第二話 ドレス選び
そして私は、更に考えた。それには、強さが必要だろう。剣聖ナバウ程の、強さが。もしこの国がモンスターに襲われて、その時にナバウがいない場合を考えた。例えば今回、ブラック・ドラゴンには城の国防兵士も適わなかった。だから国防兵士よりも強い、剣聖の力が必要だ。
そのためには、ちょっと悔しいがナバウの弟子になるのが良いだろう。そして、戦い方を教えてもらおう。私は、考えた。それには、ナバウと会って話をする必要がある。そのためには……。名案が浮かんだ私は、国王の間に向かった。
そこは硬くて純白の石を積み上げてできていて、奥には国王と王妃が座る真っ赤な玉座が置かれていた。私が奥に進んだ時には、ホッとした表情の城の大臣たちが国王の周りにいた。おそらく彼らも、知っているのだろう。城下町にブラック・ドラゴンが現れたが、剣聖ナバウに倒されたことを。
私は、目は優し気で金色の髪を首まで伸ばし顎髭も伸ばし、赤い冠を被り白い衣装を着ている国王に聞いてみた。
「ちょっとよろしいでしょうか、お父様?」
私は国王であるお父様と、王妃であるお母さまには敬語を使っていた。そしてなるべくこの二人には、わがままを言わないようにしてきた。二人には、私は良い子だと思わせるためだ。そして二人がそう思ってくれれば、私が城にいる者たちにわがままをしても許される。二人が私に甘く、味方になってくれるからだ。それくらい私も、考えていた。少しすると国王も、ホッとした表情で答えた。
「うん? 何だい、ユーミ?」
「お父様も、知っていらっしゃるんですね。ブラック・ドラゴンのことを」
「ああ、知っている。剣聖ナバウが現れなかったら、この城も危なかった」
そして私は、提案してみた。
「それで、お父様。ぜひ剣聖ナバウ様をこの城にお呼びして、お礼の夕食会を開くというのはどうでしょうか?」
すると国王は、微笑んで頷いた。
「うむうむ。ユーミも、同じことを考えていたか。実は私も、同じことを考えていた。だからすでに城の使いに、ナバウ様を夕食会に誘うように命じたところだ」
なるほふど。やはりお父様も、同じことを考えていたか。それならば、話は早い。私はお父様に、頭を下げた。
「それでは、その夕食会を私も楽しみにしています」
そして私は、王の隣の玉座に座っている王妃を見た。王妃も優しい目をしていて金色の髪を肩まで伸ばして、そしてやはり白い衣装を着ていた。王妃は私に、話しかけてきた。
「あなたも無事だったようですね、ユーミ」
私は、頭を下げた。
「はい、お母さま」
「それでは、夕食会に出席する準備をするといいわ」
「はい、分かりました」
そうして私は、自分の部屋に戻った。その時、部屋の前で待機している黒い衣装を着たメイドの二人を部屋の中に入れた。私は一人が気楽なので、いつもは自分の部屋にメイドは入れなかった。でも必要がある時に呼ぶために、部屋の前に待機させていた。そして今は、メイドにも協力してもらわなければならない。なぜなら夕食会に着ていくドレスを、選ぶためだ。
私はクローゼットに入っている、全てのドレスを取り出した。そして一番似合うドレスを着て、夕食会に参加する。ちょっと悔しいが、剣聖ナバウに良い印象を持ってもらわなければならない。私はまず、黒いドレスを着てメイドに聞いた。
「どう? このドレス似合う?」
すると二人のメイドは、そろって答えた。
「「はい。大変、似合っておられます」」
次に私は、白いドレスを着て聞いてみた。
「どう? このドレス似合う?」
「「はい。大変、似合っておられます」」
そして次に私は、黄色のドレスを着て聞いてみた。
「どう? このドレス似合う?」
「「はい。大変、似合っておられます」」
私は思わず、メイドに怒鳴った。
「もう! さっきから答えが一緒じゃない?!」
すると一人のメイドが、びくびくした表情で答えた。
「で、でもユーミ様。どのドレスも、大変お似合いですので……」
そしてもう一人のメイドも、激しく頷いた。
私は思わず、ため息をついた。はあ、こうなるのか。私は今まで散々、私に反対意見を言うメイドをクビにしてきた。だからそれから私のメイドになった者は、何でも私に従うようになった。でも今回は、それが裏目に出た。私はどのドレスが似合うのか、本音を聞きたいのに……。




