三時間目:しいたけって非常食なんだろうか
「なんでしいたけ!」
小村先生は、探していた物が見つかったのか、鞄に出した物を入れながら、言う。
「非常食でぇす」
そう来たか!
「絶対違う! 生じゃ食べられないから!」
そもそも、何でしいたけ一個だけ何にも包装されずに入っているんだろう。
「もちろん加熱済みでぇす」
「調理してあるならなおさら包装しましょうよ! 小村先生!」
「それはぁ、鞄の中が綺麗なのでぇ、大丈夫ですぅ。食べますかぁ?」
「いりませんし、鞄の中がむしろしいたけで汚れるんですけど! そもそも、何故しいたけ!」
「いいじゃないですかぁ、しいたけ。美味しいですよぉ?」
「じゃあ干ししいたけ持って来ましょうよ! そもそも非常食なんでしょう!」
「それならぁ、今度干ししいたけ持ってきてあげますねぇ。君の為にぃ」
駄目だ、話が通じねぇ…。
ていうか、何故女性の鞄の中にしいたけ(調理済み)が入ってるの? しかも何故か包装なしで一個!
え、何? 俺が知らないだけで世の中の女性は皆そうなの? しいたけインザバッグ?
言葉の応酬の合間にも手を動かし続けた小村先生は、とある紙切れを残して全ての内容物を元の鞄に入
れた。
「それではぁ、今から班分けを行いますぅ。この班分けはぁ、実習の間ずっと行動を共にしますのでぇ、大事ですがぁ、皆お互いの事を、よく分かってないと思いますのでぇ」
小村先生は一度勿体つけるように言葉を切り、じゃじゃーん、と声に出した擬音つきで、右手に持った紙切れの束を持ち上げる。
「クジで決めたいと思いまぁす。ちなみに、一チームはぁ、三人になりますぅ。このクラスは三三人なのでぇ、ぴったり十一組に割り切れますねぇ?」
といって、小村先生はクジを鞄から出した箱(どうやって出したのかはもう突っ込まない)に入れ、よく振ってから、グイッ、と突き出す。
「さぁ、取りに来てくださいよぉ? 順番はまぁ、また席順でいいですねぇ?」
俺は、一番最後になるのか。残り物には福があるって言うし、きっと、いい仲間と同じチームになれるだろう。神様も俺を見放さないはずだ、多分。
そんなことを考えている間にもう、俺の順番はまわって来た。
……一番か。なんかいい感じだな。
「みんなに回りましたねぇ? ではではぁ、一番から順番に行きますよぉ? ハイ、一番の人立ってくださぁい」
俺は一番だったので立ち上がり、教室の中で俺の他に立っている人間を探す。
…立っていたのは、昨日絶対関わらないと決めた白髪の悪魔女子と、長めの髪型で、右目の方に分けた髪を一房だけ赤に染めている人懐っこそうな印象の男子だった。
…俺は、神への怒りを〈神魔狩り〉になるための動力にする。覚えとけ神。
でもまだ、白髪悪魔女子が悪い奴とは限らない。そうだ、ポジティブシンキングだ俺。




