七時間目:表護の部屋にて
その時、意外な所から、救いの手が差し伸べられた。小村先生だ。
「はぁい、これでぇ、時間切りますねぇ? 班名が決まった所はぁ、言いに来て下さぁい。決まってない所はぁ、明日の朝までに考えといてくださいねぇ? 一斑二班みたいな名前は味気ないですからねぇ」
俺達は、チーム名が決まっていないので、言いにいかない。表護が自分の席に戻り、俺も前を向いた。
今日は、そのまま微妙な空気の中で、六時限しっかり授業を受けた。
…あぁ、そうだ、さっき知ったけど隣にももう一クラスあって、俺達が一組、隣が二組らしい。
☆ ★
「そう言えば、表護って、関西圏の出身なのか?」
場所は表護の部屋、チーム名を決める為に三人で集まろう、って事で、表護の部屋に来たのだが、鈴が
来ない。
で、場を持たせる為の行動が、さっきの質問なわけだ。
「あぁ、この喋り方やろ? これな、正直言ってさっぱり何弁なんか分からん。確かに、出身は関西やけど。生まれも育ちも関西で、正真正銘、根っからの関西人や」
「へぇ、そうなのか。」
そう、初対面から、ずっと思っていたのが、この疑問だった。だって気になるじゃん、こんなあからさ
まに変な喋り方の奴が居たら。
「僕からも、質問して良い?」
「おぉ、いいぜ」
「昼間も言ったけど、ぶっちゃけ、この特殊科の女子、みんな可愛いない? 例えば、鈴ちゃんとか涼風ちゃんとか」
「誰だ? その涼風ちゃんって」
「ほら、長めでさらっさらの黒髪の耳の上に青い星の髪飾りつけてて、一重の涼しげな目しとって、いかにも大和撫子っぽい感じの娘、おったやろ?」
「知らねぇ」
でも、教室にいた気はする。
「えぇっ? 知らんの? 狩麻くん、女子の自己紹介聞いて無かったん?」
「あぁ、自分の自己紹介考えてたら、気づいたら他の人のが終わってた」
「もったいな! 僕なんか、クラスの女子みんなの名前と顔、もう一致するんやで? すごない?」
全然凄くない。誇らしげに胸張るな。むしろ変態に生まれた事を嘆け。前屈みで生きろ。
「じゃあ、お前、班に分かれたとき、鈴の事もう知ってたのか?」
「知ってたよ? 狩麻くんももう知ってるものやと思とったねんけど? それで、鈴ちゃんにすっかり騙されとった僕は、狩麻くんに、どっちが話しかけるか、って意味でアイコンタクトや」
「なんだ、俺は、名前をどっちが聞くかって意味かと思った」
そんなやり取りをしてたら、鈴が、表護の部屋に来た。
「えーっと、こんばんは?」
「なんで疑問系?」
「うーん? なんとなく」




