やけ食い
朝起きて、なんとなしにパーティーメンバーと一緒に朝食をとっていたときのことだ。
店のカウベルが鳴ると、意外な来客があった。執事だ。
「失礼いたします。こちらにクーデリカお嬢様がいらっしゃると伺いお邪魔しました」
執事はこちらが食事中なのを見て取った。
「失礼。お食事中でしたか。外でお待ちしております」
颯爽と店の外に出て行った。センベルが静の執事なら動の執事といった、堂々とした態度だった。
「マリアンヌ、バランツがなんの要件でしょう」
「お嬢様……それは」
「前回のモンスターの襲来で活躍したから帰ってこいっていいに来たんだろ」
マリアンヌがいいそうにしていたから代わりに言ってやった。
「昨日の活躍でクーデリカの評判はすごいことになっている。領軍の中でも、冒険者の中でもな。そのお嬢様を無能として勘当したことをなかったことにしたいんだろ」
あの日から聖女様の話題で領内は持ちきりだった。俺は聖女様が遣わせた戦士だということになっているのはいまいち納得できなかったが、女神アレイアが信仰されている世界である。そういったこともあるのだろう。マリアンヌは聖女の騎士、ロイは戦神の従騎士となっていた。
「それで、どうするの?決めるのは早い方がいいぞ。ウィズタート家のお嬢様に戻るのか。冒険者を続けるのか。俺のおすすめは断然冒険者だ」
「どうしてでしょうか」
「俺が言った通り、お前の親父さんだって申し訳ない間違っていたって謝ってくることだろう。その後の人生は領軍のヒーラーか聖女の名前を使った結婚が待っているだけだ。だが、俺はクーデリカとマリアンヌは一流の冒険者になれると思っている。こんな田舎領地のお嬢様より立場が上だぞ。それに二人は俺が欲しい人材だし、人柄も好ましいからだ」
クーデリカは難しい顔をしている。これは説得が失敗したのだろうか。クーデリカが居なくなるとマリアンヌもいなくなるだろう。これまでの育成がパーになる。
「ひとまず、ご領主さまの招待を断ることはできそうにもありません。マリアンヌと一緒にご領主様と会ってみます。レクには申し訳ないけど、ご領主様と会ってからどうするか決めたいの」
「そうかい。行ってらっしゃい」
そこまでいわれてしまったら仕方がない。親子再会と仲直りならそれはそれでよい結末なのかもしれない。
クーデリカとマリアンヌは外に置いてあった馬車に乗って執事と一緒に領主館へと向かっていった。
うーむ。理由は分からないがそわそわする。椅子をぎっこんぎっこんとしていると宿屋の亭主に怒られた。
仕方がないのでやけ食いだ。せっかくなので、メニューの制覇でも目指すか。
昼頃になって、クーデリカとマリアンヌが帰ってきた。どうやら冒険者を続けると決めたらしい。そうでなくっちゃな。
「今日はもう、解散だ。もう昼過ぎたしな。明日また、狩りに行くぞ。俺はこの都市の観光に行ってくる」
さあ、今日はウィズタートの街を観光でもするか。




