一時間目:破かれた写真
パソコンの記憶領域を漁ってたら出てきたので、投稿してみました。
この容量だと、大体二章の終わりまでありますが三十五話位はもう書きあがってることになります。
しかしルビの振り方変更、改行などをしているとだいぶ時間がかかりそうです。
二週間前。卒業を控えた三月。俺は、同級生の不良どもからリンチをうけていた。
金貸せや的旧世代なカツアゲを突っぱねたら、校舎裏に拉致された。
そこで待っていたのは二十二人の不良共で、その後、リンチだ。
抵抗はしない。
抵抗してもこの数じゃあ勝目がないし。
俺が怪我をする分にはいいがこいつらに怪我をさせたら口裏を合わせて悪者にされるかもしれない。
それに今、俺は十五歳。もう、法で裁かれる年齢だ。
あ~、なんか語ったみたいになったけど、まず、俺っていうのは、琴香狩麻の事。余談だが、この名前は結構気に入っている。趣味は読書、特技は運動全般。
ちなみに、今こんなことを考えている間にも、俺は殴る蹴るの暴行を受けている。
しかし、こいつら無茶苦茶だな。二十数人で、一人を相手って。普通、数人ずつくらいで来るだろ。
ところで、俺が何でこんなに冷静でいられるかって言うとだ、喧嘩慣れしてるから、になるのかな、多分。冷めた性格をしてるからってんで余計に絡まれやすいんだ。
わかってんだけど治らないんだよね、これが。
さて、意識を現場に戻そうか。
今、俺は二人がかりで組み伏せられ、腕と脚を押さえつけられている。
目の前には、不良集団のリーダーがしゃがみこんで、俺の財布を覗き込んでいる。
「って、コラー! 呑気に描写してるんじゃなかった! 金! 返せ! どうすんの!俺の今月の食費!」
「知るか」
「返せー! 返あぐぁっ」
最後の方は、顔を蹴られたから、変な声が出た。
「親に養って貰えや。ハハハハハッ」
唇を噛む。こいつらは、俺に両親がいないことを分かっていて言っているのだ。ちなみに、五歳の時に父は飛行機事故で他界、二年前に母親が火事に巻き込まれて死んでしまった。更に、母にも父にも親兄妹がいないので、俺には身内どころか親戚も誰一人としていない。
故に俺はこの世界に興味を持つものがない。だから冷めてるのかもしれない。
今は、自分で稼いだわずかなお金(新聞配達)と、遺産を食い潰して生きつないでいる。
一枚だけ火事の炎に焼かれず生き残った家族写真――10年前に撮ったもの――が、我が家の家宝であり、俺にとって世界で唯一価値の見出せる物であった。
それが、
「おぉ、財布の中に写真見っけ。…何だコレは?」
そう、財布のなかに入れてあった。……ヤバ! 間違いなく破かれる! 破かれたら修復なんて出来ない。焼き増しもしてない。ネガももう残ってない。正真正銘世界で一枚だけの写真だ。
「ダッセぇ、こいつ、財布に家族写真入れてあるぜ?」
いいだろ、それが俺のこの世界の全てなんだよ。
「やめろ!」
リーダーの男は、ニヤリ、と酷薄そうな笑みを浮かべ、写真に手をかけた。
「やめろ! やめてくれ! 金なら全部やるから!」
「ほぅ、これがそんなに大事か、琴香?」
「あぁ、頼む!」
再度、そいつは酷薄な笑みを浮かべ、写真を、
破いた。