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15 初ダンジョンは散々に

「ん」


「お」


「あ」



 洞窟に踏み入った俺たちは一様に声を上げた。全身を包む寒気というかピリピリしたというか、そんな感触。


「リオも感じた?」


「はい……」


「寒気がしたが、これがダンジョンってことなのか?」


「否定。洞窟入り口と現地点で有意な気温差は認められません。しかし周辺のエネルギー密度の上昇を観測しています」


「あの……この猫さんは一体どういうアビリティなんですか?」


「これはアビリティじゃなくて拾い物。そういやちゃんと紹介してなかったっけ」


「個体名リオを以後の同行者と認定し、当機の情報を開示します。私はTINのNIC。アビリティと呼ばれる存在ではなく、独立した思考能力を持つ存在です。正体を隠匿して活動していますが、ストラ、および触手氏両名とは協力関係にあります」


「はあ、ニック、さん……?」


「誰も居ないんだし猫の姿じゃなくていいんじゃない?」


「提案を受諾。擬装解除します」


「わ、え、え……!?」



 ニックは普通の猫の見た目から、銀色の金属質な元の見た目に戻った。これこそがこいつの真の姿なのだが、普段は普通の猫の格好をして誤魔化しているわけだ。


「で、その『協力』。当然今もやってくれるんでしょ? 何かわかること無いの?」


「はい。前方より複数の活動を検知。中型生物の足音と推測」


「中型ってーと、具体的には?」


「概ね、人間の子供程度です」


「うーん、ゴブリン、かな……リオ、逃げないでよ?」


「うう、やっぱりやめませんか? 暗いですし……」


「投光機能、オン」


「わ、目が光った」


「明かりで手が塞がらなくて済むな。なーに、心配すんなって! トロールぶちのめした自分を信じろよ!」


「そうそう。だからリオ、先頭ね」


「えええぇ……」



 リオの後ろにするりと回り込んだストラがその背中をグイグイと押す。リオは両手でメイスを持ったまま、おっかなびっくり歩き出した。



「前方やや左、反応有り。どうしますか?」


「敵だよね? 不意打ちできるならそれが良いかな」


「隠密行動、確認。消灯します」



 ニックの目の明かりが消えると、洞窟は暗闇に包まれ……ない。少し離れたところで焚火の明かりらしいものが壁を照らしている。左側に少し空間があるようだ。そして灯りに映し出される人影も一つ。



「(いや、人にしちゃ頭身が妙か……)」


「ほらリオ、行って。私も行くから」


「は、はい……」



 足音を殺し、角に立つ。呼吸を整え……リオとストラは飛び出した! そこは物置か休憩場所か、少し広がったスペースで、中央に焚火、それを囲む二体の生き物。サルを緑色にして毛を無くし、鼻と耳を長くして頭を肥大させたようなそいつらはこちらに顔を向け、驚いたように立ち上がる。



「リオ? リオ!」


「あ、う……」



 リオが動かない。飛び出したはいいがそのまま立ちすくみ……生き物が、耳障りな甲高い声を上げとびかかってきた! ストラが押し倒されて首に指が食い込む!



「あっ、ぐ……!」


「させるかコラァ!」



 俺はその生き物の顔に体当たり、怯んだそいつの脇腹に、ストラはナイフを突き立てた!



「この、このこのおっ!」



 のけ反った頭を掴み、二度、三度、ストラは刃を突き刺す! 血を流してそいつは動かなくなり……横から重たい金属音。



「あわわわ!」


「リオ!?」



 ストラの声にリオの方を見ると、顔に飛びついて兜をはがそうとしている生き物を、尻もちをついたリオが両手で引きはがしているところだった。両脇を抱えられて暴れるそいつを、ストラは後ろから首をかき切り……聞こえるのは自分たちの荒い呼吸だけになった。



「もう……リオ何してるのよ!」


「す、すいません、でも……」


「やっぱりただのゴブリン、私でも何とかなるんだよ? トロール倒したリオなら余裕でしょ!? なんで棒立ちなの!」


「あ、あうぅ……」


「おいストラ……」



 リオを責めるストラだが……まあ、棒立ちだったのは確かだ。しかし……



「警告。複数の反応が接近中」



 ニックの声が、そんなことしてる場合じゃねえと教えてくれる。


「気づかれたみてえだな……おいストラ! リオ! 逃げるぞ!」


「は、はいっ!」


「え、ちょっと……!」


「いいから逃げんだよ! 走れ走れ!」


「尻叩くな!」


「アベッ!?」



 俺たちは踵を返し、入口へと駆けだす。背後からいくつも足音が追ってきたが、どうにかそれを振り切って俺たちはダンジョンから転がり出たのだった。




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