襲撃
炎鹿亭は瀟洒な見た目のお店だった。清潔感があり、各部屋の窓に花のプランターが吊り下げられている。入ってみると、ここも受付部分と酒場の部分に別れているらしい。受付にいる女性に話しかけた。
「お姉さん。個室を4つ?……個室を二つとツインを一つお願いします」
俺は各人の部屋を取ろうとしたが、クーデリカとマリアンヌが同室の方がいいと顔がいっていたのでツインに変える。
「はいよ。個室は銀貨四枚、相部屋は七枚だよ」
俺は個室用の銀貨四枚を支払った。
「お姉さん。食事はどうしたらいい?」
「食事はそこの酒場で注文しとくれ」
「あいよ」
さて、これからどうするべきか。……今後に向けて食事を一緒にして相談しようなんて柄じゃないし、適当でいいか。
「それじゃあ、今日は解散。お疲れ様。俺はここで食事していくけど、一緒に食べるか?」
一緒に食べることになった。
この宿のレパートリーはやたらと多い。各自好きなものを頼んで食べる。いずれはここの食事を制覇してみるか。ナンバーワンを探すのもいい。
そのあとは、解散することとなった。
それから三日間は同じような日々だった。朝に朝食をとってから冒険者ギルドに向かって依頼を受ける。それから多くのモンスターを倒して、夜に炎鹿亭で一緒にご飯を食べた。だいぶレベルが上がって生きている。そろそろボスマラソンに移行するべきだろう。
クーデリカには、範囲内の敵モンスターの動きを鈍らせる聖光と範囲内の人を治療する治癒の光を覚えさせた。どちらも聞いたことがない魔法だと驚いていた。この時代に精神系魔法使いはいなかったのだろうか。
マリアンヌは堅牢という一時的に防御力を上げる技を覚えさせた。あと、守勢という攻撃力が下がる代わりに防御力が大きく上昇するスキルを覚えさせたのだが、スキルは実感がなく、首をかしげていた。
ロイは、地裂という範囲攻撃と、猛攻という恒常的に攻撃力を上昇させるスキルを覚えさせておいた。
その日は突然訪れた。モンスター達が徒党を組んで都市に攻め入ってきたのだ。サイクロプスやオーガ、キマイラなどの強大なモンスター達が多くおり、苦戦が予想された。
当然、冒険者である俺達にも声がかかる。不安そうにしているみんなに俺はできるかぎりふてぶてしくいった。
「クーデリカとマリアンヌは救護所に向かえ。クーデリカは治癒の光でひたすら怪我人を癒していろ。マリアンヌは万が一の護衛だ。ロイは俺についてこい。本当の最強ってやつを見せてやる」