルールは、三人制一対一勝ち抜き戦になった。
つまり、各チーム一人ずつ代表を出して対戦し、負けたチームの代表は下がり二番手が出てきて勝ちチームの一番手と戦い、といった感じだ。勿論戦える奴がいなくなったチームの負け。選手交代は原則できない。
で、俺達のチームは、一番手俺、二番手鈴、三番手表護になった。はっきり言って表護は戦力にならない。
あ、勝負を始める前に聞く事があったんだった。
「竜尾さん。表護に何されたの?」
「ストーカーと押しかけ。あと、フェイのことはフェイって呼んで?」
どこか近くで薄黄緑の燐光が光った気がするけどきっと気のせいだろう。表護が二十メートルくらい横に吹っ飛んでるのもきっと気のせいだ。そうに違いない。
「ではぁ、勝負をはじめますよぉ? 用意はぁ、いらないですねぇ」
適当に距離を取るべく俺は鈴を下がらせ、三神一番手の桜庭咲夜と対峙する。
「壊してもすぐに工事しますのでぇ、存分に暴れていただいて結構ですからねぇ」
咲夜の能力は、幻界の植物男の加護を受け確か植物の成長を自由に制御し、また自由に操る能力……だったか。なかなか手強そうだ。
「ではぁ、試合開始ぃ」
しまらないなぁ、小村先生。
とりあえず、相手の出方を窺うことにするか。
咲夜は腕を伸ばした。身構えたが、何かを蒔いただけ、か?
「さぁ、準備は終わりだよ。狩麻くん、君からどうぞ?」
そういって、男の俺でも分かる美貌にかかる長髪を手ではらう。
能力発動。
相手が仕掛けてこないなら、俺から攻めるか。
右足を勢いよく踏み込みさっき咲夜が何かを蒔いた床を陥没させる。脅威はのぞいておくに越した事はない。




