六時間目:いや、わからんから
「……あげく、親にまで見捨てられたわ。あたしは、研究所みたいなところに売られた」
その美貌に浮かぶ笑みが、自嘲か、それとも、無理に笑っているのか。俺には判断できなかった。
「あたしには、友達どころか頼れる人も、親も居ないわ。だから、あたしは人見知りなんてものじゃない。対人恐怖症よ」
予想以上に重い話が来てしまった。どうしよう、これ空気重くね?
ていうか、そんなことより、俺は、鈴の周りの人間に今、俺は怒りを覚えた。
だが、過去は変えられない。だったら、変えられるのは、今だ! 俺が友達一号になってやる!
「鈴、俺が居る。俺が友達になってやるよ。俺はお前を化け物なんて思わない。俺も、充分化け物だからな。だから、誰にもお前の事を化け物なんて呼ばせない。もし呼んだら俺がぶん殴る。俺と、友達になってくれないか、鈴?」
呆気に取られたような顔をしている鈴と、ニヤニヤしてる表護。でも、一度言った事は取り消せない。
意を決したように、鈴は両手を顔の前に持ってくると、手を合わせて、頭を下げた。
「狩麻ごめん! この話全部嘘!」
ふうん。嘘だったのか……は? はぁ?
「えっ? えと、何が?」
「だから、さっきの話! あれね、嘘。ごめん!」
「え? は? 何で嘘?」
思考がよくまわらない。落ち着け俺。とりあえず深呼吸。す~、は~、す~、は~。
「さっきの話で同情を見せたら同じチームの奴等を下僕にしようと考えてたの」
ふぅ、深呼吸のおかげか落ち着いた。
「で、なんでばらしたんだ?」
そう黙っとけば絶対気付かなかった。それくらい、鈴の演技は完璧だった。ていうかそんなの初対面で
気付くか。
「いや、あのね? 狩麻があそこまで言ってくれて、嬉しかったんだ。それで、騙してるのが悪い気がしちゃって……」
それでか。
「……それに、かっこよかったし、凄く……」
「ん?」
よく聞こえなかった。聞き返してみる。
「何て言ったんだ? はっきり聞き取れなかったから、もう一回言ってくれ」
「……かっこよかったって言ってんの!(真っ赤)」
「おぉ、そうか(耳まで真っ赤)」
「痛! 忘れられてた思ってたら、でこピンて。三メートルくらい吹っ飛んだで?(血で顔が真っ赤)」
それは、表護が俺と鈴のことをニヤニヤニヤニヤニヤニヤ見てたからだろ。後自分の攻撃が無茶苦茶な威力の事を忘れてたごめん。
「……(顔が真っ赤)」鈴。
「……(耳も真っ赤)」俺。
「……(血で真っ赤)」表護。
誰か、この気まずい空気入れ換えて! 助けて! ヘルプアス!




