表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

カゴの中…②

「ゴォーン」

突如鳴り響いた轟音とともに俺は目を覚ました。

急いで飛び起き横を見るとソウタも何が起きたのか

分からないという表情で俺の方を見ていた。

「何が起こったんだ?」

ソウタが俺に問いかけてきた。

「分からないが広場の方から音がしたぞ…

 とりあえず行ってみよう」

俺はそう返すと立ち上がりソウタとともに

急いで広場へ向かうことにした。

牢屋の外に出ると他のみんなも続々と広場へ

向かっていた。

おそらくみんな考えていることは同じなのだろう。

『この生活が何か変わるのかもしれない』

その想いだけを胸に、俺たちは広場へ急いだ。

広場が近づくにつれて喧騒は大きくなっていく。

そして広場に着き俺たちが見た光景は、

とても驚きを隠せるものではなかった。

大きく穴の空いた広場の壁……

そこから流れ込む鎧を身に纏い馬を走らせる

騎士の姿……

そして次々と倒される看守たち……

「囚われている人々は急いでこちらへ移動

 してください‼︎」

先頭で戦っていた騎士の一人がこちらに向かって

声を張り上げた。

俺はその声を聞くと自然と涙が溢れてきた。

『自由』

その二文字が俺の中を反芻する。

俺たちは気がつけば無我夢中に走り出していた。

この機会を逃せばもう二度と自分の意思で

生きることはできない。

そんな考えが俺たちの速度を更に速くした。

「どこに行くんだい?哀れな子羊どもよ」

その声を聞いた途端俺たちの時間は止まった。

ゆっくりと後ろを振り返るとそこには

怒りの表情でこちらを睨むオードックの姿があった。

「みなさん止まらないでください‼︎

 ここは私たちがなんとかします。

 走ってください」

騎士の方がこちらに向かって声をかけるが

誰一人として動くことはできない。

どれだけここから逃げたいと心では思っていても

この10年の間に染みついたアイツに対する

恐怖が体を硬直させる。

(動け……動け動け動け動け)

俺は自分の体に何度も命令する。

もうこんな生活は嫌なんだ…

あの頃の自由をもう一度取り戻したいんだ…

「ウォォォォォォォ」

俺はお腹の底から声を張り上げると前へ走り出した。

それがきっかけになったのか、

周りの人も同じく穴の方へ再度走り始めた。

いける…このまま逃げれる…

そんな薄い希望が胸の中を満たす。

「そうかそうか……それがお前達の選択か……

 罰か……罰が必要だなぁぁぁぁ」

その声とともに俺の後ろで悲鳴が聞こえてきた。

走りながら少し後ろを振り返ると

黒い触手が無数に伸び、逃げる人々や騎士の人たちを

次々に取り込んでいっていた。

俺は前を向き直し全速力で走った。

ここで捕まるわけにはいかない。

何としてでもこの地獄から逃げるんだ。

穴まであと数十メートル……

後ろの悲鳴はどんどん大きくなる。

あと数メートル……

(助かった…)

そう思った直後だった。

「危ない‼︎」

その声とともに俺は穴の外へ突き飛ばされた。

俺は盛大に転んだが、すぐさま体勢を整え

後ろを振り返った。

するとそこには黒い触手に囚われた

ソウタの姿があった。

「ソウタ‼︎」

俺は急いで穴の中へ戻ろうとする。

しかし、近くにいた騎士に止められてしまう。

「何をしているんですか⁉︎

 貴方はここで待機しておいてください」

そう言いながら騎士は俺の腕をがっしりと掴む。

「ソウタを、親友を助けに行かないと」

俺は一心不乱に腕を振り解こうとするが

今の状態の俺にそんなことができるはずもなく

そこに座り込むことしかできなかった。

「これ以上は被害が大き過ぎるな……

 撤退だ…撤退せよぉぉぉ」

その場にいた一際大きな男が

そんなことを大声で叫んだ

「まだです、まだ助かっていない人たちがいます」

俺は必死に訴えかけた。

しかしそんな訴えもむなしく、中にいた騎士が

何人かの人を拾い外に出てきた。

「誰一人として逃すものかァァァァァァ」

中からオードックの怒りの声とともに無数の

触手が飛んでくる。

「レパリーレン」

その声とともに穴は瞬時に塞がってしまった。

まるで何が起きたのか理解できない。

「救えたのはたった数十人か」

大きな男が言う。

「相手が相手です…十分な成果といえるでしょう」

謎の呪文を唱えた女もそんなことを言っている。

「あんた達は誰なんだよ……

 中の人たちはどうなるんだよ……

 俺は…俺は一体どうすればよかったんだよ」

俺があの時ちゃんと後ろを見ていれば……

俺がソウタを牢屋から連れ出したりしなければ……

そんな後悔が絶え間なく押しかかってくる。

「立ち止まるな少年……

 中にいる人々は我々が必ず助け出してみせる」

大きな男が俺に語りかけてくる。

その声は芯が通っており少し勇気をもらえるような

そんな声だった。

「あんた達は一体誰なんだよ」

俺は少し冷静さを取り戻し問いかける。

「自己紹介が遅れたな

 俺の名前は『ルーク・バズダリア』だ

 そして俺の横にいるこの女性は…」

名前を言おうとしたところで

その女の人は話を遮った。

「自分の自己紹介ぐらい自分でするわ。

 私の名前は『イシス・ベール』

 私たちはみんな【人類解放部隊】通称【HLA】に

 所属しているの。

 急にこんなことに巻き込まれてまだまだ

 聞きたいこともあるでしょうけど

 ここに長居する訳にもいかないから移動するわよ」

そう言うと周りの騎士へ俺たちを馬車まで

誘導するよう指示していた。

「ガハハハハ、イシスはいつも頼もしいなぁ

 ワシは助けられてばかりじゃのう

 ガハハハハハ」

そう言いながら『ルーク』と名乗った男は俺の

手を取り立ち上がらせてくれた。

「少年よ、お前の人生はまだまだこれからだ

 こんなところで立ち止まってしまっては

 見えるものも見えなくなってしまうぞ」

そんなことを言いながら俺を馬車に乗せ

どこかに移動してしまった。

そして全員乗ることができたのか、

馬車は静かに走り出した。

俺はここからどうすればいいのだろうか……

一体何をすればいいのだろうか……

そんなことを考えていると溜まりきった疲労のせいか

自分の意思とは無関係に眠ってしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ