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37 新能力:服だけ溶かすアレ

「あー! けー! ろー!!」


 ストラは牢の扉をガンガン蹴っている。今俺達が居るのは地下牢……まあ、おれは縛られようが周りの様子がわかるのでどこにいるのかはわかる。俺達は渡し船に乗せられ、対岸のでかい建物、神殿の地下にある牢屋に放り込まれているのだ。荷物は没収され、縛られたまま。それを俺がどうにか目隠しだけでも取ったのが今……だ。



「う~……やっぱ開かないかあ」


「そりゃ牢屋だからな」


「うううぅ……」



 向かいの牢からはメソメソとしたリオの泣き声。まあ、気持ちはわからんでもないが。



「触手、リオはどんな感じ?」


「えーっとだな」



 俺は覗き窓から体を出し、リオの様子を見る。手かせ足かせ、目隠しに猿轡と完全拘束だ。鎧も取られて紺のインナーが体のラインを浮き上がらせている。



「うーむこりゃ……中々眼福な状態だ。普段鎧で中々みられねえからなあ、もうちょっとじっくり……」


「む~!」


「馬鹿やってないで剥がしてやんなさいエロ触手!」



 ゲシっと蹴りを入れられて俺はリオの目隠しと猿轡を取る。目隠しが取れて橙色の瞳が覗き窓から入る光に照らされ……ポロポロと泣き出した。



「う、ふええぇぇ……」


「リオ~、大丈夫~?」


「全然大丈夫じゃないですよぉ!」


「げ、元気じゃん……」


「だからよそうって言ったじゃないですかあ! あの人滅茶苦茶身分高い人ですよ!? 私達下手すれば大逆罪ですよぉ!」


「あ~、もう。わかったわかった悪かったってば。何とかするから」


「何とかって……どうするつもりなんですか……装備も何もかも取られちゃってるんですよ……」


「とりあえず……触手、その辺に鍵とか無い?」


「あ~……」



 俺は牢屋の廊下を見回してみるが……あるのは最低限の灯りだけ。使えそうなものはない。



「だめだな。なんもねえわ」


「う~ん、じゃあとりあえずこの枷取らないとだけど……ねえ触手、前に『服だけ溶かす粘液』とか言ってたよね。あれ使えないかな」


「あれか? う~む……枷って服なのか? そもそもそういう風に使う物じゃねえんだがなあ……ありゃ女を恥じらわせつつ減っていく布面積に抵抗の無意味さを思い知らせ」


「いいから、さっさと、やれ」


「へ~い……」



 俺はストラの牢に戻り、手枷に先端を押し付けて……身を震わせると、先端から粘つく緑色の粘液を吐き出す。それは手枷にへばりつき、肉が焼けるような音をさせながら溶かし崩していく!



「おお~……よし、取れた!」


「あ~あ、こんな使い方することになるなんてよ……」


「次は足、それが終わったらリオね。は~や~く」


「へへ~い」



 とりあえず二人の手足は解放し、縄を外して動けるようになった、が……



「で、こっからどうするよ」


「扉溶かせないの?」


「服じゃないから無理だな……」


「いいから出しなってほらほら」


「あ、こら、やめ、もうちょい優しく、あぁ~!」


 俺は首根っこを掴まれてグリグリと扉に押し付けられ、服だけ溶かす液を扱きだされる……が、扉は無傷。



「……どっちも材料は木なのに、おかしくない?」


「そーゆーもんなの!」


「むう……じゃあ、鍵どうにかできない?」


「鍵なあ……」



 ひとまず俺は扉の外側に回り込んでみる。鍵は単純な閂に後付けの錠前。鍵穴は……細い触手なら通れそうだ! 



「やってみるか。どれ……お~……んん……?」



 細かい責めをするための奴を伸ばして鍵穴に入れる。こういう鍵は中の部品を押して回してやれば開くはずだ……が……



「どう?」


「なんだ、この……妙な鍵だな。バネか何かか? 鍵ってな、刺して回すだけだろ、うぐぐ……だめだ、開かねえ!」


「駄目かぁ……じゃあ、そのうち看守とかくるだろうから、そいつから鍵取る方向で……」


「お前、素手での格闘とかできんのか? ここの兵隊、ゴツいやつばっかりだぞ」


「やらなきゃ仕方ないじゃん。どの道枷壊しちゃったし。不意打ちで、目とか狙って……」


「ニャオン」


「にゃおん?」



 脱出の算段中に扉の外で猫の鳴く声。ストラが外を覗くと顔を出すとそこには……



「ニック!? 無事だったんだ!」


「え、ニックさん?」


「声量を落としてください」


「ご、ごめん。ついてきてたの?」


「はい。私の正体は露見しておらず、容易に潜入できました。そちらは脱獄を試行中のようですね」


「ああ、だが鍵がどうにもな……」


「確認します……」



 ニックが顔から例の青い光を出して鍵を照らす。少しして……



「鍵はディスク式、構造としては単純です。内部の機構を適切な高さに押し上げることで開錠可能です。現在内部に侵入している触手氏の触腕により操作可能と思われます」


「適切なって言われてもな……」


「私が指示します。一番手前のディスクを押し上げてください。二つ目はそれよりも低く、三つ目は……」


「待て待て待て、一度に言うなって。上げるって……ここか? このくらいか?」


「行き過ぎました。半分戻してください……戻し過ぎです」


「触手、急いでよ。見回りとか来ちゃうよ」


「え~い、前から後ろから……急かすなっての。こんな鍵見たことねえぞ。200年で進歩したってことか……」



 悪戦苦闘しながらもどうにか鍵を回し、チン、と小気味いい音と共に錠前を外すことに成功した。次はリオの方も同じく外し、ひとまず牢屋からは脱出したが……



「まずは荷物取り返さないとね」


「すぐ離れた方が良いんじゃ……」


「でも、荷物無しじゃどこにも行けないでしょ。あの鎧無かったら、リオただのヘタレだし」


「うううっ、否定できないのが辛いです……」


「なんにせよ動くか。ここにいても仕方ねえしな」


「……お待ちください、接近する足音を確認」


「み、見回りでしょうか? どうしましょう……」


「一旦牢に戻ろう。どっちか覗き込むだろうから、背中向けた方が後ろから倒す! これでいくよ」


「どんどん罪を重ねていく気が……」



 俺達は牢に戻り、看守が来るのを待つ。やがて鼻の短い像のような……バクって奴か。それの獣人が姿を見せ、リオの牢を覗き込んだ。



「お~い、出て


「とりゃああっ!」



 その後頭部目掛け、ストラのかかとが命中! 空けた牢の扉を支えにした跳び蹴りは威力充分、看守の顔をリオの牢の扉に叩きつけた!



「いごはっ!?」



 悶絶する看守! ひとまず多少時間は稼いだとして、次は装備の回収だが、一体どこにあるのやら……



「ま、待て、お前ら……!」


「おっと、まずは動くか。牢の出口はあっちだ!」


「触手、手足縛って! リオもニックも、行くよ!」


「はいぃ……!」



 看守から鍵束を取ってストラは走り出し、リオとニックも続く。俺は看守の両手両足に巻き付いて追いつけないように……



「ま、待て! お前ら! 釈放! 釈放だって!」


「あん?」



 看守が予想外のことを口走ったのは、その時のことだった……

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