私は劣等ではないけれど優秀なフリをしている妹に虐げられてます。
初めてファンタジーを書きます。出来はどんなもんなんだろう⋯
ルマナは田舎の中流貴族の娘で、知性と美貌を兼ね備えていた。そして父からはたっぷりと愛を注いでもらっていた。
しかし、母は違った。ルマナが生まれた2年後に生まれた妹、アルヴの方を愛し、ルマナに冷たく接するようになった。父が母を咎めたこともあったが、
「私の可愛い可愛い大事なアルヴちゃんはまだルマナよりも幼くか弱いのですよ。それなのにどうしてアルヴちゃんを愛してはいけないのですか?ルマナはしっかりしているでしょうに」の一点張り。父はほとほと困り果てたが、ルマナをより大切にするようになった。
しかし、時が流れ、ルマナが17になったとき、父は急病で倒れ、回復魔法をかけたにも関わらず帰らぬ人となった。ルマナはたいそう悲しんだが、母とアルヴはどうとも思わないようで、自分たちに異論を唱える父がいなくなり、むしろ自由にできると考えていた。そのせいでルマナは段々とメイドと同じように使われるようになっていった。使用人やメイドたちは哀れに思っていたが、実権を握った母の圧がすごく、どうとも声をかけられなくなっていった。見るに耐えなくなり辞める人もいた。
やがて母は数人のメイドと使用人を新しい働き口に就職させ、薪割りなど余った仕事を魔法一切使用禁止でルマナにやらせた。そのせいで自由な時間は削られていき、勉強や習事がしたくてもできなかった。ルマナが与えられた仕事をこなせなければ、アルヴの前で母から罵倒された。母はルマナがやっていた習事にかけていたお金をアルヴのために使い、アルヴはどんどんと我儘で傲慢になっていった。
そして毎日「アルヴはね〜、こんなことができるのよ〜、あんなこともできるのよ〜、なのに姉さまったらなんでアタシができること全部出来ないのかしら〜、オカシイわね〜?キャハハ〜!」と自慢をされた。
またある日は「アタシはね〜、将来公爵様とかの高位の人と恋に落ちて〜、バラとかのキレイな花いーっぱいの教会で真っ白な豪華なドレスを着て結婚して〜、みんなや神様から祝福されて〜、幸せになるの〜!でも〜、アルヴは顔がすごい綺麗で美女(自称)だから〜、王様に一目惚れされちゃうかも〜?でも姉さまは無理よね〜!汚いことしかやってなくって〜、毎日ボロを着てて〜。結婚なんてできないし〜、幸せなんて見つからないでしょうね〜。結婚相手がいても〜、借金だらけのブサイクだとかブスな男じゃないのかしら〜?キャハハ〜!」とも言われた。
そんなルマナの理解者はルマナのばあやだけだった。毎日隙さえあればばあやに泣きついていた。
そして毎日ルマナは神に祈った。早く私を救ってくださる方をこちらによこしてください、と。
そんなある日、ルマナが薪割りをしようとしたとき、小さな黒い物体を見つけた。よく見ると生き物のようだ。近づいてもびくともしない。トカゲかヤモリか?しかし小さな翼がある。―ドラゴンだ。
しかしここまで小さいドラゴンは聞いたことがない。動かないのは気絶しているのだろうか。ミニドラゴンが目を開けて逃げようとしたが倒れてしまった。とりあえずこっそり魔法でミルクを飲ませた。「元気になるまでここにいていいのよ。でもバレてはいけないからじっとしていてね。」ルマナはミニドラゴンを馬舎の藁に隠し、隠密魔法をかけた。ルマナは優しかった。
翌日、ルマナは母に呼ばれた。「数人メイドを新しい働き口に案内したから、あなたは今日から馬舎の掃除もやりなさい。もちろん魔法禁止よ」ルマナはまた仕事が増えるのかと思ったが、ミニドラゴンのことを考え、「⋯承知いたしました」と答えた。母は意地悪く微笑んだ。
それから毎日ルマナは他の仕事をせっせと終わらせ、馬舎の掃除をしに行った。ミニドラゴンのことが気が気でなかったのだ。たまに意地悪でアルヴが泥をかけてくることもあったが、気に留めなかった。
数週間経ったある日、ルマナは真夜中になぜか目が冴え表に出た。皆は寝静まり、満月が煌々と夜の闇を照らしていた。ルマナはミニドラゴンのことが気になり、馬舎に行こうとした。
しかし足を止めた。大きな大きな影があったからだ。「ほ、本物⋯の⋯ドラ⋯ゴン⋯」ドラゴンはゆっくりとこちらを向いた。その鱗は神々しいほど黒かった。『命の恩人⋯起きたんだ。あのとき救ってくれてありがとう』このドラゴンはルマナが拾ったミニドラゴンの真の姿だったのだ。『あのとき僕は魔力切れを起こして小さくなって墜落して気絶していたんだ。あのときどうなることかと思ったよ』ドラゴンの声が脳内に響く。ドラゴンの声は見た目によらず優しい、青年のような声だった。
『僕の名前はクツァルニ。僕は恩返しを君にしたい。ルマナ⋯君はこの家ではひどい扱いを受けているね。僕は帰らなければ行けないのだけど⋯君はどうしたい?生まれ育ったここに残るかい?それとも⋯僕と来るかい?』「私は⋯もっと、その、勉強?したい。様々なことを知りたい。あとは、お父さんの供養を、ちゃんとしたい。私の願いは⋯それだけ」『そうか⋯』クツァルニは少し考えたようだった。『それなら僕と来る方が良さそうだね。君の家族はあと三時間すれば起きるだろうね。それまでに荷物をまとめられるかい?』「ええ、私の所有物は少ないもの」『それじゃあ、僕は見られても困るし小さくなってここにいるよ』
ルマナは急いで、しかし忍び足で自室に入り、衣服や本などをまとめ、リビングに行き倒されていた父の肖像画を回収し、紙にばあやへの書き置きを書きばあやの部屋にこっそり置き、クツァルニの元に戻った。
『心残りはない?』「ちょっと待って」と言うとルマナは墓地にかけていった。父の墓に最後に行きたかったからだ。そこに生えていた野花で即席の花束を作り、その花束を供え、手を組み、父の墓の前で冥福を祈る。ルマナは本当によく頑張っているな、という父の優しい声がした気がした。
墓地からクツァルニのところに戻る。クツァルニが元の姿へと戻り、尾をルマナのところへと垂らす。『乗って』ルマナは素直にそれに従い、背中に収まった。
クツァルニが翼を広げ、地面を勢いよく蹴り舞い上がった。ルマナは素朴な疑問を口にした。「で、どこに行くの?」『望まないなら行かないけれど、ドラゴンたちの楽園が空の彼方にある。そこに行くんだ』「ねえ、図書館ある?」『トショカン?ああ、本なら多分沢山あるよ』「ならいいわ」クツァルニとルマナは空の彼方、ドラゴンの楽園へと飛び去っていった。
その朝、母とアルヴはというと。「何よ、姉さまがいなじゃない!」「ちょっと!ルマナ!出てきなさい!どうせ隠れているんでしょ!」「トンズラとか家出したのかしら!どうせ困って戻って来るわ、帰ってきたら許さない!アタシが滅多打ちにしてやるんだから!そしてアタシが公爵様とか王様と結婚するまでここにいさせて、私が幸せそうなのを教会の外にいさせて教会から出てきたところを見せつけてやるのに!」「そうよ!ルマナは生意気だわ!私の可愛い可愛い大事なアルヴちゃんが幸せになるところを見ようとしないなんて!」⋯と言う風に叫びながら家中大捜索し、さらには領内を領民に探し回らせたが大した成果はなかった。ただ父の墓の前に野花でできた花束が供えられているだけだった。ばあやは書き置きを秘密にし、大事にしまった。
ルマナがいなくなったことで母はメイドや使用人を新たに雇おうとしたが、ルマナを虐げていたことが広まり上手く人が集まらず、そればかりか今まで仕えていたメイドや使用人たちもやめていった。
やがてルマナに対する冷遇が王の耳に入り、母とアルヴは王宮に呼ばれた。アルヴは「きっと私の美貌の噂が届いたんだわ!」と言い気合を入れて化粧をしていた。
しかしアルヴや母が思っていたこととは違い、王からルマナを異常に虐げていたことは貴族としてふさわしくないと身分を剥奪された。アルヴは「えー!公爵様とかと結婚して幸せになれないじゃないー!」とぼやいていたが。このように人が集まらなかったり王から身分を剥奪されたことはルマナが余程賢く周囲への接し方が好意的に受け止められていたことを表していた。
その後ルマナを見た人はいなかったという。
ルマナみたいな賢い優しい人になりたい⋯!羨ましい⋯




