十時間目:寮食堂
他に何か無いかと、ベッドがあった部屋を見に行く。おぉ、学習机がある! 前住んでた家では食卓兼学習机だったからな。
ちなみに、さっきリビングを見た時、綺麗な木の机が置いてあるのも確認している。すげぇ、家に二つも机がある! 落ち着け、落ち着け俺。今日はどうかしている。
時計(枕元にあった)を見る。そろそろ食堂が開く時間だな。
部屋の入り口の所にあるスキャナに生徒手帳をかざす。残金を確認しようと思っただけだが、表示された金額を見て、目を見張った。
残金が、十万円もある。一瞬、遺産も入っているのかと思ったが、美杉は全てを捨てて、と言っていたから、これは全て前金として振り込まれたお金なのだろう。
部屋のドアにも生徒手帳をかざし、開錠する。入るのも出るのも生徒手帳が必要なら、無くせないな。無くしたら大変な事になりそうだ。いや、なるな、必ず。
廊下に出ると、自動でドアが施錠される。出る時にも生徒手帳が必要なのは、締め出されないようにする意味合いもあるのだろう、多分。
とにかく飯だ。寮食堂に向かおう。
☆ ★
券売機に生徒手帳をかざし日替わりランチの食券を買う。
それをカウンターごしに渡す。
厨房にいて俺の食券を受け取ったのは、中学生にしか見えない幼い見た目、茶色いふわふわのロングヘア。割烹着を着て、頭には白い帽子。いつも眠たそうな双眸。間延びした喋り方は、
「小村先生じゃないか!」
そう、どこからどうみても小村先生だった。
「そうですぅ。人材不足なのでぇす。小村寮監改め、小村シェフでぇす☆」
この人は本当に、何やってるんだろう。あとウィンクするな。なまじ見た目が綺麗なだけに、無駄にドキドキする。
「日替わりランチですねぇ?」
厨房の奥に向かって繰り返す。日替わりランチ入りまぁす! その後、厨房の奥に入り日替わりランチ
を持って出てくる。
おい、自分で作るんならなんで奥に復唱した。
「はぁい、日替わりランチでぇす」
小村先生から日替わりランチを受け取り、空いている席を探す。というか、ほぼ空席だった。浮かれす
ぎて、どうやら早くに来すぎたみたいだ。まぁ、まだ食堂が開いてから二分しか経ってないからな。
食堂の席は、四人がけの席と、二人がけの席があり、更に、四人がけの席が二つくっついて八人がけに
なっている席がある。大体、四〇人くらいは座ることが出来そうだ。
壁際の二人がけの席に座り、手を合わせる。
「いただきます」
食べ物と作ってくれた人に感謝する。基本だな。
本日の日替わりランチ、メニューは豚のしょうが焼きに、キャベツの千切りと味噌汁、白飯がついてい
る。味噌汁の具は、筍だな。軟らかくて美味い。
そんな事を考えているうちに食べ終える。
「ご馳走様でした」
ちゃんと手を合わせて。食べ物と作ってくれた人以下略。
トレーにのっていたそれを、カウンターの返却エリアに返し、今日は部屋に帰ることにする。
結局、部屋に帰るまで廊下では誰とも会わなかった。




