ボスモンスター狩り
次の日、冒険者ギルドに着くと俺はわくわくとして掲示板を見に行った。とうとうこいつらがボスマラソンを開始する頃になったからである。レベリングこそが攻略の第一歩なのである。ボスの討伐依頼書を片っ端から剥がしつつ、マップにピンを刺していく。いつもの受付嬢さんのところに行くと顔を引きつらせながら、依頼の受理をした。
「サイクロプス六体に、オーガが四体、ゴーレムが二体、キマイラ三体に、グリフォンが二体ですか。流石のレク様のパーティーとはいえ大丈夫ですか?……いえ、伝え聞くレク様の戦果からすれば当然のことですか……」
クーデリカ達は唖然としていた。ちょっと前までサイクロプスに恐怖していたのにそんな敵たちとは戦えないと雄弁に顔が語っていた。だが、問題はない。俺たちはパーティーメンバーなのだ、先日の戦いの経験値も等分されている。レベル的には何ら問題がない。だから言い放ってやった。
「もう雑魚狩りでは効率が悪い。ボスモンスターを狩っていくぞ」
これは決定事項なのだ。
新しい冒険をする前に、各人に新しい技と能力を得ることにした。
クーデリカは状態異常を回復できる魔法の快癒と一定範囲に天からの雷を落とし続ける天雷、詠唱の速度を上げる速唱を覚えさせた。
マリアンヌは防御力を上げる能力の2つである堅守と鉄壁、時間経過での回復力を高める自動回復を覚えた。マリアンヌは全て技ではなかったため、自分が何を手に入れたのかしっくり来ていない様子だった。
さあ、新しい冒険へ出発だ。
俺はマップのピンを参考にしつつ、各ボスの下に最短で向かっていたら、クーデリカがいった。
「レクはすごいですね。方向感覚が優れているし、依頼書のボスの発見位置を的確に覚えているのですから」
「すごくないから。そういう加護だから」
クーデリカがどういう加護なのかと頭を傾げていた。
ボスマラソンの最中クーデリカとロイがヘイトを何度か買っていた。クーデリカが覚えた天雷は範囲内に全身が収まるボスには大ダメージを与えがちだし、ロイの連撃剣はシンプルに協力だ。マリアンヌの挑発のヘイトを越えている。ロイはなんとか自分で凌いでいたが、クーデリカはちょっと危なかったので援護に入った。二度目以降はヘイトを買わないように、買っても回避してすぐにマリアンヌがヘイトを取り戻していた。
一日で七体のボスモンスターを狩ることができた。そこには最初にサイクロプスと戦ったときのような絶望の表情はなかった。
今日はここまでか。俺ひとりならシステムから明度を上げて対応するが、流石に一緒にはできない。
俺は王国でもらっておいた天幕を用意して水桶とタオルをマリアンヌに渡す。
「とりあえず、中で身体を拭いてこい。ふたりとも」
俺らは外で水浴びをした。たくさんの桶に水を入れていてよかったと思う瞬間である。川の近くでひたすら桶に水を汲むのはシュールだったと思うが。
大きなテーブルと各人が座る椅子を出して店で買った料理を皿に盛りつけていく。サイクロプスのねぐらの近くで少し匂うのが嫌だが、ボスモンスターテリトリーだった場所にモンスターはいない。仕方のないことだ。
四人で食事をとりながら明日の予定を確認した。
その後、天幕の中にベッドを四つ設置した。さ、寝る時間だ。