剣聖
皆で中庭に向かった。ここも石造りで寒々しさを感じさせる。芝生とか花とかあると景観が良くなるのにな。
そこには訓練中の兵士たちがいた。ジャスコがひと際大柄な指導者に話しかけにいった。あれが、ロイアルクの思い人のお父さんかな?クマのような男なんだが、娘さんは愛らしいのだろうか。
ジャスコと一緒にその大柄な男がやってきた。
「俺はここの騎士団長をやっているデールっつうもんだ。噂に聞く紅玉のレクと聖女のクーデリカに会えて光栄だぜ」
「いえ、こちらこそ帝国の騎士団長殿に会えて光栄です」
「え、あの、光栄です」
クーデリカが顔を真っ赤にして何とか言葉を返した。
「グダグダいうのも性に合わねえ。ひとつ手合わせを頼むわ。紅玉の英雄殿の実力ってやつを見てみたくてしかたがない」
「じゃあ、やりましょうか」
デールは喜び勇んで、近くにいた兵士に模造剣を二本持ってくるようにいった。兵士は走って、刃を潰した剣を二本持ってきて俺達に渡した。
俺たちは剣を持って向き合った。デールから闘気を感じる。この俺から本気で勝つつもりらしい。しかし、俺も負けるわけにはいかない。日頃最強最強いっているのだ。負けたら格好悪いではないか。
開始の合図とともにデールが打ちかかってきた。俺は剣で迎撃しようとする。すると、するりと剣が動いて俺の剣の握る指を打とうとしてきた。……なるほどな。剣聖とよばれることだけはあるな。剣の扱いが尋常じゃない。だが、俺は冒険者だ。冒険者には冒険者としての戦い方がある。それをみせてやろう。
俺はダッシュ回避で避けて、ジャスト回避で胴を抜こうとしたが防がれる。流石だ。しかし、そのまま俺は走り抜けて距離を取った。そして疾風の魔法を詠唱する。デールは危険を察知したのかこちらに打ちかかってくる。俺は詠唱を中断して、こちらに振るわれる剣を思い切りぶっ叩いた。弾き飛ばされるデールの剣。デールは腕を痛めたようで、抑えている。首筋に剣を突き付けた。
今の戦い、疾風を詠唱中断させるためには威力のある攻撃が必要となる。その攻撃を狙い打ったのだ。詠唱ができたのであれば、速さを以て圧倒出来ていただろう。どちらにしても俺の勝ちだった。危機を察知してすぐに妨害に来たのは流石の剣聖だ。
「俺の勝ちってことでいいですね」
「ああ。しかし、どうやったら勝てたと思う。俺には勝てる光景が見えなかったよ」
「剣術ではあなたが勝っています。しかし戦闘なら俺は負けない。それだけです」
「そうか。あんたが正しく英雄だと分かって安心したよ。あんたになら俺の娘を任せられる」
「ノーサンキューで」
俺は腕を振って断る。ロイアルクに恨まれるなんて勘弁だ。クーデリカを呼んで治癒の光でデールを治してやるように頼んだ。
「うおっ。痛みが取れていく。ウィズタートの奴が娘は魔法が使えないやつだっていっていたが、人のいうことはあてにならないな」
こんな人まで知ってんのか。
「紅玉殿あんたは、いま一番有名な英雄だ。この騎士団でも憧れている奴が多い。ここはひとつ兵士たちにも対戦してやってくれないか」
「一つ条件がありますけど、かまいませんよ」
「条件?」
「あとでロイアルクと立ち会ってください」
「わかった」
そういうことになった。




