夜会話
夜誰かが眠れない気配があった。フレアのことが頭によぎったが、帝国にフレアがいるはずがない。今よりももっと幼いころ、フレアはよく孤児院の外で泣いていたのを思い出した。
その誰かを追って、天幕から出た。星が明るく輝いている。月がいつもより一層きれいに見えた。
その誰かというのはクーデリカだったらしい。横に座って話しかける。
「眠れないのか?」
「うん」
「眠れないなら、せっかくだからあれをやろう」
「あれ?」
「テンプレってやつだよ」
俺はアイテム欄から薪を取り出すと組み立てて、ファイアボールで火をつけた。
それからマシュマロをいれた袋を取り出して、クーデリカとの間に置いた。それから串とホットミルクの入ったコップをクーデリカに渡した。
俺はマシュマロに串を刺して、焚火で炙った。
「ほらほら、クーデリカもやってみろって」
クーデリカも俺の真似をしてマシュマロを炙り始めた。
食べてみる。
「甘いなあ」
「うん、甘い」
ホットミルクがその甘さを中和してくれた。
しばらく黙って二人で焚火を見つめた。
「それでクーデリカはなにか心配事があるの?」
それなら俺が解決すればいい。
「いえ……特には」
「ふーん」
無意識に心配なこと不安なことがあるのかな。さて、どうしたものか。
「それじゃあまた眠れなかったらこうやってなんかしようぜ」
「それじゃあレクに悪いので」
「どうせクーデリカが寝むれないでごそごそしていると、俺も目を覚ます。気にするなよ」
「そう、それじゃあそのときは甘えさせてもらうかもしれません」
「ん」
話をしたのはそのくらいで、二人して黙って焚火を見つめた。
俺は焚火の後始末をして、クーデリカに天幕に入るように促した。
「少しでも寝ないと明日きついぞ」
「はい」
クーデリカを見ていると孤児院のことを思い出した。親に捨てられた同士だからだろうか。