おかしな隣人たち
またまたおかしな隣人のトラブルに巻き込まれる僕。
杖をつきながらヤツはやって来る。
白髪頭をした、貧乏神の如く。
今日もまた何を求めて…
「なえーんだ!オートマチックじゃねなが!!」
僕のジムニーは、マニュアル車である。
ヤツは、納車さればかりの僕のジムニーのバンパーを蹴飛ばす。
ヤツの名前は、惣之助。
「俺が左足が不自由なのはわがるべ?借りても乗られねしゃー!」
ヤツは、左足が不自由。妻の克子がいるが息子はいない。貧乏で悪評高い老夫婦なのである。
春と秋に、山菜を採りに行く時に借りようと企んでいるのだ。
僕のジムニーは先月、隣町で行われていた中古車フェスタで一目惚れして一括払いで買った車。
つやつやボディーに思わず飛びついてしまったのである。年式を見落としてしまうほど。買ってから平成13年式と気付いた。10何年落ちの中古車ではあるが僕にとってはかけがえのない相棒である。
惣之助は、杖をつきブツブツブツブツと独り言を言いながら帰って行く。
その後、惣之助の妻の克子が、でかい野ネズミが走ってくるかの如くやってきた。
「亜琉斗くん、こんな小さな車に乗っていたら嫁どころか彼女も出来ないよ。ここの家はお金あるんだから。何で、大きい車にしなかったの?えっ?」
と、笑いながら言うのである。
僕は、言い返さずに黙って聞いていた。心の中では、この人たちは大きな箱と小さな箱が有ったら、大きな箱の方を持って行くだろうなぁ、と思った。
隣人老夫婦は普通車のティーダラティオの4WD。
借りられないことがわかって、僕のジムニーは軽だからとバカにしに来たのだろう。
克子は、目をパチクリパチクリさせて、僕を見て笑いながら野ネズミが走って行くかのように帰るのである。
次の日、僕はこの地区の市議会議員の津曲忠虎の妻の真紀子を電話で家へ呼び出した。カッカッカッと、真紀子がやって来た。
「あんやー!」
真紀子の何時もの第一声である。
津曲忠虎は、69歳の市議会議員。メガネをかけている強面。
真紀子は、忠虎の妻。「あんやー!」が口グセ。メガネをかけている推定63歳。
僕は、昨日のことを話した。
真紀子は無言でメガネの上から睨みつけてきたのである。
僕と親父は、
「もう次の市議会議員選挙、忠虎さんに投票する気が失くなったな」
と、言った。
「なんでよ!なんでよ!」
と、言いながら真紀子は目の前で地団駄を踏むのであった。まるで工事現場で使う地面を固める機械のようだ。
次に、真紀子は急に両手で自分の顔を覆って
「うっうっうっ、亜琉斗ちゃん、なんでそんな事を言うの〜!うっうっう〜」
と、泣き真似をするのである。まるで、不幸があったかのよう。
「亜琉斗ちゃんなんでわかってくれないのよ⁉」
また、地団駄を踏むを繰り返すのであった。
段々と居辛くなったのか真紀子は、
「虎之助が帰って来るからご飯を作らなきゃいけない」
と急に思い出したかのように、そそくさと帰って行く。
真紀子は、克子に電話報告をして、克子が周りに言いふらすという仕組みである。そして近くの美容室ルプリンに行って、この事をネタに話をしているのである。
虎之助は、忠虎夫婦の息子。白のランドクルーザープラドを愛用している。職業は不明(プロフィッシャーとの噂)。僕と同い年らしい。
美容室ルプリンは、真紀子と地区の農協の組合長さんの奥さんの行き付けのお店。
実は、惣之助の家は去年の大雪で柱が1本折れて屋根が壊れている。なんだかお化け屋敷みたい。なるほどと思った。何て言えば良いのか思い付いたのである。
次の日に、克子がまた何とケチを付けたくてやって来た。
「隣の母さんの車はレギュラーですよね?」
克子は
「だから何?」
僕は笑いながら
「でも家は、廃屋ですよね〜」
克子は大きく息を吸って大声で
「失礼でしょ」
と、言って克子はプンプンプリプリして帰って行くのである。
僕は、少しスッキリしたのであった。
あれからあまり見なくなった。
あの隣人たちは、宇宙人だったのかもしれない。
終わり
実際にあった話です。それに近い感じに再現をしてみました。
そして読んでいただきありがとうございました。