一時間目:三つの世界
次の日、教室に行くと、既にほぼ全員集まっていた。
皆早いな~、と思いつつ、昨日と同じ席に座る。俺は制服を着ているが、例の如く全員私服だった。
まだ眠気が残ってぼんやりとしている頭でそんな事を考えつつ眠気を噛み殺していると、ドアを開けて小村先生が入ってきた。
「はいはい~、LHRを始めますよぉ?」
昨日と同じカジュアルスーツの小村先生は、教室に入るなり言った。
「え~、自己紹介は昨日したのでぇ、今日は君達が疑問に思っているであろう、何故能力者なんかを育成するかについて話しちゃいますねぇ?」
……いや、全然疑問に思ってなかったのだけど。そう思い教室を見回すと、皆一様に頷いていた。……え? 疑問に思ってなかったの俺だけなの?
「異世界からこの世界を乗っ取ろうと侵攻してくる神に悪魔に伝説上の生物からぁ、この世界を守る救世主になってもらう為の戦士を育てる事がぁ、当志義野学園特殊科の役割なのですぅ。ちなみにぃ、異世界にも色々あってぇ、その全てに名前があるんですがぁ、全部上げるとキリが無いのでぇ、代表的なものを三つだけ言いますねぇ?」
と言って、小村先生はグーにした手を突き出した。
「ひとーつ。神々の住まう世界、神界」
人差し指を立て、二つ目を言う。
「ふたーつ。悪魔の巣食う世界、魔界」
中指を立て、丁度ピースサインみたいにして三つ目を言う。
「みーっつ。伝説上の生物が闊歩する世界、幻界」
三本立てた指を開閉しながら、小村先生はさらに、と繋げる。
「この異世界はぁ、この世界と重なり合うように存在していてぇ、本来は皆さんの周りにも何千何万もの世界が広がっているんですがぁ、見えませんしぃ、干渉する事もできません~。が、この何者にも支配されていない世界、〈物理界〉に神々が最初に気付きぃ、支配しようと手を出してきたのがつい二十三年前ですねぇ」
小村先生は、更に更にぃ、と続ける。
「悪魔達も神々同様この世界の有用性に気付いちゃってぇ、神々と手を組んでこの世界の侵略を試みているようですねぇ。ちなみにぃ、この世界の有用性と言うのはですねぇ、何とこの世界、魔法的な力を使える者のいない唯一の世界なのですよぉ」
小村先生は、つ・ま・り、と一本だけ立てた指を横に振った。
「この世界に来る事ができたらぁ、世界そのものを手中に収める事ができるということなのですよぉ」
なるほど、俺でも言いたいことが分かったぜ。
「外国と日本の戦争を例に説明しますとぉ、外国は核兵器や次世代型兵器をたくさん持っているのに対しぃ、日本は丸腰、素手で核兵器を相手にするようなものなのですよぉ。つまり神や悪魔の力はぁ、外国における核兵器に対しぃ、君達はぁ、その日本に置ける切り札、それも一発逆転を狙える秘密兵器だと言うことでぇす」
お分かりですかぁ? と最後に付け足し、小村先生は、教室中を見回し。
「何か他に質問はないですかぁ?」
聞いた。




