第三話 夕食会
でも今更、仕方ない。メイドに本音を言えと言っても、答えないだろう。だから私は一番、気に入っているピンクのドレスを着た。鏡台を見てみると可愛い女の子が、上半身はふっくらとゆとりがあり下半身は下にいくほど広がりふんわりとして床につくくらいの長さのピンクのドレスを着ていた。うん、これでいい。今回は、これでいこう。そう決心して私は、夕食会に向かった。
夕食会が行われる部屋は、城の中で一番広い部屋である大広間だった。この部屋も硬くて純白の石を積み上げてできていて、一〇〇人以上入ることができる。でも今、この部屋にいるのは私たち四人と八人の給仕人だけだった。私たちとは私、ユーミと国王であるお父様、王妃であるお母様。そして剣聖ナバウだ。
私たちは白いカバーをかけたテーブルに、向かい合って座った。私たち三人と、ナバウが。ナバウは鎧を脱ぎ、今は体にピッタリとした黒い服を着ていた。国王の挨拶で、夕食会は始まった。
「剣聖ナバウ様。今日は私たちを救っていただき、ありがとうございます。どうか我々に、おもてなしをさせていただきたい」
するとナバウは、頭を下げた。
「ありがとうございます、国王陛下。それでは今夜は、夕食会を楽しませていただきます」
国王は、満足そうに頷いた。
「うむ」
そして私たちの前に、料理が運ばれてきた。まずは、スープ。畑で採れるコーンという小さな黄色の粒をすりつぶして作られたもので、スプーンですくって飲んでみると上品な甘さがした。
次は、パン。やはり畑で栽培されるフラウアという植物から採れる白い粉から作られたもので、食べるとしっかりとして心地いい歯ごたえがあった。
そしてメインの、ステーキ。牧草地で飼われている茶色い動物、ビーフの肉を焼いたもので食べるとコクがある肉汁を感じられた。
最後は、デザート。やはりこれも畑で採れるカカオを加工したもので、立方体のケーキになっている。食べると、ほんのりとした甘さが口の中に広がった。私たちが全ての料理を食べ終わると、国王はナバウに聞いてみた。
「いかがでした、ナバウ様? 今夜の夕食は、お口に合いましたか?」
するとナバウは、冷静な表情で答えた。
「はい、国王陛下。どれも素晴らしく、美味しかったです」
それを聞いた国王は、満足そうに頷いた。
「うむ。それは良かったです」
私は、考えた。チャンスは今しかない。ナバウも含めて、皆が夕食に満足していて満たされている。今なら多少、無理な提案をしても受け入れられるだろう。ちょっと悔しいが、私はナバウに対してまずは下手に出ることにした。私は立ち上がり、頭を下げた。
「私は王女の、ユーミと申します。私からも、お礼を言わせてください。今日は私たちを救っていただき、本当にありがとうございます」
するとナバウはやはり、冷静に答えた。
「いえいえ。私はこの国の剣士として、当然のことをしたまでです」
私は、ナバウの顔を見つめてみた。そう言えば、聞いたことがある。剣聖ナバウは、イケメンだと。確かに目は切れ長で美しく、黒髪を真ん中から分けていてそれは頬にかかっている。イスに座る前に見てみたが、脚も長くスタイルも良い。なるほど、中々のイケメンだ。でも彼からは、誠実さと優しさも感じた。そして私は、切り出した。
「ナバウ様。一つ、お願いがあるんですが?」
「はい。何でしょうか?」
「私を、ナバウ様の弟子にしていただきたいんです。ナバウ様から、剣術を教わりたいんです」
するとナバウはポカンとした表情になり、何も答えなかった。その代わりに、お父様が答えた。
「はっはっはっはっ。何を言ってるんだ、ユーミ? ほら、ナバウ様も困っているではないか」
でも私は、本気だった。私は国王に向かって、告げた。
「いえ、お父様。私は本気ですわ」
「何?」
私は、真剣に答えた。
「私は来年、二〇歳になって成人して女王になります。でもこの国を護るためには、力も必要だと思います。今日、私たちはブラック・ドラゴンに襲われました。でも城の国防兵士たちも、倒せませんでした。倒したのはご存じの通り、剣聖ナバウ様です。そして私は考えました。この国を護るには、剣聖ナバウ様くらいの力が必要だと」
すると国王も、真剣な表情になって唸った。
「う、ううむ……」
そして私はもう一度、ナバウに切り出した。
「どうでしょうか、ナバウ様。私は女王になった時、この国を護る力が欲しいのです。だから私を、弟子にしてくれませんか?」
それを聞いたナバウは、即答した。
「申し訳ありません、ユーミ王女。私は、弟子を取らない主義なのです」
なるほど、そうきたか。なので私は、とっておきの切り札を出した。
「なるほど、そうですか。もし私が、ナバウ様を死刑にするとしても?」
するとナバウは再び、ポカンとした表情になった。
「え? し、死刑?……」




