カゴの中…①
初めての小説なので温かい目で見守ってくださると
ありがたいです。
鳴り響く轟音……木々が焼ける匂い……
人々が逃げ惑う音……そして眼前に広がる光景……
どれだけ泣いても救いなんてどこにもない
「……キロ」
「……起きろ」
「起きろ奴隷どもさっさと広場へ移動しろ」
その怒号とともに俺は目を覚ます。
毎日この繰り返しだ。
「夢か」
あの日、俺の運命を変えた魔王軍の襲来以来
いつも同じ悪夢を見る。
「何してんだ、早く行くぞ」
そう声をかけてきたのは同じ村で育った親友の
『ソウタ』だった。
「すまない、すぐに行く」
そう言うとすぐに起き上がり移動を始めた。
そういえば自己紹介がまだだったな
俺の名前は『ユウキ』
8歳ぐらいの頃に魔王軍に故郷の村を襲われ、
今となっては村のみんなと一緒に奴隷になって
10年ほどになる哀れなやつさ。
襲われた理由も『この村に英雄の生まれ変わりが
いるから全員捕えろ』だったか?
本当に迷惑な話だよ。
そんなこんなを考えていると、
「お前さっきからボーっとして体調でも悪いのか?」
ソウタが心配そうに声をかけてくる。
「いや、少し考え事をしてただけさ」
「そりゃこんなところに毎日いたら現実逃避も
したくなるわな…でもそろそろ戻ってこいよ
お祈りの時間だ」
ソウタの言うとおり今から広場で行われるのは
この世界を混沌に導く魔王に対するお祈りだ。
そうして四方を壁に囲まれた広場に着くと
既に大勢の人がいた。
そしてみんなの目線の先にいる司祭のような人物こそ
ここの署長『オードック』だ。
なんと魔王軍第8部隊副隊長でもあるらしい。
なんとまぁお偉い人だこと。
「さぁ哀れな子羊たちよ、祈りの時間だ」
そう言うとその場にいた人々はみんな膝をついて
手を合わせた。
「嗚呼、偉大なる我が王よ。今日も我らの道に
幸を与えてくだされ」
俺たちもその声に合わせて額を地面につけ祈る。
たとえ心にも思っていなかったとしても。
するとその時、
「ゴホッ…ゴホッ」
遠くで咳き込んだ人がいた…
その直後その人は地面から生えてきた黒い触手
のようなモノに取り込まれてしまった。
「祈りの最中に邪魔をするとはなんと不敬な
輩だ……罰せねば……罰せねば」
そういうと、オードックは黒い触手ととも
に姿を消した。
これもいつもと同じ景色だ。
こうして連れて行かれた人は後日、ブルブルと
震えながら戻ってくる。
何があったのかは聞きたくもない。
「奴隷ども祈りは終わりだ。飯を食ったら
仕事だ。さっさと働け」
広場に残された俺たちは看守の命令とともに
食堂へ移動を開始する。
どうせ出てくるご飯もそこらへんの雑草を
煮詰めたような味しかしないのにな。
そんな味のせいか人々の間では『まずい毒を
入れて俺たちが抵抗できないように
しているのでは?』なんて噂まで流れる始末だ。
食堂でご飯を済ませた後は地下で石炭や鉄を
掘り出す労働の時間だ。
労働を終えた頃には夜を迎え、夜も祈りをささげ、
まずい飯を食って眠る頃には疲れ切っている。
もう誰しもが倒れてもおかしくないはずなのに
誰も倒れることができない…それどころが
死ぬことすらできない。話によるとここを統括して
いる幹部の能力らしいが……定かではないがな。
「なぁユウキ」
ソウタが声をかけてくる、
「どうした?」
俺は地面にひかれた藁で横になりながら答える。
「俺たちいつまでこんな生活が続くんだろうな…
死ぬことも自由になることもできない…
あの頃が本当に夢の時間だった」
俺は何も返すことができなかった。
同じことを考えていたからだ。
俺やソウタだけじゃない、みんな同じ考えのはずだ。
それなのに俺たちには力がない。反乱を起こした
ところで看守に止められオードックに罰を与えられる
のが関の山だろう。
そんなことを考えながら俺は静かに目を閉じた。
少しずつ更新していく予定なので気になった方は
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