魔法研究部
城での次の日、俺は優雅な一日を過ごす予定だった。俺専属の執事に朝からモーニングコーヒーを入れてもらって、アイテム欄にしまってある本を読みふける予定だったのだ。ロイアルクはデールの娘に報告とデート。クーデリカとマリアンヌは魔法研究部にクーデリカが使えるようになった詠唱を教えに行くという。俺の役割はないはずだった。
しかし、今俺は魔法研究部にいる。ひとつは俺が重力渦や疾風など人が知らない魔法を使っていることから、その詠唱を知りたいということ。もうひとつはクーデリカの素質を見抜いたというのが俺だと知ってのことだ。……ゆっくりしたかったのに。
「というわけでですね。レクさんが未知の魔法を使われるということで是非すべて見せてほしいのです」
幼女のような魔法使いがそういった。驚くべきことにこの魔法研究部の長らしい。見た目通りの年齢ではなさそうだ。水色の髪と慎重以上に大きな杖をコンコンとさせる癖が特徴だ。
「なにがというわけなのかは知りませんが。私の使える魔法であれば全て教えましょう」
というわけで、何度も何度も同じ魔法を繰り返す。その都度正確に詠唱をかき取られる。その後は魔法についての聞き取りだ。どのような効果でどのような威力なのかを聞き取られる。わかる範囲で答えた。俺の目的は人類の勝利だ。すこしでも勝利の鍵になれる要素を見逃すわけにはいかない。
「ところで、俺はレク・コレント、あなたの名前は?」
「先走りすぎましたね。私はスーリア・アスオエです。魔法研究をしています」
続いてスーリアは悲しそうな顔をしていった。
「過去魔術師を目指しながらも、挫折してしまった人がいるのです。もしかしたらクーデリカさんと同じような理由だったのかもしれません。明日ここにその人たちをここに呼んでおくので観てあげてくれませんか」
「それは、無駄な期待をさせるだけかもしれませんよ」
「それでもです。救われる人もいるかもしれません」
「まあ、やってみますよ」
「ありがとうございます!」
本当に嬉しそうにするスーリアさん。
俺の明日の予定は決まったらしい。城での晩餐はなかなか豪華なもので食べるのが楽しかった。クーデリカも今日は魔法の詠唱をひたすらやらされたらしい。マリアンヌはその手伝い。ロイアルクはうまくいったらしく嬉しそうだ。
そうして、次の日、集まった人の群れを見て絶望した。人が海のように押し寄せている。なにしてくれているんですかスーリアさん。




