ロイの素性
次の日のことである。みんなで食卓を囲んで朝食をとっていると、またもや来客があった。偉そうな将といった感じの人である。何をいうつもりなのかと静観する。
「この度は、帝王が四人の活躍を褒めたたえて、城にお呼びだ。ありがたく参じるがいい、これはロイーーー」
「ジャスコ!」
「……畏まりました。改めて城にお呼びだから。参じるがいい」
「かしこまりました」
さっきの一場面が気になるし、気が乗らないが仕方がない。帝王のお呼びを断ったらクーデリカたちにも迷惑がかかるだろうし。外に用意されていた馬車に乗ることになった。
帝王の紋章が描かれた馬車にメインストリートの人々はぎょっとして道をゆずる。
並走する騎士に目を輝かせる子どももいた。
「クーデリカたちは城にいったことあるの?」
「わたくしはありません」
「わたしもです」
「僕は、あー」
ロイがなんか言いづらそうにしている。こいつ、最初から名前を明かさなかったし、訳ありか。
「いってみろよ、ロイ。例えお前が皇子でも今まで通りに扱ってやるから」
「実はそうなんです……」
「つまり、ロイ様の本当のお名前はロイアルク様なのですか」
「……はい」
向かいの席に座っているクーデリカとマリアンヌがすごい驚いている。
俺もユリアと初めて会ったときは驚いたなあと思い出した。
「なんでまた皇子がウィズタートなんて辺境都市にいるんだ?武者修行?」
「流石です。レク。僕は強くなるためにこの都市に来たんです。一番モンスターと戦えるのは恐らくこの都市でしょうから」
「戦士の寵愛目当てか。なんか理由があるのか?」
「それは……いえ、ここでいわないのも変ですよね」
ロイアルクは言うべきか悩んでいたが、重く口を開いた。
「僕には恋人がおりまして……その恋人が騎士団長の娘なんです。その騎士団長が自分より強い男にしか娘を任せられないと常日頃からいっておりまして……」
「それで、手っ取り早く強くなるためにウィズタートまで来たってことなんだな。帝王とかはどういっているの?」
「父上は『あの騎士団長から娘を奪うにはそれくらいのことをせねばな』といっています」
目の前でクーデリカとマリアンヌが目を輝かせている。恋の話だからだろうか。
「お前の父さんは許しをくれているみたいでよかったじゃないか。あとは騎士団長を倒すだけだ」
「それが難しいんです」
「騎士団長がどれだけ強いのかは知らないが、今のお前が勝てないとなると相当に強いことになるな」
「レクほどではありませんが、人間か疑うくらいの強さがあります」
俺こそ人間の、ゲーマーの強さだと思うのだが。
「まあ事情が分かってスッキリしたよ。城に戻ったら一度挑戦してみろよ。お前ならもうキマイラ相手でも一人で戦うことだってできるんだ。そう難しいことじゃないだろ」
ロイアルクもそういわれて自信が湧いてきたのだろうか。
「頑張ってみます」
そういっていた。待ちかねたようにクーデリカが尋ねる。
「ところで、その恋人さんとはどういった馴れ初めで……」
これは長くなりそうだな。俺はソファーに身体を沈めた。