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転移直後に竜殺し ―― 突然竜に襲われ始まる異世界。持ち物は一振りの日本刀  作者: 和泉将樹
第二章 冒険者コウ

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第25話 対岸へ


 精霊メルムの話は簡単だった。

 精霊の主である妖精族フェリア――精霊たちは名前は知らないというか把握しておらずただ主とだけ呼ぶという――が、人間に捕らえられた。

 そして彼女の使役精霊は、主を殺されたくなければ従えと脅されたという。

 精霊はやむなく従い、何人かいたうちの一人の男と仮契約をしたという。

 それがおそらく、今のびている男だろう。

 基本的に精霊は契約した主からそう離れることはできないのだが、それを可能にするのが仮契約らしい。

 ただ、精霊たちに距離や時間の概念は希薄で、主である妖精族の生存こそ分かるが、どこにいるか、漠然とした方角しか分からないという。

 まあその先は気絶させた男に聞けばいい話なので、とりあえずコウは気絶している男を拘束すると、城館に戻っていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 コズベルトは目を覚まし――自分の状況が最悪であることを知った。

 両手両足は完全に拘束され、体も固定されている。

 そして、自殺しないように、口には布が詰められていた。


 目隠しはされていないので周囲を観察する。

 場所はどこだか分からないが、窓がないのでどこかの地下か、少なくとも誰かを閉じ込める場所だというのは分かる。

 直前の記憶を思い出す限り、確実に捕まったのだろうと判断できる。

 相手が誰だったかは分からなかったが、味方ではない以上確実に敵。

 つまり自分は捕縛されたのだ。

 捕虜になったと言えなくもないが、コズベルトは自分の命運が尽きたのだと判断した。

 おそらくこれから、尋問を受けるのだろう。だが、コズベルトは無論、何一つ話すつもりはない。

 自分が死ねば、精霊との仮契約は解除され、本来の主の下へ精霊は強制的に帰還する。

 だがそうなれば、自分が殺されたことも分かる。

 そして次の工作員が来るだけだ。

 長年のキュペルの悲願を達成するための礎となるなら、コズベルトは本望だった。

 尋問のために話せるようになった瞬間に、自害する。

 その覚悟が、コズベルトにはあった。


 そしてその意図を――コウは正確に読みきっていた。


「この少女はどこだ?」


 目の前に立つ男――確かあの時対峙していた男――は、あのペンダントを掲げてそう質問してきた。

 だが、口の詰め物が外される気配はない。

 これでは話せないだろう、と文句を言うように口をもごもごさせる。


「もう一度聞く。この少女はどこにいる?」


 そいつは対岸の街、ホレイアの東外れにある館で、仲間が見張ってる。だが、外さなければしゃべれないだろう、ともごもごと口を動かした。


「そうか、ホレイアの東外れの館か」

「!?」


 コズベルトは愕然とした。

 断じて話していない。

 そもそもこの状態では話すことは出来ない。


「~~~~~~!! ~~~~!!」


 必死にもがく。

 だが次の瞬間、首筋に強い衝撃を受け――コズベルトは意識を失った。

 そして、尋問していた人間――コウは、冷たい目でその男を見下ろす。


「悪いな。《意思接続ウィルリンク》の前では、話す必要はないんだよ」


 これほど凶悪な尋問向けの能力はないのではないか、とすら思えてきた。

 慣れれば固有名詞であっても判別が出来てしまう――正しくは理解できない概念は固有名詞である可能性が高い――ので、本当に隠し事ができない。


『さて、それじゃあ、お前の主を助けるとしようか』

『……いい、の?』


 コズベルトが気絶するまで隠れていた水の精霊が、おどおどした様子で顔を出す。


『乗りかかった船、という言葉があってな。実際主犯は捕らえたが、このままではまた同じことをされる可能性がある。ここの領主にも了解済みだ』


 すでにバルクハルトには全ての事情を話していた。

 精霊によって一連の殺害が行われたこと。

 おそらくはキュペルの陰謀であること。

 そして、精霊使いの少女が捕らえられており、これを解放しない限りは、再び別の精霊使いがこの街に攻撃をかけてくるであろうこと。

 そのために少女を救出する必要がある、と説明した。

 そのための尋問についても全部任せてもらったのだ。


 ただ、バルクハルトとしては、キュペルに捕らえられている少女の救出には難色を示した。

 殺人事件の正体が分かったのであれば、しかもその方法が特定しやすい――コウがいる前提だが――のであれば、あとはクロックスに来た際に捕縛すればいい。

 救出となると、水軍を出してカントラント河を渡る必要がある。

 だが、クロックスは防衛のための軍勢は多いが、渡河を行うのは慣れておらず、また、河上戦ではキュペルに一日の長があり、仕掛けるのは難しい、という。

 だが、それに対するコウの返答は、簡潔を極めた。


「俺が一人で行って助けてくる。軍勢はいらない。船だけ貸してくれればいい」


 船頭すら要らない、というのだからバルクハルトも無茶だ、と止めたが――最終的にはコウに押し切られた。

 というよりは、コウの『証の紋章』を見て引き下がった。

 法術の黒というランクは、このクロックスの法術ギルドのギルド長を凌駕する実力を示す。

 それでいて、近接戦闘の紫という実力は、この街の冒険者でもトップクラスであることを意味する。

 つまり、ギルドが認定しているコウの実力は、このクロックスにいる全ての冒険者を凌駕しているのだ。

 それほどの実力者ができると言っている以上、バルクハルトもそれ以上押しとどめることはできなかった。


 そして、夜が明ける前に小船が一艘、カントラント河の北岸を離れたのである。



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