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7 知らない間に変わった世界

 料理もほぼほぼなくなり、食卓の話題は必然バーニー探しのことになる、そこで見たものをストラは口にした。



「そりゃあ、魔人族だよ……まいったねえ、この辺にも出てくるなんて」


「魔人族う? あんだあそりゃ」


「人間だったくせに知らないの? 人の頭を割って中身を吸い取る地獄の住人だよ。私も、見たのは初めてだけどさ」


「知らねえよ、少なくとも俺のいた時代……200年前にはそんなもん影も形も無かった」


「俺のじいさんのそのまたじいさんがガキの頃、神々の戦争ってのがあって、それから出るようになったらしい。まあ、地獄の住人ってのは子供向けのお話だ。奴らも普通に死ぬ。だがどっから来たのかは、偉い先生方も知らんそうだ」


「ほ~ん……」



 200年といえば確かに長いが、あんな人外の化け物がポンと出てくるような時間でも無いはずだ。一体どこから来たのか……



「そんな奴からバーニーを連れ帰ってくるなんて、凄いねお姉さん!」


「凄いでしょ? 感謝してよね」


「俺! 半分以上俺の手柄!」



 しれっと手柄を独り占めしようとするストラをけん制したりしながら、夕食も終えてここに泊まることになった。



「ふは~、食べた食べたあ、お腹いっぱーい」



 靴を脱ぎ、敷かれた毛布の上に転がったストラは腹いっぱいにパイとシチューを詰め込んで満足げだが、俺はそうでもなく……



「あ~あ、再婚してるなんて聞いてねえ、畜生……」


「世の中そんなに都合よくないってことだよね~」


「くっそおぉ……」



 手に入れたものといえば飯と安物の時計だけ。それであんな化け物に逢うなんて到底割に合わねえ……



「……せめてお前の胸揉ませろ」


「殴るぞ」


「ちっ。ブルブル震えてるだけだったくせによ」


「……まあ、そうだね。あんなの初めて見たし、怖かった」


「なんでえ、死んだらそこまで、なんて言っておいて」


「死ぬのは普通に嫌だよ。でも仕方ないじゃん、私賢くないしお金もないし。だったら体張るしかないでしょ、人生変えるにはさ……っていうか! 首突っ込んだのそっ

ちじゃん!」


「ぎく」


「そうだよ! 何上から目線してるのさ! 巻き込まれたんだぞ私は! えーい、お前も巻いてやる!」


「あ、こら! 固結びするな!」


「ふ~んだ。私もう寝るからね」



 上手い感じに誤魔化しておこうと思ったが失敗した。毛布にくるまったストラの横で絡まった自分の体を解く作業を強いられる……



「……まあ、あのミートパイはおいしかった。うん、本当に、おいしかった」



 ポツリとつぶやいたストラだったが、体を解き終わったころにはすっかり寝入っていた。仕方なしにこっちも目を閉じ……闇の中で呼びかける。



「……神、おい神!」


「よびましたか?」



 神は呼んだら普通に答えてきた。周囲は真っ黒になって何も見えない中、俺の体だけが闇に浮かび上がっている。ここが、神との話をする場所なんだろう。それはさておき……



「呼びましたか、じゃねえ! 俺の名前が思い出せねえぞ、いや名前だけじゃねえ、家族や自分の顔なんかもだ、どうなってる!?」


「私が忘れさせませた」


「はあ!?」



 シレッと無視できないことを言い出した。体を改造しただけにとどまらず、記憶まで弄られているとなると、何か都合の悪いことがあっても忘れさせられているということもありうる……



「あなたが目を覚ますとき、あなた達にとってとても長い時間が過ぎるのはわかっていました。自分や血族のことを覚えていては、苦しむだろうと思ったのです」


「余計なことしやがって……!」


「ごめんなさい。強く望めば、思い出すこともあるでしょう」


「……神に謝られるってのもな……ちっ。じゃあ、あれだ、神々の戦争ってのはなんだ? 誰かと戦ったのか?」


「私はずっとあなたを見ていました。この世界のことはわかりません」


「なんだよ……それじゃあ、昨日の続きだ。北に行けば俺は人間に戻れるんだな?」


「天を衝く金属の巨塔、その頂に世界の殻が薄い場所があります。そこにたどり着ければ」


「そりゃ目立ちそうだ。そんじゃま、その塔とやらを目指させてもらうか」


「あなたを見ていますよ」



 会話を終えると俺は元通りストラから生えていた。納得のいかないところもあるが、とにかくその塔とやらを目指すほかない。ひとまず俺も床にのたくり、朝まで眠りにつくのだった。

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