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転移直後に竜殺し ―― 突然竜に襲われ始まる異世界。持ち物は一振りの日本刀  作者: 和泉将樹
第四章 王都の冒険者

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解説資料-05

 おなじみ解説資料。無理に読む必要は全くないです(今回一万文字超えてます)

 そろそろ始まって一年近く経つので年齢が変わる人がちらほら。

 ちなみにこの章、ホントはもっと短い予定でした。

 が、王都編これで終わるしもったいないなー、と思ってやったら増やしたら……三章を超えて現状最長に。

 四章合計で三十二話ありますが、最初の話数はなんと十八話でした。

 ちょっと数えてて自分でもびっくり。

 66~71話、74~76話、それにパーティ以降は完全追加です。

 まあそのせいでちょっと中だるみした様なところもなくもないですね。

 学園編が延々続くのかと誤解されたし。

 そこは今後の反省点ですね。

 なお、パーティはエルフィナにドレスを着せたかっただけです(マテ)

 いや、この後そういう機会がなさそうでして……。

 これでアルガンド王国編は一旦終わりです。

 次から登場キャラがメイン二人除いて一新されます。

 まあその前に間章が入りますが。

 あと、ちょっと更新頻度落とします。ストックが怪しくて(汗)

 四章間際の更新頻度上昇はMFブックスコンテストのラストスパート狙いです(ぉ


【登場人物】


〇コウ(神坂かみさかこう) 十九歳・男性

 現代日本から異世界に転移してきた青年。

 今回本当は通う予定だった大学に近い環境を実は結構楽しんでいた。

 エルフィナとの距離感に戸惑いつつ、それでもその好意は嬉しく思っている。

 今回炎の法術で死にかけたがかろうじて生きていた。

 前にあった『死ににくい』というのが事実じゃないとちょっと説明つかないかもしれない。

 普通の人間ならあれは間違いなく即死している。


 あとついにツッコミが入ったので一応解説。

 コウの名前である『昴』は本来は『コウ』とは読みませんが、無理矢理そう読ませてます。日本の名前は字面だけが定義されて読み方は自由なので、あえて『コウ』と読んでます。よく勘違いされるものでもあるので、学校でも最初に訂正すれば誰も気にされなかったでしょう(まあ作者が『昴』が好きなだけな一方、異世界で呼びやすいようにしたかっただけです。追記:某Reゼロの主人公と同じになるしね……)

 ついでに明かされることが多分ないのですが、コウの本当の姓は『神坂』ではないです。これは継母が再婚した際に変わった姓で、本来の姓はコウも覚えてません。

 ちなみに妹の名前は神坂星奈(せな)でした(絶対作中出てこないけど)


〇エルフィナ 百五十四歳・女性

 ついにコウへの好意を自覚した森妖精エルフ

 コウと同レベルの規格外存在だが今回の戦闘では精霊が使えなかったので影が薄い……と思いきや、瀕死のコウ(というか普通では絶対助からないレベルの重傷)を精霊の力をフル活用して助けた。

 実のところ、弓矢があれば刺客を瞬殺した可能性が高いのだが。彼女の技量ならば、並の矢避けの法術具程度なら突破してしまうので。

 また、森妖精エルフにあるまじきスタイルを誇ることが判明。

 ちなみに作中あまり書かれなかったが、学食ではエルフィナが美味しそうに食べるのを見るのが楽しいという層が一定数いたとかなんとか。

 その美貌も相まって、学内では大人気だった。

 エルフィナがいなくなった後、エルフ失陥症候群エルフロストシンドロームが学院で蔓延した……かもしれない(笑)

 前回の解説資料で書き忘れたけど誕生日は二月一日。


〇アクレット・ラディス 四十四歳・男性

 ただでさえ(コウは別にして)規格外だったが、なんと第一基幹文字プライマリルーン天与法印セルディックルナール持ちというデタラメな存在であることが判明した、アルガンド王国最強の法術士。

 天与法印持ちであることは比較的よく知られているが、第一基幹文字プライマリルーンを含んでいることはあまり知られていない。

 実のところ、学院祭の現場にアクレットがいたら、あのテロは一瞬で失敗してた。

 バーランドでもアクレットは最重要警戒対象で、あの刺客は常にアクレットの居場所は気にしていた。さすがにパリウスからすぐ駆けつけるのは不可能だったが。

 ちなみに現国王であるルヴァイン四世とはアルス王立学院での同窓でとても仲が良い。ハインリヒをからかってよく遊んでいた。

 二十年前、アザスティン、バーランドの連合軍がアルガンド王国に攻めてきた際、敵の援軍であった帝国軍に第一基幹文字プライマリルーンの法術を叩き込んで壊滅させた。この話は『トリエンテスの業火』として今も語り継がれている。

 このことがあり、帝国が兵を退く条件にアクレットが西側に配置されないこと、というのを指定してきたのはある種伝説。

 その後、軍を辞めて冒険者になっている。


〇ルヴァイン・ヴェン・アルガンディア 四十四歳・男性

 現アルガンド王国の第五十一代国王。ルヴァインの名を持つ王は四人目なので四世となる。

 今はおとなしく玉座に収まっているが、かつては最前線で戦う武闘派の王だった。

 二十年前のアザスティン、バーランド連合軍との戦争は国王即位直後だったが、見事に撃退して以後、国民から高い支持を受けている。

 彼の治世は二十年あまりに及ぶが、非常に安定している。


〇ハインリヒ・エル・アルガンディア 三十四歳・男性

 ルヴァイン王の弟にして王国元帥。

 王国最強の戦士とも云われる。

 実際異様に強いらしい。

 アクレットではなくハインリヒが学院祭のあの襲撃現場にいたら、やっぱり短時間で魔幻兵ガルディオンはぼこぼこにされてたと思われる。

 というのも、彼の持つ剣はアルガンド王家に伝わる秘宝で、非常に強力な身体強化の法術が付与された法術武具クリプレットでもある。もちろん武器としての性能も破格。

 ちなみにこれなしでも元々デタラメに強い。

 王国最強の名は伊達ではない。


〇キールゲン・エル・アルガンディア 十八歳・男性

 ルヴァインの長男。現在はアルス王立学院に通う学生だが、卒業後に立太子の儀を経て王太子となり、第一王位継承権者となる。

 輝く様な金髪と碧眼の持ち主で、絵にかいたような美男子。

 剣も法術も人並み以上にこなし、父や叔父、それにアクレットらの薫陶もあって良き王になる素質は十分。

 夏休み中にステファニーと婚約することになり、学院祭後に内々に発表。

 立太子後に結婚予定。


〇ステファニー・クラスティ 十七歳・女性

 パスティア伯爵の爵位を持つクラスティ家の次女。

 少しくすんだ金色の長髪と、深い青色の瞳の美人。

 学院寮でエルフィナと同室になり、彼女をいじりなおした。

 キールゲンと恋仲で、学院祭後に婚約する。

 さばさばした、いかにもアルガンド王国の貴族の娘らしい性格。

 胸部の大きさはエルフィナ以上(エルフィナの方が細いが)

 姉がクロックス公爵の妻である。他に兄がいて、クラスティ家はその兄が継ぐ。


〇アイラ・レッテンブルグ 十六歳・女性

 王都で主に日用雑貨を手広く扱ってる商家、レッテンブルグ家の娘。四つ離れた兄がいる。

 黒髪黒瞳で、肌はやや白いが、日本人的な容姿の持ち主。

 学院寮でエルフィナと同室になった。

 女性の胸をもむのが趣味。スキンシップと言い切る。

 実は学院の研究生と恋仲だが、将来どうするかは悩んでいる。


〇リスティ・クランブル 十五歳・女性

 王都で石材や木材を扱う商家の娘。

 栗色の髪と鳶色の瞳を持つ少女で、アイラとは幼馴染。

 幼い頃はそれほど裕福ではなかった影響でやや少食。

 ラクティとはほぼ同い年であり、彼女を心底尊敬している。


〇ラクティ・ネイハ・ディ・パリウス 十五歳・女性

 王立学院の学生会で辣腕をふるっていたことが判明したパリウス公爵。

 コウを『お兄ちゃん』、エルフィナを『妹』といって周囲を混乱させるだけさせていったが本人は全く反省してない(笑)

 学院の卒業論文はユグニア公爵の次男、クライス・エンバレスとの共同研究で、まだ経済という概念がないこの世界において景気という商取引における『流れ』を見出すという研究。一部地球における『見えざる手』に相当する存在についても言及してる。一介の学生がやることじゃない。

 しかしクライスの好意には欠片も気付いてない。

 まあこれはクライス側も悪いけど(笑)


〇レリアナ・パティントン 十六歳・女性

 クロックス領に領地を持つキュルメル伯爵の娘。

 コウのことが気になっていた女生徒は実は結構いたが、エルフィナの存在故に大半は諦めていた。それでも諦めず、しかも失恋確定を承知で突撃した。

 キールゲンにも何回も確認されてるのにも関わらず突撃したのは、アルガンド貴族ならではと言えるか。


〇クライス・エンバレス 十九歳・男性

 王国七公爵の一人、ユグニア公爵の次男。

 公爵位は長男が継ぐが、兄を支える立場として政務に勤しんでいる。

 ラクティと共同で卒業論文を執筆した人物。どちらかというと資料集めと分析を担当し、論文の主たる部分のほとんどはラクティの成果だというが、必要な情報を取捨選択し集めたのは彼の功績なのは間違いない。

 ラクティもすごく感謝しているし、彼の能力を高く評価している。

 ラクティを異性として意識しているが、自覚がない。ついでにラクティは全く気付いていない。

 彼の恋は実るのか(ぉぃ


〇ラテリア・ニア・アルガンディア 四十一歳・女性

 ルヴァインの正妃。つまりキールゲンの母親。

 アルス王立学院でのルヴァインの後輩で、元はユグニア公爵の令嬢。

 現ユグニア公爵の妹で、クライスの叔母でもある。

 赤毛に近い金色の髪の持ち主。ラクティの髪色に似ているが、これは彼女ラテリアの母親の出身がラクティの母親と同じ北方だからである。


〇ユフィアーナ・エル・アルガンディア 十三歳・女性

 アルガンド王国第一王女、キールゲンの妹。

 兄に似た輝くような金髪の美少女で、国民にも広く慕われている。

 アルス王立学院とは別の学校に通っている(全寮制ではない)

 今回お忍びで学院祭を見に来ていて、エルフィナを見て心奪われたらしい。

 エルフィナを『お姉さま』と呼ぼうとしてラクティに待ったをかけられた。

 この子もラクティもこの先不安……。


〇アルスバート・エンバレス・ディ・ユグニア 四十八歳・男性

 現ユグニア公爵。ラテリアの兄、クライスの父親である。

 そしてルヴァインの義理の兄でもあり、学院時代の先輩でもあった。

 ユグニア領はクロックス領の西、王都の南を領地とする。

 ちなみにハルバリア・ネイハの後輩でもあり、彼をとても尊敬していた。

 なのでその忘れ形見であるラクティのことはいつも気にかけていただけに、学院卒業後に一時的に行方不明になった時などはとても心配していた。

 エンベルク伯の叛乱でもとても心配していたのだが、あっという間に終わって唖然としてしまい、同時にさすがハルバリア先輩の娘だ、と思っている。


〇ルーベック・クラスティ・キィ・パスティア 四十六歳・男性

 ステファニーの父親。パスティア伯。

 パスティアはクロックスに領地を持つ貴族。

 ステファニーは次女で、上に兄姉がいる。

 兄は後継者で、姉はクロックス公の妻である。兄と姉は双子。

 彼自身の妻は死別しているが、とても美人だったらしい。

 ちなみに本編登場してないのに何でここに名前があるかといえば、出す予定だったんだけど書ききれなかった名残(酷)

 いや、あのパーティに出てないはずはないので……。

 さすがにパーティだけで四話も使うのはちょっと(汗)

 クラインとヘッセルの出番を削ってこっちにすべきだったか(酷)


〇クライン・ベルツ 十八歳・男性

 アルガンド王国騎士の子。

 キールゲンの護衛として共に学院に入学したが、法術実験場の爆発事故でキールゲンを庇って大怪我をした。

 剣を得意としていて、大柄というわけではないが実はすごい鍛えている。

 彼自身は、後々キールゲンの近衛になる予定。


〇ヘッセル・ファンディート 十八歳・男性

 同じくアルガンド王国の騎士の子。

 こちらは法術を得意としていて、第二基幹文字セカンダリルーンの[流水]に適性を持ち、各種攻撃法術も使いこなせる将来有望な法術士クリルファでもある。

 あの爆発事故でキールゲンがかすり傷ですんだのは、クラインが庇ってさらにそれをヘッセルが水の防護幕で覆ったおかげである。

 範囲を絞るため、自分たちをあえて範囲から外すという事までしてキールゲンを守った。


【地名】


〇アルガンド王国

 クレスティア大陸北東部にある大国。

 その建国は四百年前にさかのぼる。


〇アルガス

 アルガンド王国の王都。

 大陸有数の規模の大都市で、人口は実に五十万人。

 アルカーナ河が街の中に通っていて、橋で街をつないでいるが、船の航行を妨げないために、跳ね橋が存在する。


〇バーランド王国

 アルガンド王国の西にある山岳国。

 二十年前にすぐ南のアザスティンと組んで、帝国の支援も受けてアルガンド王国に侵攻し敗北した。

 国内では二十年前の報復を掲げる『再戦派』とアルガンドと強調して国内を立て直すべきだと主張する『穏健派』で二分され、それぞれのトップに王位継承権者がいる。

 なにやらアルガンドとの戦いにおける切り札を手に入れたという話もあるらしい。

 次章の舞台。


〇ユグニア領

 王都の南、クロックスの西側にある公爵領。

 当然南側はキュペルということになるが、その手前にロンザス大山脈からのびる山脈が張り出していて、それが天然の防壁となっており、攻め込まれることはまずない。

 クロックス同様豊かな土地の恵みを活かした農耕が盛ん。


〇エルスベル

 遥か太古に存在したとされる伝説の存在。

 地名なのか国名なのか集団名なのか、はたまた個人名なのかは定かではない。

 法術という技術を確立したとされているが、一万年前に消滅。

 その後千年間、一切の記録がない時代があり、エルスベルの情報はほとんど存在しない。

 コウはこの大陸で使われている言語や文字も、このエルスベルからもたらされたと考えている。

 グラスベルク帝国はこのエルスベルの正当後継国家と名乗っている。


【その他】


天与法印(セルディックルナール)

 生まれながらに体に宿った法印のこと。

 数十万人に一人程度の割合でそういう存在がいる。理由は不明。

 宿る法印も様々だが、天与法印最大の特徴は、法印具ルナリヴァが不要であるのはもちろん、『認識』『充填』『構築』にかかる時間が段違いに短くなることにある。

 具体的には、天与法印に刻まれている文字ルーンだけで法術を構築する場合、その速度はコウのそれに匹敵するらしい。コウが異常に速い理由は不明だが。

 ただし天与法印に刻まれてる文字ルーンだけで構築できる場合に限る。

 よって、天与法印持ちであっても、たいていは普通の法印具の文字ルーンも合わせなければ有意な法術を構築することはできない。

 とはいえ、必要な文字数は減らせるのでやはり速くなる傾向はある。

 アクレットは現在確認されてる限りでは、アルガンド王国で唯一、天与法印のみで有意な攻撃法術を構築できる存在で、しかも第一基幹文字プライマリルーンである[火]と[光]を含んでいる。

 ちなみに天与法印を持つ場合は、体のどこかにその法印が浮き出ている。

 たいていは手や胸、あるいは額など。

 その部位を失うと天与法印も失う。

 まあ頭や胸を失うって命もないだろうけど。

 アクレットは胸に法印が浮き出ている。


〇名前の称号について(アルガンド王国の場合)

 そろそろ出揃ってきたので。

 アルガンド王国の貴族の名前の称号についてはそれぞれ定義がある。

 ちなみにアルガンド王国ではミドルネームは原則存在しない。

 (他国ではある)

 でも次の舞台はバーランド……(。。)


●ディ

 これは公爵位を持つ当主にのみつけられる称号。

 つまり『ディ』が着く名前を持つ人は七公爵の誰かになる。

 例:ラクティ・ネイハ・ディ・パリウス

   バルクハルト・トロイラ・ディ・クロックス

   アルスバート・エンバレス・ディ・ユグニア


●ミウ、キィ、ヴィ、ドゥ、ファイ

 ディと同じくそれぞれの爵位を持つ当主にのみつけられる称号。

 ただし、土地がない貴族、つまり一代限りに貴族の場合、名前と姓の間にその称号がつく。

 家名に爵位名がつくのはアルガンド王国ではこのパターンのみ。

 ミウが侯爵、キィが伯爵、ヴィが子爵、ドゥが男爵。ファイが騎士爵。

 准男爵はない。

 例:レンベルク・ミウ・ハルスヴァート(宰相・侯爵)

   オルスベール・コーカル・キィ・エンベルク(エンベルク伯爵)


●ギオ

 亡命貴族につけられる称号。

 ギオに続いて爵位を示す称号、それから姓と続く。

 フルネームを名乗ると絶対亡命貴族だと分かるようになっている。

 正式に爵位を授かった場合は名前を変えるケースが多い。

 作中出てきてないけどこんな感じ。

 例:アルバート・ギオ・ミウ・エーヴァティン(エーヴァティン亡命侯爵)

   ランディル・アンドロス・ギオ・ヴィ・コーデル(コーデル亡命子爵)


●エル

 これは王族だけにつけられる称号で、名と姓の間に入る。

 ちなみに王族待遇にもつけられる称号なので、たとえば王族の婚約者となって王家の一員になる予定の人にもつけられる。

 例:ハインリヒ・エル・アルガンディア

   キールゲン・エル・アルガンディア

   ステファニー・エル・クラスティ(婚約発表後、結婚後は姓は変わる)


●ヴェン

 国王だけにつけられる称号。

 つまり絶対一人だけ。同じく名と姓の間に入る。

 例:ルヴァイン・ヴェン・アルガンディア


●ニア

 国王の正妃にだけつけられる称号。

 同じく名と姓の間に入る。

 ちなみにアルガンド王国は一夫一妻制なのでこの称号も一人だけ。

 例:ラテリア・ニア・アルガンディア


〇時間について

 やっと出て来た時間の概念。

 基本的に一日二十四時間で、一時間(イール)は二十四(カルン)という単位で分割される。

 これは神から与えられたとされる『時計』がそのようにして時を刻んだためである。

 研究用でカルンより小さい単位は存在はするが、一般ではまず使わない。

 ちなみにこの世界の時計は、円柱に大きさの違う二つの円盤が水平にくっついているデザインで、小さい円盤が二十四回動いて一回転すると、下の大きな円盤が一回動く。つまり小さい方が刻を表し一時間で一回転、大きな方は二十四時間で一回転。それで一日となる。

 ちなみにコウが観測した限り、一(カルン)は地球の時間と同じなら百五十秒であるはずだが、正確に数えられたわけではないが五秒ほど多いと思われる。

 計算すると、この世界の二十四時間は地球の時間だと二十五時間くらいになりそうとのこと。


〇法術の利点と欠点

 超便利な法術。

 文字ルーンの組み合わせ次第で様々な効果を発揮し、かつそれを付与した法術具クリプトは、この世界では欠かせない便利道具。

 帆船では任意の風を起こす法術具もあったりととても便利に思えるし、実際便利ではある。

 燃料を使う内燃機関だと二酸化炭素とか出して環境破壊が問題になるのに、その問題もない超クリーンエネルギーでとても便利すぎると思えるが……。

 とはいえ万能とはいいがたいのは事実で。

 地球の科学技術の方がはるかに優れてる点も多々ある。

 一番の違いは最大出力とその出力の安定性。

 法術具の出力は蓄積された魔力にほぼ依存する。

 そしてこの魔力は基本的に法術を付与したタイミングでのみ補充される。

 あとは減り続ける。

 そして当然だが高い出力を出そうとすると、魔力の消費は激しくなる。

 さらに魔力を大量に蓄積するためには、巨大な魔石を使うか、または貴重な宝石を必要とする。

 そのため、必要な時以外は出力を抑え気味にするのが基本。

 例えば帆船に使われている起風宝珠と呼ばれる法術具クリプトは、船の大きさに合わせて装備されるが、だいたい効果時間は一年程度。ただし出せる速度は自然の風の半分程度。

 例えば地球のエンジンレベルの速度を出すようにしてしまうと、だいたい半月程度で魔力が尽きてしまうが、これの再充填は非常にお金がかかるので、誰もそんなことはしない。

 もう一つの難点が、そもそも法術を使える人が偏っていること。

 つまり生産性が悪い。

 上記の起風宝珠を作れるのは、実はアルガンド王国内でも作れる法術ギルドは限られる。むしろ作れる文字ルーンに適性がある人の引き抜き合戦が普通に行われるほど。

 当然再充填についても同じ。

 つまり、高い出力を出そうとするとすぐ魔力が切れる上に、そもそも簡単に再充填してもらえるとも限らないので、法術具というのは基本ちまちま使うものなのである。

 照明の法術具が高い理由もこの辺。

 水質浄化や汚水処理は使える術者が比較的多いため、一般化している。

 というのは、海妖精ネレウス河湖妖精リヴィニウはほぼ全員が当該法術を使える。人間も比較的使い手は多い。

 陸上の移動手段は未だに馬車などが主流。

 法術具による動力開発が行き詰まってるのは解説資料04の通り。

 無論、法術と科学技術の組み合わせで、現代より効率が良く、環境問題の少ない動力などの開発は可能ではある……が。

 そういう科学技術はこの世界はでは未発達で、この点に関しての技術レベルはある意味見た目通り。

 分野によっては法術に頼っているため、ほとんど発達してない分野もある。

 最たるものが薬学系などの化学分野。

 なまじ法術で何とかなってしまうので、そのあたりの研究は昔からほとんど行われていない。この世界においては『薬』というのは法術士に頼んで何とかしてもらうまでの『つなぎ』程度の意味しかない。薬草師というのは一応いて、辺境では頼りにされるが都市部にはほとんどいない。

 化学系の研究もされてないので火薬なども存在しない。

 金属加工技術はやたら(洞妖精ドワーフ山岳妖精ドゥスティルのおかげで)発達してるが基本法術ありき。

 言い換えると、なまじ法術が万能すぎるため、それ以外の技術の進歩はかなり押さえられてしまっているのがこの世界である。

 例外は建築関連。これだけは地球同様文明レベル相当(むしろ古代ローマ衰退後の技術遺失などが起きてない分より高度)かそれ以上に発達している。

 また、一部加工は法術を用いているため、より高度な建築も可能。

 ちなみに魔幻兵に用いられていた魔力吸収による無限動作機能は、法術具には応用できない。

 あれはいわゆる『無属性』の魔力を補充するもので、法術具はすでに効果を付与された魔力でなければ意味がない。なので魔力供給にによる無限駆動は不可能である。

 一応、法術符という技術でいざという時に『魔力供給』することはできるのだが。


法術符(クリフィス)

 アクレットが最後にコウに渡してた符。

 特別な加工を施されたもので、魔絹スルファが編み込まれた特別なもの。

 法術を『構築』まで終わった状態で込めておくことができるもので、最大の利点はその法術に使われている文字ルーンに適性がなくても使えること。

 ただし籠めることができる法術の効果には上限がある。

 アクレットが渡したのはやや特別性だが。

 なお、ごくまれに古代遺跡などで極めて効果の高い法術符が見つかることがある。

 それらについては現状製造方法が失われている。


〇転移門について

 作中あまりちゃんとした説明してなかったのと、舞台がアルガンドから変わってしまうのでここで捕捉。

 転移門は各公爵領都と王都を直接結ぶ大規模法術装置だが、その利用は滅多にされない。ちなみに今回ラクティやアクレットが王都に来ているが、ラクティは普通に陸路で来ている。

 アクレットは緊急事態だったため転移門を利用してきたが。

 なのでラクティは二週間くらいかけて王都に来てるし、また二週間ほどかけて帰るし、アクレットも帰りはラクティと一緒に戻る。

 なんで転移門を使わないかというと、ものすごくものすごーくお金がかかるから。

 一度起動すると、金貨二百枚、日本円にして四億円くらい吹っ飛ぶ。

 なので基本、それ以上に費用が掛かる行為(軍隊の移動等)でしか普通は使わない。

 ちなみにこの転移。アクレットはもちろん、コウでも再現はさすがにできない。

 というのは、現在では失われた文字ルーンが使われた法術具なのである。

 魔力の充填はそれが要らないので何とかなる(ただし充填に凄まじい資材が必要)

 コウは興味を持って一度調べてはいるが、本体は見せてはもらえなかった。

 研究資料を見た限りで、再現不可能と判断している。

 法術具クリプトという位置づけだが、実質は聖遺物、すなわち神々の作った道具であるとも云われている。実際いつ作られたのかは全く分かっていない。

 単に法術具と同じ理屈で動いてるので、法術具と呼ばれているだけ。


〇排魔の結界

 エルフィナが囚われている時にも使われ、今回も使われたこの結界。

 二度も出てきてはいるが、あまり一般的なものではない。

 主な用途は罪人を捕縛したり、法術での犯罪者対策が主。

 これも法術具クリプトの一種であり、設定された範囲内において体外への魔力マナの放出、および大気中の魔力マナを完全に消去する。

 そのため、法印具ルナリヴァに魔力を『充填』しようとする際に魔力が霧散してしまうため、法術が使えなくなる。

 なお、意思を持つマナである精霊メルムもこの結界の影響下では存在できない。

 きわめて強力な対法術結界と言えるが、自分達も一切使えなくなるので良し悪し。

 ただしこの結界で霧散させるのはあくまで純粋な魔力マナのみで、文字ルーンによって意味を与えられた魔力マナは対象外。当然発動済の法術などは無効化できない。そうでないとそもそも法術具すら一切使えなくなる(つまり排魔の結界自身が動かなくなる)

 なのであらかじめ法術を発動状態で封じておく法術符クリフィス法術具クリプトは使えなくなるわけではない。

 とはいえ法術を封じた場合の効果は大きい。

 なお、作中にもあったように体外に魔力を放出することなく『充填』が可能な天与法印のみで法術を使えるのであれば、問題なく使うことができる。

 結界の大きさは法術具の『数』と一つ辺りの出力に依存する。

 また、この法術具は複数で効果範囲を被せると効果が相乗され、その範囲が広がるという特性がある。

 エルフィナを捕らえていたあの部屋の法術具は実はかなり効果の小さいもので、部屋をカバーするだけでも四つ必要だった。

 学院祭を襲撃したあの男は、非常に効果の大きなものを、なんと実に三十個も用意していたらしい。

 事前に学院周辺にはせっせこ見つからないように置いて、学院祭の三日目までに残りを学院内に。

 使った法術具も直径十五センチ、高さ三十センチくらいの円筒状で、重さはなんと一つ十キログラムくらい(出力が大きいので重い)

 かなり大変だったと思われ、結構地道な努力をしてたらしい(ぉ

 というか襲撃時点でかなりへばってたのでは……。

 これでも、学院とほぼ隣接する王城エリアをカバーするのがやっと。

 調達も色々苦労したらしい。

 ちなみにこの事件以後、当該法術具の管理はアルガンド王国内では非常に厳しくなったのは言うまでもない。



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