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7話 団体試験〜他と同じ子どもとして〜






「新城、ごめん!」

「え? どうしたの出南さん」


 新城と再会してすぐ、私は頭を下げていた。あんなに余裕そうに振る舞っておいて、あのザマである。かなりギリギリで、下手をすればあの場で終わっていた可能性すらあるのだ。

 さっきの試験のおかげで、私は優れているわけではないのだと思い出せた。他を見下している自分がいたのだと気づけた。だからせめてもの誠意として、私からお願いする。


「私、正直新城より強いと思ってた」

「……うん」

「でも、そんなこと全然なかった。なんなら、私の方が弱いくらいだ」

「うん」

「だからもう一回。友達として、一緒に頑張ってくれ」


 頭はまだ上げない。こんなことを最後に言ったのはもう何年も前で、断られるのが怖くて目を見れないでいる。返答をずっと待っていた私は肩を叩かれ、上げた視界には優しい笑みを浮かべた新城がいた。


「こちらこそよろしく」


 そう言って差し伸べられた手を私は握りかえし、顔を綻ばせる。私たちの順番が回ってくるまであと少し。私一人ではなく、新城と力を合わせて突破するのだ。

 案内されて向かった先は屋外にあった。その名も屋外演習場、文字通りの場所である。団体試験はここで行われるらしいが、ちらほらとペアを組むのに苦労している姿がみえた。彼らには、良い相手と組めることを祈ることしかできない。


「次の人は?」

「出南さん、行こう」

「ああ」


 とうとう回ってきた私たちの番。さっきと同じように、区切られているフィールドの一部へと連れて来られる。そこで団体試験での説明が行われた。


「団体試験は二十分間で行われます。私が魔法で作ったゴーレムは全てで三種類。小型一体、小型複数体、大型一体です。順番で出していくので、ペースの配分に気をつけてください。準備は大丈夫ですか?」

「はい」

「大丈夫です」


 ――では、試験始め。


 試験官の足元に浮かび上がる魔法陣を見て、私は構えをとる。そこそこ時間が経っているからか、身体の痛みは多少マシになっていた。この調子ならばある程度は動けるだろう。

 細い四肢に小型の体格。見た目だけなら完全に動物、具体的に挙げるなら狼の姿をしたゴーレムが完成しようとする直前、新城に呼ばれて私は振り向いた。


「えっと、素手で行くの? 剣とか……ハンマーとかは」

「無いな」

「そっか……あったら使う?」

「使う。射程が伸びて損はないし、斬るのは単純に強いから」

「それなら任せて」


 手ぶらで前に立とうとしている私に渋い顔をしていた新城は、自信ありげな顔に変えて地面に手をつく。その先に浮かんだ魔法陣、もう少し時間がかかりそうだ。

 こちらに向かってくるゴーレムの対応が優先。新城のやりたいことはまだ分からないから、時間を稼ぐしかない。動物らしい姿で振るわれる爪に気をつけ、注意を引きつける。


 左右に跳ねながら距離を詰めてくるゴーレムは思っていた以上に素早く、私から攻めるのは好ましくない。下手に動いて新城が狙われるぐらいなら、受け手に甘んじて魔法が発動するのを待つ方が良いだろう。

 通り抜けられないよう注意し、飛びかかってきた狼を見て私は腕を振りかぶった。そのまま空中で避けることのできない頭に右腕を突き刺す……が硬い。ただでさえ素手で石を叩いて砕くのは難しいのに、それが魔力で強化されているのだから当然だ。

 何とか地面に叩きつけ、体勢が直される前に蹴り飛ばす。少し痛みを感じる右手を振りつつ、大きく回り込んでくるゴーレムを見据えた。


 狙いが新城に移ったのだと察した私は、注意するよう言おうと振り向いて――何かを持つ新城が差し出す手に目が向く。


「出南さん、受け取ってくれ」


 差し出されたのは、石で作られたであろう一本の剣。これがあの魔法陣の中身だったようだ。


「土属性魔法『リクリエイト』って呼んでるんだ。詳しいことは後で言うけど、とりあえず硬さは保証する」

「了解」


 石剣を受け取り、流れるように身体の向きを反転。背後に迫っていたゴーレムを全力で薙ぎ払った。首の辺りが欠け、破片が辺りに飛び散る。それを見てチャンスだと燕返しをしようとしたが、それよりも前にゴーレムは砂となり風に流されていった。


「……新城の魔法は凄いな」

「ただの初級魔法だけどね。あと役に立つのは、石の弾を飛ばすくらいかな」

「それで充分だろ」


 二、三回だけ素振りをして、改めて試験官の方へと向き直す。これで最初の敵は終わりで、次は複数に増えるはずだ。まだ元気そうな新城を見てから、少し考えた私は提案をする。


「次さ、少し突っ込んでみていいか?」

「駄目とは言わないけど、危ないんじゃないかな」

「今、私と新城の二人だろ。何体出てくるのか分からないけど――」

「六体ですね」


 会話に口を挟まれ、奥の方で浮かんだ魔法陣にはさっきと同じものが六体。固まっているうちに距離を詰めるのが良いと判断した。


「私だけ前にいても全部は抑えられない。早いうちに減らしとかないと新城の負担がヤバいことになる。……だとしても、バラける方が駄目か」

「……いや、分かった。戻ってくるまでは頑張るよ」

「そうか、頼んだ!」


 その場から飛び出して、魔力を剣に込めつつ狙いを定める。ゴーレムが私だけを狙うわけもなく、予想通り一部は散開して脇を抜けていった。試験が始まる前に前衛もできるとは言っていたが、今の魔法の内容だと接近戦向きではない。なるべく早く戻らなければ。


 四方向から迫ってくるゴーレムをしゃがんで躱し、着地する場所を狙って剣を振り抜く。確かな手応えがあったのを確認して、三体の方を見た。だが、背中からの衝撃を感じて私の体勢は崩れる。


「見た目が同じだからと言って耐久性も同じだと判断するのは……少し早計ではないでしょうか」

「くそっ」


 一度立て直すためその場から離れようとしたが、右頬を殴られ地面を転がされた。慌てて起き上がり、すぐ近くにいたゴーレムに飛びかかる。

 痛みを感じでいる場合ではない。今一体からしか襲われていないことが全てを表している。これ以上の負担を新城に向けるわけにはいかない。


 魔力を込め、ゴーレムの喉を目掛けて剣を突き刺した。なかなか刃が進まないが、ひたすらに先へ押し込んでいく。

 貫通してその身体が霧散していくのをしっかりと確認してから、私は新城の下へ駆け戻った。新城を狙うゴーレムが囲んでいたのは石の壁。これで新城はしのいでいたのだろう。


「すまん、遅れた!」

「大丈夫!」


 勢いに任せて突撃し、一体を破壊する。


「出南さん下がって!」

「了解」


 壁の向こうからそう聞こえて、私はゴーレムを放置し後ろへ下がった。すると、新城の叫び声に合わせて絶壁は動き出す。


「『フォールダウン』!」


 突然傾き始めた壁にゴーレムは対応できず、一体を残して皆押し潰されてしまった。私がその様子を見て呆然としている内に、残りの首も刎ねられて風に溶けていく。


「言ったでしょ、足は引っ張らないって」

「……新城、お前そうとう強いだろ」

「正直に言えばそうかな」


 石剣を片手にこちらへと歩いてくる新城を見た。どこかを気にするような雰囲気もないし、無傷で切り抜けたのだろうか。


「何で後衛に回ったんだ? 一応って言うレベルじゃないし、前衛二人でも充分だっただろ」

「これは試験だからね。勝つじゃなくて、合格する。この試験は多分、協調性とかチームワークを見るものでしょ」

「……あー」

 

 明らかな差を感じつつ、とりあえず一息吐く。次は大型、今までよりもキツくなるはずだ。


「まだ七分……かなり良いペースですね。魔力の管理はしていますか?」

「私は身体強化するだけなので足りなくならないです」

「僕もこれぐらいなら大丈夫ですよ」

「なるほど」


 ――では、これで最後の一体です。


 魔法陣が再び浮かび上がった。試験はまだ終わらない。

 

 

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