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転移直後に竜殺し ―― 突然竜に襲われ始まる異世界。持ち物は一振りの日本刀  作者: 和泉将樹
第四章 王都の冒険者

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第69話 エルフィナの買い物

「あの、今日はどこに行くのでしょう?」


 エルフィナはやや困惑気味に街を歩いていた。

 一緒にいるのは、ステファニー、アイラ、リスティだ。

 今日は学院は定休日――基本的に理曜日が休み――であり、キールゲンは用事があって王宮に行っている。

 さすがに王宮内では護衛の必要はないので、コウもエルフィナも一時的に任務を解かれた形になっているのだ。


 普段であれば王都を歩き回るキールゲンに護衛としてついて回っていたが、何もすることがない休みとなるとどうするかなど考えてなかった。

 コウに聞いてみたら、古い伝承を図書館で調べてみるとのこと。

 それなら自分が知ってることでも、と言ったのだが、コウが知りたいのは森妖精エルフですら伝説の彼方にあるほどの、遥か昔のことらしい。

 さすがにエルフィナでも、そしておそらくは氏族の長老らでもそんな昔のことはほとんど知らない。


 それでも一緒に調べようかと考えたところに、一緒に街に行きましょう、と声をかけてきたのはステファニーだった。

 エルフィナとしては休日にすることもなく、コウに付き合って図書館に行くつもりだったのだが、そのコウがたまには女性同士で出かけるのもいいのでは、と言ったのもあり――というよりはそれでステファニーらが『よくわかってますね!』などと言って強引に約束させられた。


 結果、今に至る。


 エルフィナは(見た目が)同年代の女性との付き合いなどほとんど経験がなく、まして人間の、それも貴族や上流階級となるとどうすればいいのか分からなかったが、もう一ヶ月半も一緒に過ごしているだけあって、ステファニーやアイラとの付き合い方はさすがにわかってきた。


 ちなみにエルフィナへ告白する学生は、今はほぼいなくなっていた。

 さすがに十人ほど断られたのを見ると望みなしと思ったか。


 実は単にコウの優秀さがより知られるようになって、そしてほぼ常に二人が一緒にいるため、手を出せないと諦めた人が多いだけなのだが。


 時刻は九時過ぎ。

 朝食は寮の食堂で食べてきたが、お昼は食事を要らないと寮母に言っているのを見たので、お昼を越えて出かけるつもりだろうというのは分かるが。


「まず服ですね。エフィちゃんの服」

「はい?」


 ちなみに他の女生徒はそれぞれ自分たちの私服を着ているが、エルフィナが今着ている服は制服だ。

 一応学生の身だからと思って制服を着ていた――わけではなく。

 エルフィナの普段着はほとんど鎧の下に着るための服で、さすがに鎧を着て街を歩くわけにはいかない。

 かといって鎧を外すとあまりに飾り気がなく、元々でそれだけで外出するための服ではない。また、普段街に出るキールゲンの護衛についていくときは制服だったというのもある。ちなみに帯剣はしている。


「エフィ、制服と冒険者としての仕事着以外の服、持ってないでしょう」

「そ、そりゃあ……そもそも邪魔になりますし」


 コウもエルフィナもどこかに拠点を構えて活動する冒険者ではない。

 コウの都合次第だが、おそらく今の依頼が終わっても、まだしばらくは王都にいるだろう。だが、いずれは移動する。

 よって、手持ちの荷物は少ない方がいい。

 当然、余計な服など持つ余裕はない。


「ええ、それは承知していますが。でも、折角王都にいるんです。もうちょっとお洒落をしてもいいと思いますし、寮に置く分には荷物が増えても問題はございませんでしょう?」

「それは……そうですが、でもいずれ出て行くわけですし」

「その時はそのままお預かりしますから。というかですね。エフィにいろんな服を着てほしいっていう私たちの望みでもありますので」


 ステファニーのその言葉に、その場にいる女性陣全員が大きく頷く。


「あの、私は別にそんないろんな服を着たいとは……」


 そもそも森妖精エルフに『お洒落』という概念はほとんどない。

 森にいたら、一ヶ月以上同じ服を着ていることだって珍しくないくらいだ。

 基本的に余計な飾りなどがないローブの様な服のみ。戦いに赴く時だけはさすがに鎧をつけたりもするが、それも飾り気など皆無で、実用性重視である。

 鎧に氏族の紋様を刻んだりすることはあるが、その程度だ。

 なので見た目はみんなほとんど同じになる。


 だから、人間社会に出てきて、人間の服の多様性には驚いた。

 今から思うと、父や母はいつも少し氏族のみんなとは服が違った――エルフィナもだが――ので、やはり人間社会を経験してたのではないかと思う。


「エフィが着たいと思ってるかどうかは……ともかくですね。私たちが、色々な服を着たエフィを見てみたいんです」

「え、あの、私の意思は……?」

「服はもちろん私たちがプレゼントしますから、諦めてください」


 エルフィナに拒否権はなかったらしい。


「そ、そんなこと言われても……」

「その代わり、お昼は今王都で最近新しく出来た食事処を予約してあります。そちらももちろん、私たちからのささやかなお礼ですから」

「う」


 キールゲンが出かけるのについていく時も、よくお昼は外で食べる。

 キールゲンの見立ても確かなのだろうが、これがどれもとても美味しかった。

 ステファニーやアイラも学院に入ってからすでに五年ほどが経過しているという。

 つまりそれだけ王都には慣れているわけで、その彼女たちのおすすめとなれば、当然期待したくなってしまう。


「……わ、わかりました。でも、程々にしてください……」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「か、可愛い! ちょっとエルフィナさん、こっち向いてくださいっ」


 テンションの上がりまくったリスティの声が響いた。

 王都でも評判の被服店。それがいくつも店を連ねるエリアに、エルフィナ達は来ていた。

 ここはいわば王都でも最先端の流行の発信地。

 貴族から平民まで、この世界においては服に対する要求は非常にレベルが高い。

 優れた素材と縫製法術と呼ばれる技術の確立によって、非常に様々な日々服が生み出され、そして世の中に送り出されている。


 今エルフィナ達が来ているのは、どちらかというと平民向けの店だった。

 とはいえ、平民向けであろうとその品質は非常に高い。

 平民でも服に対する要求は高く、そしてそれを目にとめた貴族たちにも流行することは珍しくないのだ。平民向けだからといってその品質が悪いということは全くなく、むしろ貴族向けよりデザインは多様なくらいだ。


 今エルフィナが着せられているのは、夏の過ごしやすさを重視した服。

 上から下まで(ワン)一繋ぎの服(ピース)だが、よく見ると異なる生地をつなぎ合わせた服だ。

 上半身は袖がなく、また大きく胸元が開いているが、生地の伸縮性が高く、身体にフィットするようになっている。

 そしてスカート部分はふわりとした別の生地になっていて、ドレスの様でもあるが、生地の見た目も軽く、涼し気な印象を与える。

 実際上下とも生地の通気性は良くて、夏向けの服だ。

 ただ、エルフィナが着ると、特に上半身の破壊力がすごかった。


「あ、あの……その、こういう服は、ちょっと……」

「……これはヤバいですね。これで街歩いたら、十歩ごとに声かけられることは確実です」


 アイラの言葉に、全員が頷く。


「な、なんですかそれは……」

「ま、制服でも目立ってましたしね。エルフィナさんは街を見てて気づいてなかったっぽいですが」


 リスティの言葉に、エルフィナは首を傾げる。

 だが実際、エルフィナはそもそも妖精族フェリアが学院の制服を着ているというだけで目立つという自覚がない。

 これに関してはキールゲンらと一緒に外出している時も同じだが、むしろその場合こちらに注目する相手は要注意対象となるわけで、まさか自分が見られているとは思っていない。そもそも一緒に歩いているのが王子様だ。

 そして今日のように仕事抜きの場合は、普段あまり楽しんでない街の様子を見る方に、エルフィナは気を取られていたのである。


「とりあえず、次のお店に行きましょう。あ、店主さん。これ、あとで受け取りに来ますから」

「え、え? あの、買うとは……」

「さ、次です次」


 こうしてエルフィナは、午前中いっぱいステファニー達の着せ替え人形として連れまわされたのであった。


着せ替え人形エルフィナ(マテ)

考えてみたらエルフィナの買い物じゃなくないか、これ……タイトル詐欺か(ぉ

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