五時間目:彫刻の笑顔
「狩麻くん? どないしたん?」
はっ! そうだ、また見とれてた!
「何か用?」
俺が固まってたら、白髪悪魔女子もとい鈴が声をかけてきた。
「あぁ、チーム名、どうしようか思って。……表護ちょっと来い」
聞き耳を立てている表護を呼び寄せる。
そして、もう一度聞く。
「で、チーム名、どうする?」
二人を交互に見る。と、表護がびっ、と手を挙げる
「はい、表護。先に言おう、トイレ、は無しだからな?」
すごすごと手を下ろす表護。で、一瞬空けた後、もう一度、びっ、と手を挙げる。
「はい、表護。先に言おう、トイレ、は無しだからな?」
「一言一句違えず全くさっきとおんなじこと言ってるで、狩麻くん?」
それはともかく、と、ジェスチャーつきで、表護。
「まず、僕達の能力言えへん? 気になるやんか、やっぱり。……まずは、言い出しっぺの僕から言わなあかんでな、やっぱり」
確かに表護と鈴の能力は気になるな。
ゴホン、と喉の調子はいいのでさっさと言え表護。
「え~、ワタクシ、佐々木表護のフォースは、愛神の加護を受けた、対象を自分に自由に惚れさせる能力や。…でもな、惚れさせてられる時間は一日で、逆に言えば、その期間中は絶対に、能力解けへんねん。不便やろ? この能力。戦闘に向かんし。次、狩麻くんな」
フォース、っていうのは、俺たちの加護のことらしい。
なんで表護がこんなことを知ってるのかは知らんが。
小村先生がそんなことを言っていただろうか?
で、こっちに振るな。でも、どっちにしろ紹介はしなければならないので、口を開き、自分の能力を説明する。
次、鈴、と話を振ってみる。
「…大悪魔の加護を受け、防御力の一切を魔力に変換する遠距離攻撃魔法を、使える能力」
「あれ? 防御力一切なくなるて、今流行りなん?」
「なわけないだろ。……どうする? このチーム、防御を極限まで捨ててるんだけど?」
「……そうね、狩麻とあたしの能力、近距離と遠距離攻撃の超攻撃特化型と、被ってるわね」
「もしなにかと戦うことになったら表護が敵を引きつけて俺と鈴が無茶苦茶な破壊力で殲滅する、かな、戦い方は」
「うん、僕もそれでええと思うよ」
「あれ? 自分に被害が行くかもしれないのに拒否しないんだな」
「僕は自分の能力発動しとけば絶対攻撃喰らえへんからね」
「ところでさ、鈴って人見知りなのか? さっきから思ってたんだけど」
言いたいことはあったが、機動を元に戻そうと無理やり話題を逸らす。……アレ? なんか違う方向に転がりだしたぞ?
「………………」
「うわ! 凄い事聞きよった!」
「ごめん、変なこと聞いた! 悪気は無かったんだ! なんかテンパって」
鈴は、伏せていた顔を上げると、口を開く。
ここで罵倒されても文句を言えないので俺は身構える。
「……あたし、背中に羽、ついてるでしょ? この能力が目覚めた時から、ずっと、化け物を見るような目で見られたわ」
そこで言葉を切ると、鈴は、無機質な機械みたいな笑顔を作る。
……その顔は、彫刻みたいに美しく、それでいて彫刻のような無機質な美しさを兼ね備えていて――――少し怖かった。




