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ランクアップ

 結局、お金で解決することにした。


 孤児院の食生活の質は落としたくない、かといって自分でホーンラビットの肉を狩りにいく時間もない。ピクシーに関する納品依頼やゴブリンの討伐依頼に関する報酬のほうが圧倒的に多くなるのだから、その報酬で肉屋やパン屋を利用すればいいと思いついた。


 この『ルーンレコード』の世界も、お金の重要性は侮れない。


 そんなことをつらつらと考えながらギルドの入口ドアを跨ぐと、またひと悶着があった。


「……レクくん。森の深くまで行ってはいけないって新人のときに散々言ったでしょう。ピクシーやゴブリンは集団になることが多くあります。パーティーを結成していないレクくんでは危険すぎます」

「イリス姉さん。また戦士の寵愛があったんだ。例えピクシーやゴブリンから不意をつかれても逃げられるくらいには強くなったよ。それにほら!今日も怪我もない。安全第一だよ」

「おかしいです。成長の速度が速すぎます」

「男の成長は早いらしいよ、清算をお願いします」


 妖精の粉の採取依頼、薬草の納品依頼、ゴブリンの討伐依頼をまとめて処理してもらう。スライムの討伐報酬は銅貨であったが、いまや報酬は銀貨に届く。

 あきらめたような顔をして処理をしてくれるイリス姉さん。本当に心配をかけてごめんなさい。でも、時間がないんです。


「わかった。でも少しでも危ないと感じたら逃げてね」

「わかりました」


 報酬の銀貨や銅貨を財布へと詰め込む。今までと比べてずっしりとした重さになってきた。レクのステータスは今までの伸びを見る限り、魔法戦士タイプだ。力と知力が中心に伸びを見せてみる。


言い換えると器用貧乏とも言えるタイプで、特化型が好きな自分としてはあまり好みではないが悪くはない。この『ルーンレコード』の世界では特化型だと倒せない敵が必ずいる。そういう時は戦士なら仲間からエンチャントを貰い、魔法職なら支援に徹さなければならない。


魔法戦士タイプなら、状況に合わせてすべての敵に対処できる。この力の伸びから推測するにレベル15くらいで装備の更新をしなければならない。

これからも、ピクシーやゴブリンの討伐が欠かせないわけである。


「さて、レクくん。レクくんは中級の依頼を規定数達成しました。おめでとうございます。カッパーからシルバーの冒険者プレートに昇格です」


昇格を見た周囲の冒険者たちは、「あのスライムにも負けたちびっこ冒険者がもう中級冒険者の仲間入りか!めでてえ!乾杯!」と酒の肴にされていたり、「馬鹿お前もうちびっこ冒険者じゃなくて小さな冒険者さんだろう」とからかったりしている。頬を熱くなる。コノヤロー。


孤児院への帰途へつく。コレントの都市は魔軍の襲撃に対する辺境の守りの都市であるので、大きな穀倉地帯などはない都市である。主要な産業は冒険者業とそれに関わる職業といっていい。メインストリートには穀倉地帯から食料を運んできただろう大きな荷馬車走っていた。


しばらく眺めていると、泥濘にはまった荷馬車があった。近づいて話しかける。


「手伝いましょうか?」

「おお、助かるよ。一緒に馬車を押してくれないか」


 荷台を必死に押す。戦士の寵愛あってか、思ったよりもあっさりと泥濘から荷馬車を出すことができた。


「助かったよ。坊主お駄賃はいるかい?」

「いいえ。いりませんよ。トマスンさん」

「ええっ!どうして私の名前を知っているだい」

「姪御のサリアさんと一緒に遊んでいたときに、お会いしたことがありますよ。最近も10歳になったらトマスンさんの荷馬車で別の都市に行商に出かけるって自慢していましたし」

「もしかして、レクくんかい?」

「はいレクです。ご無沙汰しております」

「いやあ、大きくなったね」

「ええ、これでも冒険者になりましたから」


 銀色のギルドプレートが首下できらめいた。


「銀色ってことは中級冒険者かい!レクくんの年齢ですごいじゃないか」

「どうもこいつを扱う才能に恵まれたらしく、なんとかやれてます」


 腰の相棒の短剣をぽんと叩いた。


「はあ、あのやんちゃ坊主のレクくんがねえ。この前まで泥にまみれて遊んでたのが噓みたいだ」

「それは5歳くらいのときですよ。あのあとシスターテレサに雷を落とされて大変だったんですから。それよりも、サリアさんがトマスンさんを長い首で待ってますよ。俺がここでトマスンさん引き留めていたなんて知られたら……恐ろしい」

「ふふ、そうだね。レクくん荷馬車をありがとう。行くとするよ」


 トマスンさんと会うのは久しぶりだな。相変わらず人のよさそうな顔をしているけど行商でやっていけてるんだから一筋縄ではいかない人なんだろうか。あの魔軍の襲撃にあった日、サリアが死んでいたのを見たからトマスンさんは別の都市に行商に行っていたのだろうか。最悪なのは都市の外で魔軍の襲撃に会うことだ。今度サリアにトマスンさんの予定を聞いておいたほうがいいかもしれない。


 さて、俺も帰って食事にしよう。今日のところはアイテム欄に貯めてあったホーンラビットの肉を出すとしよう。

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