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したいこと…

どれだけ眠っていたのだろうか。

目を覚ますと馬車は止まっており、

外はすっかり暗くなっていた。

俺は立ち上がり外の様子を見てみることにした。

馬車の外には他にもいくつか馬車が止まっており、

その近くに火をおこして休憩している騎士たちの

姿が見えた。

「少年、目が覚めたのか」

いつのまにか横に立っていた

ルークが話しかけてくる。

「ここはどこなんだ?」

俺は何気なく聞いてみた。

「ここは先ほどいた場所と今向かっている場所の

 丁度中間地点ってところだな」

そんな抽象的な答えは求めていない

心の中でそう思いつつも正直どうでもよかった。

今朝起きたことは夢でもなんでもなく現実だった

そう考えるだけで全てがどうでもよくなっていく。

ルークはそんな俺の様子を見て急にニカッと

笑ったかと思うと次の瞬間、

『バァーン』

俺の背中を引っ叩いたのだった。

「おっさん急に何しやがんだよ‼︎」

俺は鈍い痛みに耐えながらルークを睨みつけた。

「ガハハハ、目の前に『意気地なし』という

 モンスターがいたから退治したまでだ」

高らかに笑いながらそんなことを言う。

「少年、君のしたいこととはなんだ?」

ルークが俺に問いかけてくる。

「したいこと?」

突然訳のわからないことを聞かれ言葉に詰まる。

「そうだ、少年のこの先したいこととは何だ?」

そんなもの今のこの状態であるわけがない。

そう、あるわけがないはずなのに……

「今朝、君は全速力でワシらの待つ穴の外まで

 走ってきていたな……

 君は…いや、君たちは穴の外に何かを求めて

 いたんじゃないか?」

その言葉はあの時感じていた気持ちを鮮明に

思い出させてくれた。

「俺は…俺たちはあの頃の自由が欲しかった……

 もう一度ソウタたちと一緒に何気ない日々を

 送りたかったんだ」

俺は気がつけば泣いていた。

涙がとめどなく流れてくる。

そうだ、俺がこの先本当にしたいことは…

「ソウタを…村のみんなを救いたいです」

ルークはその言葉を待っていたと言わんばかりに

ニコニコしていた。

「そうだ、みんな誰しもが前を向き未来に対する

 目標を持って生きている。そして、それが

 生きる原動力となる。原動力ができれば

 また新たな目標に向かって前へ進み出す。

 人類が立ち止まることなどないのだ‼︎」

ルークは意気揚々とそんなことを言っている。

「いつ残った人々の救出に向かうんだ?」

俺は涙を拭いルークに問いかける。

するとルークは先ほどまでの態度とは

うってかわって神妙な顔つきになり、

「今回の被害のことや敵の警戒が強まったこと

 などを元に考えると次の襲撃は早くても

 1年後…いやもっと先になるかもしれない」

 『1年後』

それは長いように感じるが考えようによっては

短くも感じる。

「その期間で俺を遠征部隊のメンバーに加わることが

 できるくらい鍛錬してもらうことはできないか?」

今のままでは足手纏いになってしまうことは

分かりきっている。だからこそ

俺は強くならなければならない。

「ワシにか?うーんすまない少年…

 ワシには他にもやるべきことがたくさんあってな…

 少年を直接鍛えてやることはできない…」

やっぱりか…そりゃそうだよな…

こんな遠征部隊にも選ばれているような人だ

一個人に時間をかけているわけにもいかないのだろう

諦めて別の方法を模索しようとしたその時だった、

「だが…」

ルークが言葉を繋いだ。

「少年を鍛えあげ、遠征部隊に選ばれる権限を

 得ることができる方法が一つだけある」

「それはどんな方法なんだ?」

俺はすぐさま聞き返した。

「今から向かうところに魔王軍に対抗する戦力を

 育成するための学校がある。本来そこは

 完全推薦性のエリート学校なのだが、

 ワシが少年を推薦してやろう。

 そしてそこで上位三位以内の成績を出せ。

 そうすれば少年も晴れて遠征部隊の仲間入りだ」

俺は唾を飲み込んだ。

こんな10年間も外の世界の情報を得ることが

できていない、ましてや基礎の知識すら

持っていないような小僧がそんな成績を出すことが

可能なのだろうか……

その時ふとある声が頭をよぎった、

『危ない‼︎』

あの時ソウタはどれだけ勇気を出して俺を

助けてくれたのだろうか…

あの時ソウタがした決断に比べれば

俺が今どんな返事をすればいいかなんて

簡単なことだった。

「やってやるよ…

 上位三位以内なんて楽勝だ‼︎

 それどころが一位をもぎ取って胸を張って

 遠征部隊に加わってやる」

俺は胸を張ってそう答えた。

「いい目をしている…少年なら本当に

 できてしまうかもしれんなガハハハハ」

ルークは高らかに笑うと、

「少年はもう寝ろ。そんな年から夜更かししてては

 大きくなれんぞ」

そう言い残して騎士たちの方へ歩いていった。

「ソウタ、もう少しだけ耐えててくれ

 俺が必ず救い出してみせる」

そう小さく呟き俺は馬車に戻って横になり

目を閉じた。


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