第一話 決心
私、ユーミはわがままだ。だがそれは、仕方が無いことだ。私はこのヨヅン国の、王女だからだ。ここヨヅン国は、人間と魔族とモンスターが混在する、この惑星シュカにある国の一つだ。そして私は国王ニタカと王妃コーミの一人娘だ。
この国で王になるには、性別は関係ない。一番最初に生まれた子供が、王になる。一番最初に生まれたのが男の子なら、王になる。女の子なら、女王になる。そしてこのヨヅン国を、統治する。
私は一人娘だから当然、一番最初に生まれた子供だ。今は一九歳だが来年、二〇歳になると成人して王位を継ぐ。つまり、女王になる。まあ最初の数年間は元国王である、お父様からアドバイスを聞くことになるだろうが。だから私は、子供の頃からわがままだった。それは、朝食の時から始まる。
「このスープ、味がちょっと濃いですわ。作り直し」
「このパン、ちょっと硬いですわ。作り直し」
「このジュース、気に入りませんわ。他のジュースにして」
そうして周りの人々は朝から、私のわがままに振り回される。私がわがままなのは、もう一つ理由がある。それは私が、可愛いからだ。目はパッチリとしていて、整った形をしている。金色のストレートの髪は、背中まで伸びている。脚も細くて、もちろんスタイルだって良い。可愛いと貴族の男たちから、チヤホヤされるからだ。
そして本当は女王になるために、勉強もしなければならない。でも私は勉強が嫌いだったので、いつも私の部屋にくる先生を追い返していた。
そうして今日もわがまま放題していた、日差しも暖かい四の月のある日の午後。私は城の中にある、自分の部屋で退屈していた。ここには大きなベットと自分の可愛さを確認するための鏡台と、お気に入りのドレスがたくさん入った大きなクローゼットがあった。
なので大きな窓を開けて、城下町を眺めてみることにした。すると、市民の様子がおかしい。何やら、逃げ回っているようだ。どうしたのかしらと眺めていると、黒いウロコに覆われた巨大なドラゴンが見えた。耳をすましてみると、市民の悲鳴が聞こえた。
「な、何でこんなところにブラック・ドラゴンが?!」
「と、とにかく逃げるのよ! 皆、逃げてー!」
ま、まさかあれはブラック・ドラゴン?! モンスターの中でも最強クラスと言われる、ブラック・ドラゴン?! すさまじい攻撃力を持つブラック・ドラゴンは一体で、一つの国を滅ぼすことができると言われていて人間から恐れられている。
そして今、この国を滅ぼそうかとするかのように、ブラック・ドラゴンは暴れている。大きく太いシッポを振り回し、レンガ造りの建物を破壊。爪と牙で、黒い鎧を着た国防兵士たちを攻撃。そして岩をも溶かすと言われる灼熱のブレスで、城の一部を攻撃していた。たった一体のブラック・ドラゴンにより、この国は滅ぼされようとしていた。
こ、これはマズイですわ! でも何の力も無い私には、どうすることもできなかった。ただ見ていることしか、できなかった。するとブラック・ドラゴンの前に、銀色に輝く鎧を着た一人の人間が立ちふさがった。そして市民の歓声が聞こえた。
「け、剣聖ナバウ様だ!」
「ほ、本当! 剣聖ナバウ様だわ!」
剣聖ナバウ。その名前は、私も聞いたことがある。すさまじい強さを持ちながら、いつも人々を救うために戦う。だからナバウはこの国で唯一、剣聖と呼ばれている。そしてそのナバウは今、ブラック・ドラゴンと戦い始めた。
ナバウはまず、左手に持っている銀色に輝く大きな盾で灼熱のブレスを防いだ。そして牙と爪の攻撃も盾で防いだ。するとブラック・ドラゴンは後ろを向いて、大きく太いシッポを振り回した。だがナバウは、素早くジャンプしてそれをかわした。
全ての攻撃が効かず、ブラック・ドラゴンはうろたえたように立ちすくんだ。するとナバウはブラック・ドラゴンの首の高さまでジャンプして、銀色に輝く剣を左から右に薙ぎ払った。次の瞬間、ブラック・ドラゴンの頭部が地面に転がり落ちた。そしてその大きな本体も、地面に崩れ落ちた。
私は思わず、呆然とした。モンスターの中でも最強クラスと言われる、あのブラック・ドラゴンをあっさりと倒すなんて……。すると戦いを見ていた市民たちは、歓声を上げた。
「ありがとう! 剣聖ナバウ様!」
「さすが、剣聖ナバウ様だわ!」
そしてナバウの周りに市民が次々と集まり、大きな輪になった。そして歓声を、上げ続けた。それを見ていた私は、冷静に考えた。ふーん。これでまたナバウは、有名になるでしょう。そしてこのヨヅン国の、伝説になるでしょう。しかし私の心は、ざわついていた。ナバウの行動を見て。
ナバウは城下町を襲った、ブラック・ドラゴンを倒した。でも別に、倒さなくても良かったんじゃないだろうか? モンスターの中でも最強クラスと言われるブラック・ドラゴンと戦うことは、いかに剣聖と呼ばれるナバウにもリスクはあったんじゃないだろうか? 戦えば負ける可能性も、あったんじゃないだろうか? それでもナバウは、戦った。そして、勝った。そして城下町に住む、市民を救った。
ハッキリ言って、その行動に私は感動していた。私は来年、女王になる。でもきっと今のままでは、わがままな女王になるだろう。そして、国民を苦しめる女王になるかもしれない。それでいいのかなと少し悩む時もあったが、あまり考えないようにしてきた。まあ、なるようになるだろうと考えていた。
でも今、どんな女王を目指すべきかハッキリした。それは城下町に住む市民を、いやこのヨヅン国の国民全てを護ることだと。困っている国民全てを、救うことだと。




