解説資料-02
というわけで二章終了時点の解説資料です。
同じ項目でも情報がアップデートされてます。
今回は解説系が多いのでちょっと長いですが、読まなくてもあまり問題ないです。
【登場人物】
〇コウ(神坂昴) 十八歳・男性
法術の適性を調べたら、前代未聞の全文字適性という規格外の存在と判明した日本からの転移者。
日本刀を用いた剣術が主体で、冒険者としては最初からほぼ一流とみなされるほどのランクが付与される。
基本的にソロ活動をしていたが、今章の最後でエルフィナという森妖精とコンビを組むことに。
さらに第一基幹文字を刻んだ法印具を手に入れてしまったので、文字通りこの世界における最強の法術士となってしまった。
異世界出身のため、自分の能力の異常性をイマイチ理解していない。
知ってて当然の常識も当然だけどほとんどないので、世間知らずのはずの森妖精にすらツッコミを受ける。
今回の仕事ではあまり容赦のない面は出なかった……かも?
〇エルフィナ 百五十四歳・女性
森妖精の少女。
森妖精の中では変わり者で、外の世界(主に食事)に興味を持って森を出て来たところを捕まってキュペル軍に利用されてしまった。
ティターナの森、クレスエンテライテの氏族の出身。位置的にはキュペルよりさらに南の地域。
年齢がぶっ飛んでいるが人間換算だと十五歳くらい。
コウですら一瞬見惚れるほどの美少女である。
森妖精としては非常に珍しく文字に全く適性がないが、代わりに第一基幹文字の使い手と同じくらい稀少な精霊使い。
しかもあろうことか、全属性を使役できるというコウと同レベルの規格外の存在。
冒険者となってコウとコンビを組むことに。
痩せの大食いだがいつもたくさん食べるわけではない。
じゃないと移動時の荷物が全部食料になる……。
〇アクレット・ラディス 四十三歳・男性
パリウス法術ギルドのギルド長とパリウス冒険者ギルドのギルド長を務める人物。コウの異常ともいえる能力を知る人物の一人。
国に属する法術ギルドと国を越えた枠組みを持つ冒険者ギルドという相反する二つのギルドの長をやってる時点で普通ではない。
かつては《灼光》のアクレットとも呼ばれ、第一基幹文字のうち[火][光][理]の三つの適性を持つアルガンド王国最強の法術士として知られる。
あまりにも有名なため、人間社会との関係が希薄な妖精族ですら、彼の名を知らぬ者はほぼいないレベル。彼のことを知らないコウが遊ばれたのは無理もない(笑)
二十年ほど前、ある戦争で凄まじい戦果を挙げ、アクレットがその地域から離れることを条件に相手が兵を退いたという逸話がある。
クロックスの防御の要の一つ法術砲は彼の発明品。
色々と規格外の存在だがコウというさらなる規格外のおかげで少し影が薄いかも?
彼の師はさらに規格外で、もはや生ける伝説。知らぬ者は大陸にいないレベル。
四人の子がいたが、末子は今回の事件でキュペルによって暗殺された。
〇バルクハルト・トロイラ・ディ・クロックス 二十八歳・男性
クロックス公爵であるトロイラ家の当主。既婚。
常にキュペルと戦う最前線にありながらその侵攻を完璧に防いでいる一方、クロックス全体を栄えさせている、非常に有能な為政者。第二基幹文字を複数使いこなす優秀な法術士でもある。
一方でアルガンド王国の貴族らしく、とても気さく。
ただ、キュペルの陰謀で次々と身の回りの人が殺されていたのにはかなり心を痛めていた。
〇ラクティ・ネイハ・ディ・パリウス 十四歳・女性
パリウス公爵であるネイハ家の当主。
今章ではコウが出発するのを見送っただけだが、何気に彼女はものすごく仕事をしている。
本領発揮は次章。
〇コズベルト・フェルナーク 二十九歳・男性
キュペル王国特務部隊の士官。
エルフィナを盾に精霊を従わせて暗殺を実行していた実行犯。
彼が選ばれたのは、精霊語を話せたからで、実はとても貴重な人材だった。
コウにのど輪落としで気絶させられ、捕縛された。
後に処刑される。
〇ホランド・エブルグ 二十八歳・男性
キュペル王国の北方方面軍第四大隊の隊長。
三百人の部下を持ち、主に破壊工作などを得意としていた優秀な軍人。
今回偶然捕らえたエルフィナを利用してのクロックス攻略の指揮を取っていたのは彼だったが、コウによって捕縛され、クロックスで尋問を受けた。
その後コズベルトと共に処刑される。
〇ラフト 二十一歳・男性
パリウスで活動する冒険者。
槍を得物とし、法術による身体強化を併用する魔法戦士。
ケイン、アスティナという二人の仲間とチームを組んでいて、コウの力に目を留めて誘ってくる。
今回の出番はほとんどなし。今回は顔見せです。
ちなみに近:紫、遠:緑、法:青、探:青とかなり優秀。
【地名】
〇クロックス公爵領
アルガンド王国の南東部地域を領地とするクロックス公爵の支配地域。
パリウスからクロックスの都までは馬車で十日(距離にしておよそ千二百メルテ)ほど離れている。
広大なカントラント河を挟んでキュペル王国と対峙する最前線でもある。
領都クロックスはその河沿いにあって『カントラントの河壁』と呼ばれる長大な城壁とその城壁に設置された法術砲によって現在は鉄壁と言える守りとなっている。
商業も非常に盛んで、パリウスより賑やか。
領都の人口は約十五万人。
〇キュペル王国
カントラント河の南にある国。三十年ほど前に誕生した新国家。
現在の国王は建国王の息子。建国王は以前この地域にあった国の軍人でクーデターを起こして新国家を樹立、自ら国王に即位した。
カントラント河は北側が肥沃な大地で南側は砂漠という極端な地形であり、キュペル王国はカントラント河の北に領土を広げるのを悲願としている。
ちなみに東は海に面しているが風の都合で塩害がひどくて人は住めない。
南は広大な熱帯雨林が拡がっていて、やはり人は住めない。
可住領域は砂漠の西側から山岳地帯に入るあたりまでの狭い地域である。
元々大陸南東部は自然環境があまりに厳しく、自然と共生する妖精族以外は住めないとされている場所で、彼らも南部の森や高山帯にしか住んでおらず、他の地域は流刑地とされていたとも伝えられている。
〇カントラント河
アルガンド王国の南の国境でもある大河。
海にそそぐ河口ではその幅は十メルテにも達する。
常に南から風が吹いていて、この風が水気を河の北側に運んでくれるため、カントラント河の北側は非常に肥沃な大地になる。
【その他】
〇法術
文字を組み合わせて発動させる、この世界における魔法。
基本的に法印(正式には魔法紋様印章)と呼ばれる文字を組み合わせたデザインを魔石または魔絹と呼ばれるものに刻んだ法印具を用いて使う。
法術の発動の仕方は以下。
1.法印具に刻まれた法印の中から必要な文字を『認識』する。
2.認識した文字に魔力を『充填』する。
3.文字の形になった魔力を取り出し、並べ替えて術として『構築』する。
4.キーワード(法術名ともいう)を発声して法術として『発動』させる。
基本はこの『認識』『充填』『構築』『発動』の四プロセスで法術が効果を現す。
法術は使用する文字によって様々な効果を発揮する。
当然だが装備している法印具に刻まれている文字しか使うことができない。
しかし装備する法印の数を増やす(=文字の数を増やす)とそれだけ『認識』が難しくなる。また効果を上げるために必要な文字を増やしてもやはり『認識』が大変になる。
当然文字の数が増えればその分『充填』にも時間がかかるし『構築』も難しくなる。かといって文字を減らせば発動できる術は効果が小さかったり単純になったりする。
この辺りのバランスを取りながら上手く使い分けるのが一流の法術士。
また複数の文字を組み合わせた複合文字というのを用いることで文字数を減らしたりと工夫もされている。
ちなみに第三プロセスである『構築』時点で、取り出した文字が光り輝いて主に術者の前面に展開されるため、この時点で発動させようとする法術を推測することもできる。
この文字には相性ともいえる適性が個人毎に存在し、個人毎に扱える文字は異なる。
特に、第一基幹文字と呼ばれる七文字(火地風水光闇理)は、たとえ一つでもその適性は数百万人から数千万人に一人という稀少存在。
これを七つ全部使えるコウの異常さは推して知るべしである。
それに続く文字である第二基幹文字の適性は文字によるが、数百人から数万人に一人。これを複数使えるだけでもかなり破格の存在である。
ちなみに『発動』の際のキーワードは本人が意味が分かればいいので、日本語や英語、挙句にゲームの呪文でも問題はないらしい。
なのでコウは基本的に英語や日本語を使っている(その方が相手に法術の内容を推測されないのと自分でもわかりやすいため)
なお、全く同じ文字を使った法術でも、最後の『発動』のプロセスに籠めた言葉や意思によって効果に違いが出ることは珍しくない。流派とかもあるらしい。
〇法術の管理について
結構誰もが使える法術だが、使用者の管理は基本的にかなり厳格に行われている。
法術をどれだけ使えるか(=文字への適性がどれだけあるか)は法術ギルドで『魂の鏡』を使うことでわかるが、原則この結果は全て記録される。
本人の魔力と一緒に記録されるので、偽造も原則ほぼ不可能。
で、強力な攻撃や特殊な法術に使える文字への適性を示した人は、ほぼほぼ国に管理される存在になるといっていい。
チェックとされるのは第二基幹文字と一部の攻撃系法術に必須とされる[射][的][放][礫][拡]など。
当然これらの文字を含む法印の販売も厳しく管理されており、所有者は基本把握されている。もちろん抜け道はいろいろあるが。このあたりは銃器所持者を管理してるのと同じだと思えばいいかと。
ちなみに攻撃法術が使える人の割合は、大体百人に一人くらいと結構少ない。
中には組合せ様がない文字にしか適性がないとかいう人もいる。
法術ギルドは国単位の組織ではあるが、基本的な管理方法はどこも同じである。
ちなみにコウは『アクレット預かり』というわけのわからない状態。
魂の鏡の記録もアクレット以外は閲覧できない様にされているので、コウが並外れた術者であるのはギルドの人間ならわかるが、詳細が分からなくなっている。
なので、第二基幹文字を複数使うとは思われている。
ちなみにコウがもらった法印具はパリウスのある職人が作ったのだが、発注内容を聞いてめっちゃテンション上がったらしい。
〇精霊
魔力そのものが意思を持った存在。
精霊そのものは普遍的に存在するが、精霊と意を交わし、力を借りることができる『精霊使い』は極めて稀少。その稀少性は第一基幹文字の使い手の数と同じくらい。
妖精族にごくまれに生まれるとされている。
精霊使いの能力は強大で、第一基幹文字の使い手と基本的に同等とされている。
精霊の属性は第一基幹文字と同じ七つあるが、通常精霊使いと言っても扱える属性は一つが普通。
七属性全て使えるエルフィナの異常性はコウのそれと大差ない。
精霊の力を使う能力のことを『精霊行使』または『精霊術』というが、そもそも使い手があまりに稀少なのであまりちゃんとした呼び方がないともいう。
〇冒険者ギルド
この世界においては国に属さない特殊な組織。
国、神殿と並んで『証の紋章』を発行することができる。
一定以上の能力がなければ所属することができず、一般的にはこのギルドに所属してない限りは『冒険者』とは名乗れない。
かなり細かい規定が色々あって、冒険者は人々にはかなり信頼される『職業』として認識されている。
冒険者は技量を示す刻印が『証の紋章』に刻まれる。
刻印は正方形で、対角線で区切られた四領域がそれぞれ『近接戦闘』『遠距離戦闘』『法術』『探索』の技量を示し、ランクは色で現される。
色は下から、灰、白、黄、緑、青、紫、赤、黒、銅、銀、金、虹。
灰は適正なし。
白は素人。
黄で基礎訓練は終えたレベル。
緑で一人前。
青は中級者、青までいくとかなり信頼される。
紫で一流。冒険者としてはまずここまでいっていれば、得意分野だといえる。
赤だと大きな街でも一人二人程度、黒ならその地域でも一目置かれる。
銅から先は超一流で、大国で数人いるかどうか。
金は大陸に一人いるかどうかで、虹は伝説に残るレベルで普通いない。
冒険者になる場合、最低一分野は緑が要求される規定だが、冒険者になるような人物はたいてい一分野以上は青があり、紫も珍しくはない。
ちなみにこのランク付け自体は冒険者ギルドで試験を受ければ冒険者でなくても認定は受けられ、証の紋章を持っているなら刻印が刻まれる(その場合正方形ではなく円形の刻印になる)
軌跡シリーズの遊〇士みたいなものです(マテ)
〇妖精族
人間とは異なる種族。
正しくは『人間以外』の社会を構成する種族をひとまとめに妖精族と呼んでいる。
同じ妖精族でも種族がいくつかあり、それぞれに特徴があるが、共通する特徴として人間より長い耳がある
そのため人間と妖精族は一目で見分けつく。
また一般的に妖精族は法術(文字)への適性が人間族より高いとされる。
妖精族は基本的に『氏族』と呼ばれる単位で集まって暮らしている。
この氏族とは血縁というわけではなく、強いて言うなら『同じ考え方を持つ集団』というのが一番適切か。ただし種族は必ず同じになる。
エルフィナの氏族であるクレスエンテライテは自然の恵みを尊重する氏族で、エルフィナも氏族を飛び出してはいるがその価値観は共有している。
もっとも異なる氏族であってもお互いを尊重し合うのが基本なので妖精族同士の争いというのはあまり起きない。
別に森妖精と洞妖精が仲が悪いという事はない。
他には草原妖精や海妖精、河湖妖精や山岳妖精などがいる。
〇森妖精
妖精族の一種で森に住む種族。
森妖精は細身の身体で美しい容姿を持つのが特徴。
森で閉鎖的な社会を形成していることが多く、あまり人間社会に出てくる森妖精は多くはない。同族で争う人間を蔑んでいるような氏族もいる。
なお、森妖精は水と光さえあればほとんど食事をしなくても平気という種族特性を持つ。
そのためか、食事という楽しみを知らないので、一度それに魅せられると氏族を出てしまう森妖精は意外に多いらしい。
目が非常によく弓の扱いに長けている者が多い。また、妖精族の中でも特に文字との適性が高い者が多く、優れた法術の使い手が多い傾向にある。
一方で細身のため、重い武器を扱うのは苦手。
【表記解説】
ちゃんと書いてなかったので一応。多分気にしてる人はほとんどいないでしょうが。
ルビを適宜振ってますが、一応ルビは使い分けてます。
まあ、正直ここまでこだわると面倒なだけですが、現代人が異世界に行ったなら、やはり『違い』と『同じところ』は分かるようにした方が『らしい』かなぁ、という細かいちょっとしたこだわりです。
最初から完全異世界なら、その世界も『偶然』そういう表記です、で終わりですけどね。
1.ひらがなのルビ
単にちょっと一般的ではない漢字や、あるいは違う読み方をさせるためのルビです。本来の意味での『ふりがな』です。
2.度量衡のルビ
この世界は地球ではないので、当然メートル法ではありません。
もちろんヤード・ポンド法でもないです。
なので独自の度量衡を設定していますが、いちいち変換してたらめんどいでしょうし、というわけでメートル法で表した場合のルビをつけてます。
ちなみに正確に変換できるわけではなく『約』というのが省略されてるとは思ってください。
なお大体こんな感じです。
1メルテ=0.5キロメートル=500メートル
1カイテル=0.5メートル
1セテス=5センチメートル
長さに関してはこれ以下の単位は一般的に使いません。
重さも設定はありますが……出てこない気がするので割愛します(ぉぃ
3.カタカナルビ
大きく二つあります。
基本的にはこの世界での発音を表記してるつもりです。主に対象は固有名詞です。
この世界と地球の一部の名詞は響きが共通になってるのはまあ全部オリジナル設定してたら非常にわかりにくいから、という身も蓋もない理由もありますが、作中でも一応説明する……予定です、多分、きっと。
基本的にいわゆるファンタジー系の名称がやけに一致や類似が多い設定です。
精霊の名前や種族名とかですね。
ちなみにルビがついてる漢字は、コウが認識として捉えた名称です。彼は意味が分からない名称は、ほぼ無意識に《意思接続》を使って翻訳してしまっているんです。
ちなみに一つだけ開き直ったのが複合文字。
別の響きにしようかと思ったんですが……意味が通じなさすぎるし独特である意味もないのでそのままに。きっと偶然同じような意味だったと思ってください。
もう一つは一般名詞の言い方を変える場合です。
例えば露台や報告書等。
この辺りは読みやすさと文章をかっこつけたい演出なので。
まあ細かいところは気にしないでください(開き直り)
※《意思接続》についての補足
序盤ではコミュニケーションのために出て来た超便利能力。
作者の都合とも言いますが(マテ)
これは本来誤解なく意思疎通するための能力で、異なる概念を理解可能なものに自動的に翻訳する便利能力です。
例えばコウは『フェリア』という言葉を『妖精族』と認識してますが、現地の人にとっては『フェリア』という言葉に妖精という意味は全くなく(そもそも地球の様な妖精という概念がない)、単なる種族名(固有名詞)でしかありません。この辺りはコウの知る概念に自動的に翻訳された結果です。
強いて言うなら『人間に近しい種族』というような意味です。
ただ、フェリアが容姿に優れてることが多いので、意味合い的に日本語で言えば『妖精の様な』という意味で『フェリアの様な』という言い回しも使われることはあります。
妖精族という概念があてられたのは、そのあたりの理由と、コウがファンタジー系の創作を日本で読んでいたためでしょう(笑)
後に『インフェリア』という言葉が出てきますが、こっちは『人間に劣る種族』というような意味を持ちます。
まあ、読む上では全く気にしなくても問題ありません(開き直り)
厳密にやるなら、この話は三人称なので、地の文では現地の言葉だけにすべきでしょうが……まあそこは、読者向けに《意思接続》が常時起動してると思ってください(ぉぃ
ちなみに多少の方言はあれど、この世界(大陸)は言葉は基本的に同じです。
妖精族とかですら同じ言葉を話します。
あと、そもそもこの能力の『ウィルリンク』という響きもそれ自体この能力によって翻訳されたものです。本来の響きは人間では聞き取れない竜族の言葉なので、そこまで翻訳されてます。
ちなみに、コウが急激にこの世界の言葉をあやつれるようになったのは、単に《意思接続》が馴染んだからというのが一番の理由です。




