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召喚

眩しい...

どこだここ...

と言うか俺はどうなったんだ...?

死んだはずじゃ...?

なんだこの音楽は?オーケストラ...?

やけに立体音響にクラシックのような音楽が響き渡る。式典かなんかなのか...?それもそのはずだ。目を開けると、俺は超がつくほどに大きい宮殿の中に居た。周りには俺を円状に囲むようにヴェネチアンマスクのような仮面をした人達が居り、俺はその魔法陣の中心に座り込んでいた。そして、両サイドにはヴァイオリン、チューバ、トランペットと、色とりどりの楽器を持った人々が音色を奏でていた。

「――よくぞ参った、勇者サトーよ!」

野太く、気のある声が王宮の中に響き渡る。

後ろに振り返ると、金素材の服を身にまとった如何にも「私が王です」といったガタイのいい一人の男が玉座に座っていた。その横には秘書らしき女が一人いた。

「あの...僕サトーじゃないんですけd...」

「突然の事で混乱しているだろう!では一つ一つ説明しよう!」

俺の声をかき消すように王が喋る。

高校の時の体育教師を思い出す。一言一言に必ず「!」が付くようなデカい声。

でた、こっちの言葉には微塵も興味が無いタイプだ。召喚モノならもっと聞き分けが良くてもいいじゃないか。そう考えているうちに召喚モノのお決まり、この世界の説明が始まった。

「この国はメディオラティス!この世界の中央都市である!そして我がこの国の王、ラティス・アーラ!」

王が名前を名乗ると同時にオーケストラの演奏で

「パーン!」と効果音が入る。

おお!なんか異世界っぽいじゃん!

話の続きを王に代わり、秘書らしき金髪の女が続ける。

「この世界は、魔王ヴァクトール率いる魔族により、大陸の8割が支配され、このままでは、人族は数百年と持たずして滅びるでしょう。そのため、こうしてあなたのような勇者候補を異世界からお招きし、魔王を打ち取って、この世界の平穏を取り戻してもらおうという腹積もりです。」

女はメガネをクイッと上げる。腹積もりって...案外適当なんだな

「申し遅れました。私は国王直近秘書のコノエと申します。」

「早速ですが、ヨシヒコ様にはこの魔法石に触れていただき、ステータスを確認させていただきます。さあ、前へ」

ちょっと待て、話の展開が早すぎる。第一俺はヨシヒコでもなければ、サトーでもない。

「あの...僕ヨシヒコじゃないんですけど...」

空気がぴりついた。

「何を言っておるのだ!......神約書にはそう書いているぞ!」

「...神約書?」

「では説明しよう!この神約書とは...」

説明を阻むようにコノエが王の口を止める。

「アーラ国王!その情報は口外禁止のはずです」

「そうであったか!では話すことは出来ぬ!」

この王はバカなのか...?

推測だが、神約書ってのはだいぶ禁忌の代物なのかもしれない。

「失礼、話が脱線しました。サトー様、さあ前へ」

「あぁ、はい」

言いたいことは色々あるのだが、これ以上話をややこしくすると厄介だ。

今は大人しく聞いておこう。


魔法石は水晶のように丸くコーティングされており、魔法石の中には、沢山の文字列たちが泳ぐように回っており、それは魚の群れを彷彿とさせる。

.........何気に楽しみでもある。

召喚者というのは、何かとぶっ飛んだモノを貰いがちだからだ。ステータスが爆発的に高かったり...神を討ち取るほどの最強武器、聖剣エクスカリバーを貰ったり...炎を操れるスキルで敵を一掃したり...

妄想を膨らませていると、身投げしたことすら忘れてしまう。

現世にいたとき、ギャルゲーやらエロゲーを専門として扱っていた俺だが、実はMMOも結構嗜んでいた。なので、異世界召喚には理解のある方だと勝手に自負している。

きっと俺には何かしらの秀でたスキルがあるはずだ。

多分、いや絶対、そうに違いない!

期待に胸を膨らませた俺は、ニヤつきながら魔法石に触れる。

魔法石からは、次第に微弱な振動が威力を増して、手に伝わってきていた。

「...?お、おお!なんだこれ!」

触れた数秒後、全身に魔力が通い、無数の文字列が体の周りを駆け上がっていく。

そして、頭上に集まった魔力が形となり、数値が浮かび上がっていく。

それはステータス表となり、姿を現した。



謾サ謦2 髦イ蠕1 鬲疲ウ1 鬲秘← 1  菴灘鴨2 泌鴨蛟1


※蟆壹??ュ比コh繧ケ繧ュ繝ォ隍?j謇?謖∝庄縲∛・樒噪繧ケ繧g繝ォ菴5逕@荳榊庄


読めない字と数字。

1が多い...........

ステータス表を見ている一同が硬直している。

妙に空気が悪い。

「あの...どうですかね、僕のステータス表は———」



———シュパンッッ!!!



髪がなびくほどの勢いで、足元の床と後ろの宮殿の入口門に剛剣が刺さり、床の大理石には亀裂が入り、門には血の付着した剣が刺さる。

「ひいいいい...!女神様お助けを...」

横に座っていたお偉いさん達も何やら十字を切りながら、怯えてる。

静寂の中にいきなり訪れた爆音に、その場に居合わせていた騎士達他、神父様ですらも後ずさりをする。

剣の軌道から投げた相手を探る。

―――まさか...


「話す余地も要らん!」

「勇者と抜かす、紛い物をここで殺すッ!」

凄まじい殺気を発している国王の姿がそこにあった。

怒りっぽい性格なのは承知してたが、ここまで怒鳴るとは、想定外だ。

「ぁ...あっ...」

いきなり重力が重くなり、強制的に膝がつく。

あれ、声が出ない...。

何故だ?

と言うか、俺、今どうなってんだ...?

痛みはない...よな?

——い゛い゛ッッッ.....!

「ゲホッ...!ゴぼォッ...!」

息が、できない...!

突然の痛みと共に、襲ってきた咳を両手で受け止める。

「...、ァあ...がぁ...!ぁぁ゛!」

その両手には、べったりと血が付着していた。

喉を引き裂かれるような痛みが頭を駆け上っていく。

現世で引きこもりしてた俺に対してハードル高すぎるだろ。

「「ベチャッ...ベチャッ...」」

咄嗟に喉元を手で塞ぐ。

ようやく理解した。

俺の喉は割かれたんだ。あの剛剣で。

どうしよう...意識が...朦朧として...

あ...

俺はその場に倒れ込む。


「死んで正解ですわっ!」

国王の横で静かにしていた、女王と思しき女が俺を見て嘲笑う。

「忌々しいッ!」

国王は汚物を見る目でこちらを見る。


死ぬのか...

また、何も出来ずに...


「そ...そうだ、そうだ死んじまえ!」

「この勇者もどきがっ!」

「この国から出ていけっ!」


宮殿内で、次々に罵声が飛ぶ。

ここに来て30分と経たないうちに、俺はもう紛い物か。ただ、召喚に巻き込まれただけなのに。


《——————お前、それでいいのか?》


「あ゛...ィやァだ...」

床の血量は次第に量を増していく。


「シルヴァ!あいつにトドメを刺してやれ!」

「チッ...めんどくせぇな...」

「さっさと殺れっ!!」

「分かってますよ、父様」

血が上ってるであろうアーラ国王は、鬼の形相でシルヴァにそう叫ぶ。 


『———空を切り、数多の聖雷を統べる大いなる神よ...』

密閉された、宮殿内に風が発生し、次第に竜巻を形成していく。

「ま、まずいっ!シルヴァ様が詠唱を始めたぞっ!」

「し、式事は中止だ!この場に居るもの全て早急に立ち去れ——!」

鶴の一声により、宮殿に居合わせていた役人達が、我先にと出口から流れ出ていく。

気がつくと、宮殿内にはシルヴァ、国王、俺の三人だけになっていた。


『———我に、強大なる雷鳴の力を授け、汝を天へ召せ...』

宮殿内の窓ガラスが唸りをあげ、音を立てて割れていく。シルヴァの全身に雷が通っていく。


《——————このまま死にたいのか?》


「し゛にタく.....ない...!」


「やってしまえ!シルヴァよ!」

シルヴァは右手を上げ、そのまま右手を勢いよく下に振り下ろす。

『聖光の一撃...〈ホーリー・ブロウ〉』



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