ウィズタートの戦い②
俺は両翼のモンスターどもを見渡した。どうも軍のように攻めてきているくせに、指揮官がいないようだ。つまりはだ。
「魔将はいないみたいだな。左翼軍の被害がでかそうだ。いくぞ、ロイ」
「はい」
ロイも下手すると死ぬかもしれないのによくついてきてくれている。
それからは繰り返しだ。サイクロプスやキマイラ、オーガとゴブリンども。これらをジャスト回避とパリィを駆使して戦う。手前たちじゃもう俺の敵じゃねえんだよ。俺の前で見たくもない光景を見せんなよ。
ひたすらモンスターどもを切り捨て続けると、左翼軍の兵士たちに合流できた。これで、こっちの敵は片付いたということだ。
兵士たちがなにやらモンスターよりも俺に怯えているらしいが問題はない。多分。
さて、残る残敵は右翼軍にいるか。
「ロイ。お前はここで残敵を掃討しろ。俺はちょっと走って右翼を潰してくる。ついてくるなよ。はぐれることになるから」
俺は疾風を詠唱してから、走った。モンスターどもが居なくなった中央軍が右翼軍に加勢して大分被害は減っていそうだ。
片っ端から、近づいてはモンスターを切り捨てていく。切り捨てて、切り捨てて、切り捨てたその先にモンスターはいなくなっていた。
脳が疲れた。エナジードリンクでも飲みたいな。この世界なら果実水か。あとで飲もう。そんなことを考えていると、隊長と思しき人が声を掛けてきた。
「こ、このご助力に感謝する。貴方がいなければ、わが軍は壊滅的な被害を受けていただろう。このことはご領主様にもしかと伝えることを約束しよう」
ここの領主様ってことはウィズタート家つまりはクーデリアの元父のことだ。
「伝えることは結構。この身は冒険者。要請に応じて参じたにすぎません」
はっきりいって出会う前だが、領主さまのことは合う前から悪印象だ。その領主様に褒められて、褒賞をもらうなんて鳥肌が立ちそうだ。
俺はロイを回収するため、左翼軍の方に戻った。兵士たちは戦場の後片付けをしているようだ。使える素材も多いことだろうしな。
それを手伝いながら解体の勉強をしていたロイに声を掛ける。
「ロイ。帰るぞ」
「あ、レク。わかりました」
なんかまた忠誠度が上がった気がする。
空が赤く染まりはじめた頃、救護所に入っていく。真剣な顔をして待機していたクーデリカが駆け寄ってくる。
「レク!怪我をしたのですか!」
俺は手を振って違うと答える。
「俺は最強になるだから、こんな戦場では怪我とかしないし、ポーションを持っているから大丈夫だ」
なにやら周囲が騒めいている。聖女がどうとか。そんな人間がいるなら見てみたいものだ。俺はぼーっとする頭でそう考えた。
なんとかして炎鹿亭に着くと、たっぷりとご飯を食べて、井戸水をざぱっと浴びる。あー、今日は疲れた。俺はベッドに倒れこんだ。