表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ん? 世界? 壊せるけど……何で?  作者: たしぎ はく
一章 ~班分けをしよう~
22/31

ん? 世界? 壊せるけど……なんで? 一章改稿なし原文


 はい、これで一章のサルベージは完了です。


 二章もまただいぶ空きます。


 できるだけ早くにお目見え出来ればなー、と。


 あと、班名はだいぶ変わりました。


 昔の自分から進化できてたらいいなーとか思ってみたり。


 あと、原文の方は誤字脱字の方もあえてそのままにしてありますので、そこの指摘はされても変更しないと思います。


 ではまた会いましょう。


第一章 その後班結成


 次の日、教室に行くと、既にほぼ全員集まっていた。


 皆早いな~、と思いつつ、昨日と同じ席に座る。服は、制服を着ているが、例の如く全員私服だった。


 まだ眠気が残ってぼんやりとしている頭でそんな事を考えつつ眠気を噛み殺していると、ドアを開けて小村先生が入ってきた。


「はいはい~、LHR(ロングホームルーム)を始めますよぉ?」


 昨日と同じカジュアルスーツの小村先生は、教室に入るなり言った。


「え~、自己紹介は昨日したのでぇ、今日は君達が疑問に思っているであろう、何故能力者なんかを育成するかについて話しちゃいますねぇ?」


 …いや、全然疑問に思ってなかったのだけど…。そう思い教室を見回すと、皆一様に頷いていた。…え? 疑問に思ってなかったの俺だけなの?…


「君達を育てる目的はぁ、異世界からこの世界を乗っ取ろうと侵攻してくる神に悪魔に伝説上の生物からぁ、この世界を守る救世主になってもらう為の戦士を育てる事でぇ、当志義野学園特殊科の役割なのですぅ。ちなみにぃ、異世界にも色々あってぇ、その全てに名前があるんですがぁ、全部上げるとキリが無いのでぇ、代表的なものを三つだけ言いますねぇ?」


 と言って、小村先生はグーにした手を突き出した。


「ひとーつ。神々の住まう世界、神界」


 人差し指を立て、二つ目を言う。


「ふたーつ。悪魔の巣食う世界、魔界」


 中指を立て、丁度ピースサインみたいにして三つ目を言う。


「みーっつ。伝説上の生物が闊歩する世界、幻界」


 三本立てた指を開閉しながら、小村先生はさらに、と繋げる。


「この異世界はぁ、この世界と重なり合うように存在していてぇ、本来は皆さんの周りにも何千何万もの世界が広がっているんですがぁ、見えませんしぃ、干渉する事もできません~。が、この何者にも支配されていない世界、〈ファイリア〉に神々が最初に気付きぃ、支配しようと手を出してきたのがつい二十三年前ですねぇ」


 小村先生は、更に更にぃ、と続ける。


「悪魔達も神々同様この世界の有用性に気付いちゃってぇ、神々と手を組んでこの世界の侵略を試みているようですねぇ。ちなみにぃ、この世界の有用性と言うのはですねぇ、何とこの世界、魔法的な力を使える者のいない唯一の世界なのですよぉ」


 小村先生は、つ・ま・り、と一本だけ立てた指を横に振った。


「この世界に来る事ができたらぁ、世界そのものを手中に収める事ができるということなのですよぉ」


 なるほど、俺でも言いたいことが分かったぜ。


「外国と日本の戦争を例に説明しますとぉ、外国は核兵器や次世代型兵器をたくさん持っているのに対しぃ、日本は丸腰、素手で核兵器を相手にするようなものなのですよぉ。つまり神や悪魔の力はぁ、外国における核兵器に対しぃ、君達はぁ、その日本に置ける切り札、それも一発逆転を狙える秘密兵器だと言うことでぇす」


 お分かりですかぁ? と最後に付け足し、小村先生は、教室中を見回し。


「何か他に質問はないですかぁ?」


 と聞いた。誰かが、じゃあ、僕達のこの力は、一体どういう仕組みで発動できるんですか?と手を挙げて質問。自己紹介聞いてなかったから名前なんて分からない。


「いい質問ですねぇ、今分かっている所では ぁ君達に宿る力は、さっき並行世界論、あっ、世界は重なっているっていう話のことですねぇ。でぇ、その重なり合った世界は、普通干渉できませんがぁ、とある特定の条件下ではぁ、干渉する事が出来るのですよぉ」


 何がいいたいのかと言うとぉ、と、小村先生は、そのまま言葉を続ける。


 ちなみに、俺でも大体の話は分かった。周りの皆も表情を見るに同じ感じだろう。


「つまり君達はぁ、力の大きすぎる神や悪魔 の一端なのですよぉ。すごく簡単に言うとですけどねぇ。神達は、この世界に干渉する方法を編み出したのですがぁ、如何せん神達は力が強すぎますのでぇ、この世界に半分でも顕現すると、この世界そのものが壊れてしまう恐れがあるのですよぉ」


 それでぇ、と小村先生は、俺達を指差すと、続きを言う。


「この世界の人間に力の一端を分け与え、その人間を自分達で支配する、と神達は考えていたらしいのですがぁ、この方法はぁ、欠点が二つありましてぇ、一つはぁ、感情が何か一つに高まりきっている人間でないと成功しない事とぉ、もう一つはぁ、そもそも、力を分け与えてもぉ、支配下には置けないということなのでぇす。

 でぇ、私達はぁ、ほんの少しの皮肉をこめて、加護を受けると呼んでいるのですよぉ。分かりましたかぁ?」


 なるほど、さすがまがりなりにも先生だな。凄く分かりやすかった。だが、俺が力を使えるようになったのが何故なのかは分からなかった。


「君達にはぁ、一ヶ月間当学園で基礎知識を覚えてもらいぃ、その後十一ヶ月で自分の能力を最大限引き出して貰う実技の授業に入りまぁす。その工程が終了し、二年に進学したらぁ、一応君達はぁ、一人前の異世界から来たりし敵を討伐すしこの世界〈神魔狩り〉になってもらうわけですがぁ、なってもらっても学校には通ってもらいますからねぇ? 普通科目も一通り知識として必要ですからぁ」


 そこまで言うと、小村先生は、なにやらゴソゴソと鞄の中を漁り始めたが、目当ての物が見つからない

のか、鞄の中の物を机に全部ぶちまけた。


 化粧用品にハンカチにポケットティシュに書類っぽい紙束にメモ帳の切れ端っぽい紙切れの束、しいた

けにマイ箸スプーンフォークに文庫本サイズの本に布の筆箱に手鏡エトセトラエトセトラ。


 小村先生の鞄四次元ポケット説浮上!


 って危ない! 落ち着いてよく見てみろ、俺! 一個変なの入ってた! 絶対おかしい物が!


「なんでしいたけ!」


 小村先生は、探していた物が見つかったのか、鞄に出した物を入れながら、言う。


「非常食でぇす」


 そう来たか!


「絶対違う! 生じゃ食べられないから!」


 そもそも、何でしいたけ一個だけ何にも包装されずに入っているんだろう。


「もちろん加熱済みでぇす」

「調理してあるならなおさら包装しましょうよ! 小村先生!」

「それはぁ、鞄の中が綺麗なのでぇ、大丈夫ですぅ。食べますかぁ?」

「いりませんし、鞄の中がむしろしいたけで汚れるんですけど!そもそも、何故しいたけ!」

「いいじゃないですかぁ、しいたけ。美味しいですよぉ?」

「じゃあ干ししいたけ持って来ましょうよ! そもそも非常食なんでしょう!」

「それならぁ、今度干ししいたけ持ってきてあげますねぇ。君の為にぃ」


 駄目だ、話が通じねぇ…。


 ていうか、何故女性の鞄の中にしいたけ(調理済み)が入ってるの? しかも何故か包装なしで一個!


 え、何? 俺が知らないだけで世の中の女性は皆そうなの? しいたけインザバッグ?


 言葉の応酬の合間にも手を動かし続けた小村先生は、とある紙切れを残して全ての内容物を元の鞄に入

れた。


「それではぁ、今から班分けを行いますぅ。この班分けはぁ、実習の間ずっと行動を共にしますのでぇ、大事ですがぁ、皆お互いの事を、よく分かってないと思いますのでぇ」  


 小村先生は一度勿体つけるように言葉を切り、じゃじゃーん、と声に出した擬音つきで、右手に持った紙切れの束を持ち上げる。


「クジで決めたいと思いまぁす。ちなみに、一チームはぁ、三人になりますぅ。このクラスは三三人なのでぇ、ぴったり十一組に割り切れますねぇ?」


 といって、小村先生はクジを鞄から出した箱(どうやって出したのかはもう突っ込まない)に入れ、よく振ってから、グイッ、と突き出す。


「さぁ、取りに来てくださいよぉ? 順番はまぁ、また席順でいいですねぇ?」


 俺は、一番最後になるのか。残り物には福があるって言うし、きっと、いい仲間と同じチームになれるだろう。神様も俺を見放さないはずだ、多分。


 そんなことを考えている間にもう、俺の順番はまわって来た。


 ……一番か。なんかいい感じだな。


「みんなに回りましたねぇ? ではではぁ、一番から順番に行きますよぉ? ハイ、一番の人立ってくださぁい」


 俺は一番だったので立ち上がり、教室の中で俺の他に立っている人間を探す。


 …立っていたのは、昨日絶対関わらないと決めた白髪の悪魔女子と、長めの髪型で、右目の方に分けた髪を一房だけ赤に染めている人懐っこそうな印象の男子だった。


 …俺は、神への怒りを〈神魔狩り〉になるための動力にする。覚えとけ神。


 でもまだ、白髪悪魔女子が悪い奴とは限らない。そうだ、ポジティブシンキングだ俺。


「全班発表しましたねぇ? ではぁ、席を班ごとに変えますぅ。廊下側の前から順番になりますのでぇ、ちゃっちゃっと並び替えてくださいねぇ?」


 俺は、廊下側一番後ろの席に陣取っていたので、前に移動する。


 一番前の席は、部分赤毛に取られていたので、二番目に座る。


 で、白髪悪魔女子は、俺の後ろ。今更ながら、二番目に座ったことを後悔する。だって怖いし。後ろに悪魔系だぜ?


「全員移動しましたねぇ? ではぁ、班名を三人で考えてくださぁい。別にぃ、無くても構いませんが

ぁ、班名がぁ、一斑二班とかだとぉ、面白くありませんからねぇ? それではぁ、今から少し時間を取りますねぇ?」


 可愛らしい白の腕時計を見ながら言う小村先生。


 小村先生が、言葉を切るのと同時に、前の席の部分赤毛が勢いよく振り向いた。

「なぁなぁ、君、真李(まり)先生にやたらつっこんどった人やろ?…あぁ、自己紹介まだやったな。僕はぁ、佐々木表護(ささきひょうご)言うんや。漢字は、こう書く」


 と言い、部分赤毛こと表護は、紙に字を書いて教えてくれる。ふむ、こう書くのか。


 てか、同じ班の男子がいい奴そうでよかった。


「あぁ、俺の名前は琴香狩麻(ことかかるま)だ。よろしく」

「狩麻くんかぁ、よろしく」


 そこから、表護は急に声を落として小声になり、手を口のはたに当てて言う。


「…なぁ、狩麻くん? この特殊科、可愛い()多いと思えへん?」

「はぁ? 何を言い出すかと思えば!」

 

 と、表護は驚愕に目を見開き、自分の体を抱きながら、俺から体を離す。


「…狩麻くん、男にしか興味ない人……?」

「違ぇ!」

「…じゃあ、女体フュギィアしか愛されへん人?」

「何でそうなる断じて違ぇ!」

「…え?」

「何で聞き返された俺変なこと言った?」


 一息で言い切る。


「冗談やんか。いやぁ、狩麻くんほんまおもろいなぁ。僕と漫才コンビ組まへん? もちろん君突っ込みで」


「断固組まない絶対に!」


「え~、残念やなぁ、ほんま」


 本当に名残惜しそうな顔をする表護。感情がくるくる変わって面白いな、こいつ。なんか凄く仲良くなれる気がする。


「で」

「で?」


 聞き返してみるが、表護の見ている方向から、何が「で」なのかは分かる。後ろの白髪女子のことだろう。


 アイコンタクトを取る。


「「じゃんけんポン」」


 …負けた。小躍りするなうぜぇ。


 しぶしぶ後ろに振り向き、固まる。


 頬杖をついて廊下の方向を見ている横顔は凄く綺麗だ。


「狩麻くん? なに見とれてん?」


 後ろで表護がニヤニヤしてるのが分かる。


 分かったよ。やりますって。


「なぁ、俺、琴香狩麻っていうんだ。君の名前はなんていうの?」

「………(びくっ)」


 怖がられた? この娘に? …人見知り?


「…多賀鈴(たがりん)


 ぼそっと、告げる。多賀さんか。覚えておこう。美人だし。


「多賀さん」

「鈴でいい」

「鈴」


 あ、こっち向いてくれた。綺麗だな、凄く。


「狩麻くん? どないしたん?」


 はっ! そうだ、また見とれてた!


「何か用?」


 俺が固まってたら、白髪悪魔女子もとい鈴が声をかけてきた。


「あぁ、チーム名、どうしようか思って。…表護ちょっと来い」


 聞き耳を立てている表護を呼び寄せる。


 そして、もう一度聞く。


「で、チーム名、どうする?」


 二人を交互に見る。と、表護がびっ、と手を挙げる。


「はい、表護。先に言おう、トイレ、は無しだからな?」


 すごすごと手を下ろす表護。で、一瞬空けた後、もう一度、びっ、と手を挙げる。


「はい、表護。先に言おう、トイレ、は無しだからな?」


「全くさっきとおんなじこと言ってるで、狩麻くん?」


 それはともかく、と、ジェスチャーつきで、表護。 


「まず、僕達の能力言えへん? 気になるやんか、やっぱり。…まずは、言い出っぺの僕から言うわ」


 確かに表護と鈴の能力は気になるな。

 

 ゴホン、と喉の調子はいいのでさっさと言え表護。


「え~、ワタクシ、佐々木表護のフォースは、愛神(エロース)の加護を受けた、対象を自分に自由に惚れさせる能力や。…でもな、惚れさせてられる時間は一日で、逆に言えば、その期間中は絶対に、能力解けへんねん。不便やろ?この能力。戦闘に向かんし。次、狩麻くんな」


 こっちに振るな。でも、どっちにしろ紹介はしなければならないので、口を開き、自分の能力を説明する。


 次、鈴、と話を振ってみる。

「…大悪魔(ルシフェル)の加護を受け、防御力の一切を魔力に変換する遠距離攻撃魔法を、使える能力」

「あれ? 防御力一切なくなるて、今流行りなん?」

「なわけないだろ。…どうする? このチーム、防御を極限まで捨ててるんだけど?」

「…そうね、狩麻とあたしの能力、近距離と遠距離攻撃の超攻撃特化型と、被ってるわね」

「ところでさ、鈴って人見知りなのか? さっきから思ってたんだけど」


 無理やり話題を逸らす。


「…………」

「うわ! 凄い事聞きよった!」

「ごめん、変なこと聞いた! 悪気は無かったんだ! なんかテンパって」


 鈴は、伏せていた顔を上げると、口を開く。

 

 ここで罵倒されても文句を言えないので俺は身構える。


「…あたし、背中に羽、ついてるでしょ? この能力が目覚めた時から、ずっと、化け物を見るような目で見られたわ」


 そこで言葉を切ると、鈴は、無機質な機械みたいな笑顔を作る。…彫刻みたいで、少し怖かった。


「…あげく、親にまで見捨てられたわ。あたしは、研究所みたいなところに売られた」


 その美貌に浮かぶ笑みが、自嘲か、それとも、無理に笑っているのか。俺には判断できなかった。


「あたしには、友達どころか頼れる人も、親も居ないわ。だから、あたしは人見知りなんてものじゃない。対人恐怖症よ」


 予想以上に重い話が来てしまった。どうしよう、これ空気重くね? 


 ていうか、そんなことより、俺は、鈴の周りの人間に今、俺は怒りを覚えた。


 だが、過去は変えられない。だったら、変えられるのは、今だ! 俺が友達一号になってやる!


「鈴、俺が居る。俺が友達になってやるよ。俺はお前を化け物なんて思わない。俺も、充分化け物だからな。だから、誰にもお前の事を化け物なんて呼ばせない。もし呼んだら俺がぶん殴る。俺と、友達になってくれないか、鈴?」


 呆気に取られたような顔をしている鈴と、ニヤニヤしてる表護。でも、一度言った事は取り消せない。


 意を決したように、鈴は両手を顔の前に持ってくると、手を合わせて、頭を下げた。


「狩麻ごめん! この話全部嘘!」


 ふうん。嘘だったのか…は? はぁ?


「えっ? えと、何が?」

「だから、さっきの話! あれね、嘘。ごめん!」

「え? は? 何で嘘?」


 思考がよくまわらない。落ち着け俺。とりあえず深呼吸。す~、は~、す~、は~。


「最初は同情誘って同じチームの奴等を下僕にしようと考えてたの」


 ふぅ、深呼吸のおかげか落ち着いた。


「で、なんでばらしたんだ?」


 そう黙っとけば絶対気付かなかった。それくらい、鈴の演技は完璧だった。ていうかそんなの初対面で

気付くか。


「いや、あのね? 狩麻があそこまで言ってくれて、嬉しかったんだ。それで、騙してるのが悪い気がしちゃって…」


 それでか。


「………それに、かっこよかったし、凄く……」

「ん?」


 よく聞こえなかった。聞き返してみる。


「何て言ったんだ? はっきり聞き取れなかったから、もう一回言ってくれ」


「…かっこよかったって言ってんの!(真っ赤)」

「おぉ、そうか(耳まで真っ赤)」

「痛! 忘れられてた思ってたら、でこピンて。三メートルくらい吹っ飛んだで?(血で顔が真っ赤)」


 それは、表護が俺と鈴のことをニヤニヤニヤニヤニヤニヤ見てたからだろ。後自分の攻撃が無茶苦茶な威力の事を忘れてたごめん。


「…(顔が真っ赤)」鈴。

「…(耳も真っ赤)」俺。

「…(血で真っ赤)」表護。


 誰か、この気まずい空気入れ換えて! 助けて! ヘルプミー!


 その時、意外な所から、救いの手が差し伸べられた。小村先生だ。


「はぁい、これでぇ、時間切りますねぇ? 班名が決まった所はぁ、言いに来て下さぁい。決まってない所はぁ、明日の朝までに考えといてくださいねぇ? 一斑二班みたいな名前は味気ないですからねぇ」


 俺達は、チーム名が決まっていないので、言いにいかない。表護が自分の席に戻り、俺も前を向いた。


 今日は、そのまま微妙な空気の中で、六時限しっかり授業を受けた。


 …あぁ、そうだ、さっき知ったけど隣にももう一クラスあって、俺達が一組、隣が二組らしい。


  ☆ ★


「そう言えば、表護って、関西圏の出身なのか?」


 場所は表護の部屋、チーム名を決める為に三人で集まろう、って事で、表護の部屋に来たのだが、鈴が

来ない。


 で、場を持たせる為の行動が、さっきの質問なわけだ。


「あぁ、この喋り方やろ? これな、正直言ってさっぱり分からん。確かに、出身は関西やけど。生まれも育ちも関西で、正真正銘、根っからの関西人や」


「へぇ、そうなのか。」


 そう、初対面から、ずっと思っていたのが、この疑問だった。だって気になるじゃん、こんなあからさ

まに変な喋り方の奴が居たら。


「僕からも、質問して良い?」

「おぉ、いいぜ」

「昼間も()ったけど、ぶっちゃけ、この特殊科の女子、みんな可愛いない? 例えば、鈴ちゃんとか涼風(すずか)ちゃんとか」

「誰だ? その涼風ちゃんって」

「ほら、長めでさらっさらの黒髪の耳の上に青い星の髪飾りつけてて、一重の涼しげな目しとって、いかにも大和撫子っぽい感じの()、おったやろ?」

「知らねぇ」


 でも、教室にいた気はする。


「えぇっ? 知らんの? 狩麻くん、女子の自己紹介聞いて無かったん?」

「あぁ、自分の自己紹介考えてたら、気づいたら他の人のが終わってた」

「もったいな! 僕なんか、クラスの女子みんなの名前と顔、もう一致するんやで? すごない?」


 全然凄くない。誇らしげに胸張るな。むしろ変態に生まれた事を嘆け。前屈みで生きろ。


「じゃあ、お前、班に分かれたとき、鈴の事もう知ってたのか?」

「知ってたよ? 狩麻くんももう知ってるものやと思とったねんけど? それで、鈴ちゃんにすっかり騙されとった僕は、狩麻くんに、どっちが話しかけるか、って意味でアイコンタクトや」

「なんだ、俺は、名前をどっちが聞くかって意味かと思った」


 そんなやり取りをしてたら、鈴が、表護の部屋に来た。


 鈴の服は、ニットの白いワンピースみたいなのを上に着て、スパッツを下にはいている。いくらもう暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冷えるからな。


 が、俺は騙されない。昼、鈴は下着同然の格好をしていた。


 で、


「翼は消せないのか?」

「これ? なんかね、消せないのよ、自分の意思で。でも、背中に直接生えてるわけじゃないから、服とかは不便しない」


 といって、後ろを向いて生え際を見せてもらった。…確かに、五センチくらい浮いてるな。


 あと、鈴は教室で猫被るのもやめたっぽい。


 まあ、今は些細(?)な事はどうでも良いので、スルーしつつ議題を提示してみた。


「よし、みんな揃ったし、早速チーム名考えようぜ?」


 びしっ、と指先まで伸ばして表護が言う。


「はいどうぞ」

「トイレ行ってきます」

「油断してた! 完全に油断してたよ今! まさか一日に同じネタを二回も使ってくるとは思ってなかった! しかし却下」

「こんなんどうや? 僕の加護神エロスから性欲、狩麻くんで破壊、鈴ちゃんで悪魔。合体させて『性欲の破壊魔』」

「変態じゃないか! その上なんか壊してるよ! もう手に終えないレベルの変態さんだよ!」


 そのチーム名は地雷すぎる。


 今度挙手したのは鈴。


「『黒い(ブラックルシフェル)』!」

「名前の由来が純度百パーセントで鈴なので却下」


 この班中二病しかいねえな……。


 むぅ、とうなりながら頬を膨らませる鈴。子供みたいだな、と思いつつ、自分の意見も述べてみた。


「こんなのはどうだ? 『灼銀の巨人』」

「「却下」」


 なんで? いいと思うんだけどな…。


 じゃあ、と仕切りなおして、表護と鈴を交互に見る。


「『破壊魔の愛』」もちろん表護。

「「却下」」


「『灼銀の黒』」鈴。

「パクった! しかも全く何色か見当がつかない!」


「『悪魔の愛を破壊する者達』」表護。

「悪魔に殺されるわ!」


「『黒』」鈴。

「絶対ボケるの面倒くなったろ。一文字だけじゃん! もはや何のチームか分からないよ!」


「『神魔狩り』」鈴

「みんなその候補やで、鈴ちゃん?」

「おぉ、表護が正論を言ってる!」


「『諸刃の剣』」俺。

「それ僕入ってないやん。狩麻くんと鈴ちゃんだけやん」


「『神魔の剣』」鈴。

「それ僕入ってないやん。以下同文!」


「決まらないな。全然。二人とも、自分がなにかしら班名の由来になってたらそれでいいんだろ?」


 鈴と表護が頷いたのを確認し、新しい案を出してみる。


「じゃあ、二人とも、自分の特徴を一言で言い表してくれ」

「赤」


 自分の髪の毛の赤い部分をつまみながら表護。


「翼」

 自分の背中を指しながら、鈴。


「破壊」

 俺の事だ。破壊神の神をとっただけだ。


「よし、じゃあ、これを組み合わせるんだ」

「あぁ、なるほど、こうやったら、みんなの分の特徴も入って良い感じやな、確かに」


 ポン、と手を打ちながら表護が言い、その後考え始める。


 二人が考え込んだので、さっき思いついた班の名を言ってみた。


「いいなぁ、それ。それにしよーや」

「それいいわね。あたしもそれがいいわ」


 おぉ、我が班の名前がやっと決まった。


 で、肝心のチーム名だが、


赤の破壊翼レッドデストラクションウインド


 になった。…仰々しい名前だけど、結構いい感じだと思うんだ。なによりかっこいい。


 …廚二病とか言った奴出て来い。漫画の登場人物はなぁ、そういうの乗り越えて強くなるんだよ。




 知識を詰め込む一ヶ月間の授業期間は、長くなりそうだな、と密かに思った。


 次の日から、一週間、何事も無く授業を受けた。


 しかし。


 入学から九日目、事件(?)は起きた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ