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訓練と決闘

 兵士たちは激怒した。不遜な奴だと。

 我々が敬愛するデール騎士団長に勝った奴だ。必ずその仇を獲らなければならないと。

 しかし、今は絶望しそうになっている。こんなのは人なんかじゃない。厄災だ。


「囲め。囲めぇ!一斉に打って出ろ!」

「殺せ!殺せ!殺せ!」


 最初はそうではなかったのだ。

 一対一の平和的な決闘だった。しかし奴いったのだ。これじゃあ訓練にならない。全員でかかってこいと。

 その結果が今の地獄だ。


 ひとりで打ちかかれば、奴は弾く。無防備に晒された顎を殴られて昏倒する。

 多くのもので打ちかかれば、奴の姿は消えるように移動する。次の瞬間幾人もの人が倒れる。

 今は、全員で囲むように打ち殺そうとしている。奴を中心に魔方陣が展開される。


「え、詠唱の声が全然聞こえなかったぞ」

「魔法が発動する前に潰せえ!」

「遅いよ」


 そんな声が聞こえた。


 大きな竜巻に巻かれながら、地面から引き剥がされる。

 最後の記憶は「ク―デリカ、治癒の光をここへ」という奴の声だった。



 いやあ、激闘でしたね。あのまま続けていたら、こちらは死んでいたかもしれない。相手、手加減抜きに模造剣を振っているんだもの。こちちとら九歳だよ。やさしくしろよ。

 魔法が当たってよかった。そして死人が出なくて本当に良かった。暴嵐という魔法の神髄は敵を吸い込んで連続攻撃することにあって、一撃はそうでもないからな。治癒の光で速攻回復できてよかった。


 後ろで気を失って山となって倒れている兵士たち。このままだとあんまりなので、壁際でこいつらを対象に重力渦を発動してひとりひとり壁際で転がしておく。よしっ一仕事終わり!


 あとはロイアルクの件が片付けばいいだろう。


「デール。ロイアルクと立ち会ってくれ」

「あ、ああ。化け物かよ。ひとりで騎士団を潰しやがった」


 聞こえているぞ。おれはロイアルクにひっそりと伝える。


「剣聖は剣術が巧みだ。剣士として戦うな。力で相手を圧倒するように戦え」

「はい」


 ロイアルクは怪物を見るような目で素直にうなずいた。そうだ。つよいぞ、がおー。


「ロイアルクの坊と戦うのは久しぶりだな、いったいどれほど強くなったか見せてみろ」

「はい。参ります」


 ロイアルクはじりじりと近づく。デールは待ちの姿勢だ。まずは実力を見極めるつもりなのかもしれない。勝負あったな。

 不可避の距離、ロイアルクは一閃を放った。たまらず受けて流そうとするも、途中で鍔迫り合いになった。力で姿勢を崩したロイアルクはそのまま剣を突き付ける。終わればあっけなかったかな。


「勝負ありだな」

「……ああ。ロイアルクの坊がこんなにも強くなっていたなんてな」

「戦士の寵愛の数の差だな。技量はデールが勝っている」

「俺もまだまだ修行不足ってわけだ。ロイアルク、お前になら俺の娘を任せられる」

「よろこんで!」


 よし。これで万事解決かな。

 幸せそうなロイアルクの周りには気絶した騎士団が転がりまくっているのはどうかと思うけれども。

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