解説資料-03
というわけで三章終了時点の解説資料です。
同じ項目でも情報がアップデートされてます。
【登場人物】
〇コウ(神坂昴) 十八歳・男性
やっと過去が明らかになった現代日本からの転移者にして規格外(全文字適性)存在。
六歳の時、妹を殺した両親(義理)を殺害し『もっと早く殺しておくべきだった』と考えてしまい、三つ子ならぬ六つ子の魂百までという感じになっている。
過去のことから、力や立場の弱い人に害なす相手には欠片も容赦せず、必要なら殺害すら厭わない。
この世界における最強の存在と言っていいのがこんな危なっかしいのでいいのかと作者も思わなくないが。
日本にいた頃から剣術やら格闘技(それもスポーツ化されてない実戦的なもの)を学んでいたため、異世界でもその技術が大いに助けになっていた。
異世界に来たことで何か変わったことは(法術以外)ないという。
ただし死ににくいのでは、という推測だけはある。
ラクティに告白されるも、コウはラクティにかつての妹を重ねてしまっていたので、彼女の想いには応えられないとはっきりと断ってしまった。
実のところ超安泰な就職先だよなぁ(話終わるけど)
〇エルフィナ 百五十四歳・女性
コウと同レベルの規格外存在(全属性の精霊使い)の森妖精。
本人にあまり自覚がないが、容姿が整っているとされる森妖精の中でも特に際立って美しい容姿を持つ。
ラクティにコウのことが好きなはずだと言われて考えてしまうことになるが、今のところ明確な好意は自覚していない模様。
ただ、仲間としてはこの上なく信頼している。
時々コウが怖く感じることもあったが、その原因もわかったのでより信頼するようになった。
なお、ラクティに妹認定されている。
今回は大食いは鳴りを潜めていた……わけではなく、隠れ家でアルフィンが青い顔をしてた。内乱終結後のエンベルク領主館の料理長は大変だったらしい(笑)
なお、エルフィナの大食いは妖精族特有の環境適応能力の結果……かもしれない(真実は闇の中……)
〇ラクティ・ネイハ・ディ・パリウス 十四歳・女性
パリウス公爵たるネイハ家の当主。
叔父一家を全員処刑したため、事実上ネイハ家唯一の生き残りとなっている。
アウグストと彼の息子夫婦、娘、それに生まれたばかりの赤子を全て処刑……と見せかけて、ラクティもさすがに赤子だけは殺すのが忍びなかったで身元を伏せた上で里子に出している。
とはいえ、叔父はもちろん従兄姉(ラクティよりいずれも年上)まで容赦なく処刑するラクティの統治者としての側面を考えると空恐ろしい気がする。まあ従兄姉たちは親交がほぼなかったから、ラクティにとってはほぼ赤の他人だったが。
今章はラクティの本領発揮。
領主就任後、新部隊創設を含めたあらゆる手段で領内の情報を収集。叔父の元部下も泳がせた結果、エンベルクでの犯罪行為の存在を見抜き、自分の権力基盤を安定させるために徹底的に利用した。
十四歳とは思えない末恐ろしい少女である。
命の恩人でもあるコウのことがずっと好きで、争乱解決後に告白するも玉砕。
コウに妹とみられていることが分かり、彼を(プライベートでは)『お兄ちゃん』と呼ぶようになってしまう。あとエルフィナを妹にした(個人的主観)
〇メリナ・アルファイン 二十四歳・女性
今回後半出番なかったけど、基本的にラクティのそばに常に控えていた。
ラクティの突飛な行動に振り回されることが多い苦労人系侍女。
同時に、ラクティの並外れた優秀さを一番間近で見てきた人でもある。
そういえば彼女の外伝ネタがあるんだけどいつどうやってだそう……。
〇アルフィン 五十二歳・女性
半森妖精の冒険者。
かつての友人がエンベルクで死んだことを不信に思って調査したのが始まりだった。
地道に調査を重ね、ドパルを特定した立役者。
法術を得意としていたつもりだったが、規格外のコウの力に自信を失う。
もっと精進しようと誓って二人と別れた。
エルフィナとは違う感じの大人の魅力がある女性である。
〇オルスベール・コーカル・キィ・エンベルク 四十四歳・男性
エンベルク伯爵の地位にあった貴族。
パリウス第二の都市であるエンベルクを領地としているだけあって由緒正しい家柄だが、彼は奴隷売買で財を膨らませていた。
アウグストが領主代行になるよりも前から、彼の協力で上手く隠しおおせていたので、突然アウグストが失脚した際、一番慌てたのは彼である。
ラクティをただの小娘と侮って最終的に叛乱まで起こしたが、ある意味徹底的にラクティに利用され、結局一度も刃を交えることなく全てを失うことになった。
その後、処刑されている。
後継者として王都で勉強中の息子と他家に嫁いだ娘がいたが、娘は奴隷取引のことは知らなかったようで、御咎めなしとなった。
ただ息子が知らなかったはずはなく、投獄され、後に王都で処刑され、コーカル家は断絶した。
表向きには不正蓄財の咎を責められ挙兵し、敗北して死んだことになっている。
〇アウグスト・ネイハ 四十三歳・男性
第一章で捕縛されたラクティの叔父、元パリウス領主代行。
証拠こそないが、兄である前パリウス公爵を暗殺したことがほぼ確実とみられている。
エンベルクの奴隷取引の秘匿にずっと協力していた。
実は、兄(前領主)になかなか子が生まれなかったため、彼が継ぐ可能性は低くなかったのだが、ラクティが生まれたため彼が継承する可能性がなくなった。
そのあたりも兄を暗殺した理由になってるかもしれない。
ちなみに兄とは十歳以上離れている。
彼の子供は男女一人ずつだが、どちらもラクティより年上。
今章で全員処刑された。
あとすみません、解説資料01から年齢変更しました(三十八⇒四十三)
01も修正してます。
〇ハルバリア・ネイハ・ディ・パリウス 享年四十四歳・男性
作中一度も名前の出なかったラクティの亡き父。前パリウス公爵。
解説資料で初登場(笑)
アルガンド王国の貴族を体現してるとまで言われたほどの人物で、領民の人気も非常に高い領主だった。ラクティが比較的すんなり受け入れられたのは、彼の娘だからというのもある。
なかなか子が生まれず、四十歳になってやっと生まれたが、その時の妻の年齢は三十八歳。この世界においてその年齢の出産は文字通り命がけで、妻は産後の肥立ちが悪かったところに、流行り病に罹って死んでいる。最後まで娘を案じていた。
十以上年下の弟アウグストが奴隷取引に関わっていたことを知り激怒。
弟の地位の剥奪する手続きのために転移門へ移動中、馬車の事故で死亡する。その事故はアウグストが仕掛けたものだったと推測される。
〇オットー・クレメンス 四十一歳・男性
元はアルガンド王国の下級貴族だが、元々(半非合法の)奴隷交易によって財を成していた家だったため、十年前の奴隷制度廃止令に伴い、財産を失った挙句、領地を手放し貴族ですらなくなってしまう。
良くも悪くも奴隷の扱いに長けた一族で、その能力に目を付けたオルスベールによってドパルを預けられていた。
しかし今回の争乱で捕縛され、オルスベールと同じく処刑される。
〇マラユ・ケンバレスト 四十七歳・男性
[炎]と[衝撃]の第二基幹文字に適性があり、『業炎のマラユ』の二つ名で知られる法術士。法術ランクは黒と極めて高い。
元は下級貴族の出身だったが高い法術の才能を見出され、法術ギルドで頭角を現す。しかしその後、法術によって人を害することに喜びを覚えるようになり、以後傭兵として各地を渡り歩く中で『狂人』とも云われるほどになる。
奴隷を使って法術実験を繰り返すなど、その倫理観はこの世界の基準からしても壊れていた。
コウと対峙して、一瞬で『消滅』させられた。
〇ハインリヒ・エル・アルガンディア 三十四歳・男性
現アルガンド国王の実の弟。
王国元帥の地位にあり、現時点の第一王位継承権者でもある。
武に優れ、二十年前の戦争ではまだ十四歳だったにも関わらず多大な武勲を上げている。
コウですら白兵戦では勝てないと思わされる。
気さくな人柄ですぐ人と仲良くなるようだが、その一方で非常に鋭い洞察力を併せ持つ、ある意味油断ならない人物でもある。
〇グラッツ・フェルバーク 五十七歳・男性
エンベルクの冒険者ギルドのギルド長。
鍛え上げられた肉体を持ち、現役の頃は巨大な剣をふるう『巨剣のグラッツ』という異名を持っていた……が。
そのなりで意外なほど繊細な法術を使う技巧派だったという噂。
今でも時々現場に出てるらしい。
年齢考えろよ(笑)
【地名】
〇アルガンド王国
目上の者だろうが正面からぶつかって勝てればその地位を奪っていい、というあまりにも男前な国是が明らかになった王国。
ホントに大丈夫かよこの国、と作者も思う。
しかしそれゆえに、逆に宮中暗闘とかそういうドロドロしたものと無縁になり、結果として国政が混乱しにくくなっている。ただこの国是の都合で、たまに大きな叛乱が起きてたのだが、ここ百年くらいはそれもなかったらしい。
エンベルクの乱は久しぶりである。
また、王都と各領都を結ぶ特殊法術装置『転移門』があることが明らかに。
ちなみにこれは両方が許可しないと開くことはない。
〇エンベルク
パリウスの領都から西(厳密にはやや南寄り)に百キロほどの距離にある、パリウス第二の都市。
大きなすり鉢状の盆地にある街で、周囲は高い山々に囲まれている。その周辺の山は鉱物資源が豊富で、パリウスの重要な産業の一つ。
人口は七万人ほどとされてるが、実際には十万人近い。
その特性上、鍛冶関連の技術者が多く、作中出てこなかったけど洞妖精もたくさんいた。
エンベルクを治める領主は伯爵位を授かり、コーカル家が代々その地位にあったが、叛乱を起こしたため一族は処刑され、現在はパリウス公爵預かりとなっている。
〇ドパル
エンベルクから歩いて一日(約二十キロ)程度の距離にある、元は鉱夫らが一時的に休むための村だった。
高い山に囲まれ、入り口は切り立った山肌にある道のみという非常に不便な場所だが、その構造故魔獣に襲われにくいという利点があった。
ただオルスベールにとっては、外からは街が全く見えず、忍び込むのが困難と奴隷市場としては理想的な立地だったらしい。
コウとエルフィナによって壊滅させられた。
その特異な地形を活かして何かできないとラクティが考えているっぽい。
【その他】
〇軍の規模
この世界の軍の規模は状況によって様々。
今回の領主側が三千と予測されてるけど、これは作中にある通り一度解体したからこの数なだけで、本来は領主軍は最大で二万程度は用意できる。
実際南部のクロックスは、常備軍だけで一万、予備役を含めると最大四万まで動員可能。
これに対して公爵以下の領主は、第二都市エンベルクでもその数は通常最大五千程度であり、いかに領主に逆らうのが難しいかというのがこれでもわかる。
もっとも傭兵を雇い入れれば何とかなるのと、複数の領地で手を組めばまた話は変わる。今回の場合はその方法は完全に封殺されていたが。
〇コウの法術名について
コウは基本的に『発動』に必要な音声が日本語でも何でもいいと分かってからは、意図して日本語や英語を使ってる。
最大の理由は相手に術の内容の想像が(発動に使った文字は見えるのである程度は推測されるとしても)できないからと、自分的には分かりやすいから。
なのでカタカナで書いているのは、ホントにそう言ってるので、この世界の人からしたら意味不明の単語である。
ちなみに例の犯罪捜査に使われることになった魔力探査法術。
あれの名前はそのまま使われてしまったため、この世界の人は意味が分からずにその名前を唱えることに……。
まあ『マナ』という単語は同じなのでなんとなくで使われているかと。
ちなみに法術名の漢字はコウが込めた意味、ルビが実際の発音。
〇半妖精族
人間と妖精族の間に生まれた存在。
親が森妖精の場合はディルエルフと発音される。
別に迫害されていたりはしない。
妖精族は妖精族同士であれば種族が違ってもその子供は両親どちらかの種族になるが、人間と交わって生まれた場合だけ、その妖精族の特性を一部引き継ぐ別の種族となる。
なお、半妖精族の子は、相手の種族が人間でも妖精族でも半妖精族でも人間になる。
正確には、ディルという言葉は『近しい者』という意味があるので厳密に漢字をあてるなら『半』ではなく例えば『妖精族に近い者』とか『妖精族に似た者』のが正しいが、そこは《意思接続》がそういう認識にしてしまったという事で。
なお、引き継ぐ特性は個人毎に様々。
確実に引き継がれる特徴は妖精族特有の長い耳のみで、滅多にないが親が森妖精でも寿命が人間並であることもある。
〇奴隷
基本的には、地球における奴隷とほぼ同義。
ただしこの世界では、現在では奴隷制度自体がほぼ廃止に向かっていて、ほとんどの国では奴隷の保有は認められていない。
アルガンド王国でも十年前に全面禁止になった。
元々アルガンド王国では犯罪奴隷とされる、刑罰で一定期間奴隷身分に落とされる以外の奴隷はあまり運用されていなかった。これは、アルガンド王国が『己の才覚で正々堂々とのし上がる』ということを歓迎するという気質であることにも由来する。
犯罪奴隷の制度自体はアルガンド王国以外では今でも残っている国は多いが、それ以外の奴隷を扱うことは、すでにほとんどの国で(キュペルすら)犯罪と認識される。
実際、不倶戴天の敵と言っていいアルガンドとキュペルが、五年前に奴隷商人の一斉摘発で協力したこともある。
今回の事件でアルガンド王国内における奴隷密売のネットワークは壊滅的な打撃を受け、大陸東部においてはほぼ一掃されたと言っていい。
地球における奴隷がほぼ黒人だったのに対して、この世界の奴隷は人種的な偏りはなく、別に奴隷であることを示す焼き印や入れ墨がされたりとかもないので、制度廃止後に少なくともアルガンド王国内ではあまり差別は残っていない。
奴隷制度が廃れていった理由については後にネタにするかもしれないのでここでは割愛。
〇法術による連絡手段について
結構あっさりと即時連絡が出来ているような演出がされてるこの話だが、実際、法術を利用しての通信というのは貴族以上ではよく使われる。
ただし法術による通信技術は、現代の携帯電話や無線通信ほど万能ではない。
まず、基本的に法術ギルド、および冒険者ギルドや一部の国の機関はそれぞれの支部や役所に特別な通信法術具を備えている。
これにより、どんな離れた距離だろうが連絡が可能。ちなみに法術ギルドのそれは一般人でもお金を払えば利用可能で、法術ギルドがある街同士の場合、それで伝言をするサービスなどもある。これは他国の法術ギルドでも通信可能だが、その場合相互に許可が必要なので敵国などは基本的に無理。
ただ、この通信法術具はかなり大きくて持ち運びには向いてない。
そしてこれは音声を伝える仕組みではなく、文字を伝える仕組み、地球で言えば電報に近いもの(文字数で利用料金が決まる)
そして、この通信法術具の『子機』のようなものがあって、これは非常に小さく持ち運びが可能。ただし、それはいわゆる『親機』としか通信ができない。
つまり、移動する軍隊で本陣と楽に連絡を取り合う手段とかには利用できない。
まあ子機二つ使ってやり取りは可能だが、子機を作れる数は制限もあるためあまり行われない。
そして、音声を伝える通信法術も存在はするが、より限定的となる。
これは、先の『子機』の機能を法術で増幅することにより、親機と音声での通話が可能になるもの。
したがって、当然親機としか話せないし、そもそも当該の法術を使える人じゃないと利用できない。まあこれは法術符というものを使えばある程度何とかなるが。
また、通話可能距離は非常に短く、通常の文字だけの通信であれば親機と子機の距離がおよそ二千キロが最大とされるが、音声の場合はその距離は百分の一程度まで落ちる。
41話でコウ達とグラッツが話してたのはこの法術。
ラクティとのやり取りは、最初はパリウスの冒険者ギルドからエンベルク冒険者ギルド経由で連絡を受け、後にパリウス公爵邸の子機を届けられた。
なお、神殿は全く別に、奇跡の力を利用したネットワークを構築している。
こちらについては登場したら、またその時に(いつだろ)
ちなみに最近は、子機を作れない通信法術具が安価で作れるようになっており、広がってきている。
有効通信距離もやや短いが、それでも五百キロほどあり、民間でのサービスなどにも利用され始めている。
ただし通信可能な対象を増やすには、お互いの法術具の端末を相互にはめ込む必要がある。つまり一回は直接その端末をお互いに運ぶ必要がある。
この端末の数は法術具の価格によって異なる。
大商人などが使い始めている。
〇お金について
本作あまり出てこないのでスルーしてたお金について。
基本的に紙幣はない。
ただし、所謂『手形』というのは当然存在する。
貨幣それ自体は以下の種類がある。
なお、各硬貨は材料と重さのみが規定されていて、それ自体は大陸共通。
これらの仕様は神殿が定めている。
交換レートは若干変動するが、変動幅は大分小さい。
・銅貨
銅の合金で作られた貨幣。
これと次の白銅貨だけは大きさと形も大陸全体で定められている。
刻印等は自由だが。
銅貨一枚で日本円だと大体三百円位の価値。
見た目とサイズは十円玉だと思って問題ない。
これ以下はない。
・白銅貨
銅と別の金属(地球だとニッケルだが多分違う)の合金で作られた貨幣。
価値がかなり高く、白銅貨一枚で銅貨十枚と等価である。
つまり日本円だとおよそ三千円くらい。
大きさは日本の五百円玉くらい。
一般的に使われる貨幣はこの位まで。
・銀貨
銀で作られた貨幣。
銀貨一枚で白銅貨三十枚ほどと等価。
交換レートはやや変動する。
つまり日本円だと十万円程度。
ちなみに銀貨はかなりでかくて掌より少し小さいくらいの大きさ。
ついでに円形とは限らず、結構自由な形をしてることも多い。
国王即位の記念などに発行されることもある。
でかいため、国によって『小銀貨』というものを発行してることもある。
国によるが重さで価値が決まり、一万円~三万円程度。
この程度ならたまに一般人でも使う。
・金貨
一般人がまず目にすることがない貨幣。
金貨一枚で銀貨二十枚ほどに相当する。
日本円の価値だとなんと二百万円近い。
日本でいえば五円玉より少し小さいくらいの大きさ。
・聖貨
ファリウス聖教国でのみ発行されている特殊貨幣。
虹鉱という金属で作られている。
日本の硬貨でいえば一円玉よりさらに小さく薄いが、見た目よりはやや重い。
だがその価値はなんと一枚で金貨百枚に相当する(つまり二億円くらい)
戦争の賠償金とかで使われることがある。
なくしたら大騒ぎ(笑)
〇銀行的な存在について
いかんせん貨幣というのは重くてかさばる。
特に冒険者はお金を持ち歩く場合は最小限にする必要がある。
そのため、冒険者ギルドが現代の銀行の様に金を預かる仕組みがある。
ただし利息は付かない。
ギルドの場合支部同士で情報を共有できるので、どこからでも引き出せるというメリットがあり、かつてはこの機能を使いたいがために冒険者を目指す商人がいることすらあった(かなり険しい道だが)
ただ最近は通信法術具が発達したのもあって、銀行的なサービスが始まっており、一般人でも使うことができるようになってきたが、まだ国を越えた制度になっていないのが難点(冒険者ギルドは大陸全土に及ぶ)
ちなみにコウもお金は冒険者ギルドに預けている。
なお、金を『貸す』仕組み、つまりいわゆる融資を行う制度も存在し、そちらは結構色々ある。ただしこちらは金を『預かる』仕組みはない。
そのうちこの辺りがくっついて『銀行』が出来上がるだろうけど、まだそこまでには至ってない。
ただ、個人がパトロンになるのを仲介する仕組みはあるので、そのうち融資を仲介する仕組みとかは出てくるかも。
ちなみに、手形を発行する権限は神殿だけが持っている。
〇貴金属類について
金や銀といった貴金属はこの世界では地球より価値が高い。
金は地球の金の百倍~百五十倍ほど(日本円だと一グラム百万円以上)
銀は地球の十五倍~二十倍ほど(日本円だと一グラム千円以上)
これらの価値は基本的に統一されている。というのは、金と銀は産出される場所が極めて限られているため、その流量がコントロールしやすいためである。
ちなみにことごとく神殿が所持している。
基本的に貨幣として使われることが多いが、無論装飾品も存在はする。
ちなみに貨幣は銅貨も含めて全て発行の際に保護のための法術が付与されているので、ぶっちゃけ偽造しても結構簡単にばれる。
当該法術を使える人間は『全て』管理されており、特殊な文字を使うため、そのための法印具も厳重に管理されている。
実はこの法術に必要な文字だけは、コウの持つ法印具にすら刻まれていない。
ちなみに指定された金属の含有量を減らしたりすると、そもそもその保護法術をかける時に分かるようになってるので、原則この世界に粗悪品の貨幣は存在しない。
貨幣の真贋を見極める法術とかもあって、大きな取引の場ではそういう人を立会人にするのが普通。
余談だが、宝石は地球同様価値が高く、通貨より軽いため冒険者などもお金代わりに持ち歩くこともある。
宝飾品にも使われることが多い。
なお、この世界の宝石は『全て』魔石としての機能を持っているため(魔石それ自体は本来価値の低い石)、法印具にしている人もいる(小さな宝石でも通常の魔石よりたくさん法印が刻める)
ちなみに白金は存在しない。
代わりに金よりもさらに価値がある貴金属として、虹鉱という虹色の煌きを放つ金属がある。その価値は同量の金の千倍ほど。産出されるのは大陸最西端にあるファリウス聖教国のみでしかも少量。
ちなみに法術の媒体としても非常に優れた金属で、加工次第では非常に硬く粘り強くもなる金属でもあり、武器にしても優秀……だが、言うまでもなく高価とかいうレベルでは済まない。
帝国の帝位を示す短剣がこれだという噂。
これで作られた宝飾品の価値はすさまじい。
つまり貴金属は銀⇒(千倍)⇒金⇒(千倍)⇒虹鉱という感じになっている。
が、銀ですら地球よりずっと価値が高い。
〇霊鋼
エルフィナの武器である細刃に使われてる素材。
鋳造方法は基本的に鉄と同じなのだが、魔石を粉状にしたものを混ぜ込んで作る。
本来の強度は鉄よりもやや脆いのだが、法術による付与が通常の鉄よりもはるかにかけやすく、また強くかかるのが特徴である。
そのため、強化法術とセットで使われるのが基本で、その強度は通常の鉄の武器とは比較にならず、また、軽量化もかければ重さも三分の一程度と、地球で言えばアルミニウム並の軽さにできる。自己再生機能などを付与することもできる。
魔力を這わせることによって強度をさらに強化できる上、法術による武器強化の術を上乗せすることもできて、その効果も通常の倍ほどあるとされる。
いいことづくめの素材だが欠点もある。
単純にものすごく高い。
品質にもよるが、小さなナイフでも銀貨五枚以上。大剣などだと金貨一枚以上はする。実際にはこれに法術付与の値段が上乗せされるので、その価値は小さなナイフなどでも金貨一枚近く。武器のサイズや法術付与の内容次第では、家が買える値段になる。
ちなみに魔石ではなく宝石を細かく砕いたものを混ぜて作った霊鋼もあって、値段は(混ぜる宝石によって変動はあるが)さらに跳ねるが、その効果は普通の魔石粉を混ぜた霊鋼よりも大幅に上がる。
ちなみにエルフィナの持つ細刃は実はこれ。買おうと思ったら金貨五十枚は必要な武器である。エルフィナもその価値は知らない……。
なお、霊鋼を作るためにはある法術が必要なのだが、その法術の使い手がほとんど洞妖精のため、この素材は洞妖精にしか作れないと思われていることが多い。
ちなみに最もトチ狂った素材として、鉄ではなく虹鉱を使った霊鋼というのがあるらしい。誰だそんなアホなもん作ったの。当然だが混ぜたのも魔石ではなく貴重な宝石だったらしい。ある種伝説の素材である。噂だけで実在するか不明。
というわけで第三章終了。
当初の予定ではここがキリがいいので継続するかどうするか判断しようかと思ってましたが、さいとう みさき様の描いてくれたイラストが次章に大量にあるので4章までは続けます(笑)
といっても、次は間章ですが。




